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あいりす♢
2020年8月25日 12:30
何か、悪い夢を見ていた気がする。 体の節々が痛い、と彼は思いながら、なんとか上体を起こす。見たことのない壁と天井。見覚えのない木のベット。はて、自分は今さっきまで何をしていただろう、と彼は考えたが、おかしいのである。何も思い出せないのだ。 ふわり。どこからか甘い香りがして彼は目を上げた。嗅いだことのない匂いだが、美味しそうである。途端に、彼は空腹を感じた。 カタン、という音。彼は目を上げる
2020年8月25日 12:28
そう遠くない未来。 世界は、原因不明な病に蝕まれていた。 子どもに多くかかる病気で、自力で意識を取り戻した数少ない患者の証言から、その病は『夢見病』と名付けられた。 その名の通り、ずっと、夢の中から目が覚まさなくなる病気であり、息はしているのに意識不明の重体といったところだった。 夢の中では、自分が望んでいる幸せな夢をいつまでも見ることが出来るそうで、一見すると幸せな病のように見えた。
2020年8月25日 12:27
まるで針のようにそびえ立つ山脈がぐるりと町の周りを囲っていて、あまり外部からの人が寄り付かないそこには、いつしか、天使が棲みつくようになった。 天使といっても、よく見る上半身裸の男の子の姿をしている訳でもなくて、かわいらしい小さな女の子の姿をしている訳ではなった。 まるで、くじらを十倍にしたくらい大きく、その白い翼を広げれば町をあっという間に覆ってしまう程で、見た目は人の姿とほとんど変わらな