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ビターな町

気がつけば迷い込んでいた。
スマホの電波も位置情報も迷子で、
見渡せば、喫茶店ばかりが立ち並ぶ
ここは眠らない町。

この町に夜はやってこない。珈琲があるから。
ここの人々は眠たくならない。珈琲があるから。
それを飲まないのなら、眠ってしまえばどうなるのか、
誰もわからない。
ただ、渋のついたコーヒーカップが、ところどころに転がっていた。

「私はこの町に合わない。」
そう言うと私の春は亡くなっていた。
おおよそ90の夜が過ぎていた。
気がつけば、私は1粒の珈琲豆となっていて、
私の味が誰かを起こすものか、
などと考えていた。

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