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住んでから,どうにかする。 【地方空き家サバイバル】

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ある30代男性は,ひとりで地方に移住することにした。 住む家は築50年くらいで,窓ガラスは割れ,カギもしまらない。 知り合いがいるわけでもなく,お金もなく,仕事もない。 さらには…
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#DIY

地方移住を決断するまで

5年間,働いた会社を辞めたのは,虚無感に耐えれなかったからだ。この仕事に何の意味があるのか,誰の何に役立っているのか,そんな疑問を感じながら働くことは虚しかった。 仕事を辞め実家に戻った。早朝にスーパーで品出しのパートをし,午後は読書という生活を送った。コロナ禍の影響もあり,こんな生活を2年半も続けていた。品出しの仕事は,達成感や誰かの役にたっている実感があり楽しかった。どうやら,私にとっての報酬は,お金ではなく,達成感や有能感といった感情なんだと気づいた。 では,達成感

何もないことの素晴らしさ 【地方空き家サバイバル,後日談】

島根への移住は4週間で断念した。神奈川の実家に戻り,疲れ切った脳が元に戻って3日たった。実家の環境は申し分ない。冷蔵庫も,洗濯機も,車もある。トイレも水洗式だ。家の中には虫もいない。窓やドアの鍵も閉まる。便利,快適,安全。なんてつまらないんだろう。何もする必要がない。 何もないことの素晴らしさを痛感している。なければないで,なんとかする面白さがあった。何もないところに,プラスしていくことは簡単に感じた。どんなにしょぼいものでもプラスになるから。 いろいろあればあるほど,「

手洗いと草マルチ 【地方空き家サバイバル,28日目,2022/6/19(日)】

移住して4週間たった。まだ洗濯機は買ってない。置く場所が定まらないのと,手洗いに可能性を感じるからだ。今は週2回ほど手洗いしている。手洗いの課題は、すすぎと脱水。すすぎは,バケツとタライの導入で効率が跳ね上がった。だが、まだまだ石鹸カスが残る。脱水は手つかず。腕力で絞っている。何かスマートな方法を考案したい。 そんな私の,手洗い生活28日目を記す。 やったこと今日やったことは,以下のとおり。 ・庭のゴミの発掘 ・畑に草マルチ ・洗濯(手洗い) 草は草で制せるかこれからは

省エネと種まき 【地方空き家サバイバル,25日目,2022/6/16(木)】

電気の小売会社を変更したため,2週間分の電気代の請求書が届いた。 移住してからの2週間の電気使用量は14kWhだった。1ヶ月に換算すると約30kWh。ガスも車も使っていないことを加味すると,まあまあ省エネな暮らしができていると思う。うれしい。 電気を使うのは,IHコンロ,ドライヤー,スマホとPCの充電,LEDランタン用の単4電池の充電くらい。昨日から,冷蔵庫が入ったため,来月の電気使用量は上がるだろう。メーカー仕様では月25kWhくらい。今月の電気使用量と同じくらいでビビる

観光の反意語 【地方空き家サバイバル,24日目,2022/6/15(水)】

観光の反対の意味をもつ言葉はなんだろう。今私がやっていることは観光の真逆のことだと思う。 私が思う観光とは,トラブルが起きないように整備され保障された旅のこと。個人的には退屈に感じる。何の保障もない地に自己責任で乗り込み,トラブルは現地人に尋ねて解決していく旅のほうが好きだ。一つ一つ自分で判断して,成功と失敗を体に刻みつけていく。整備や保障の不備に怒る旅より,トラブルを解決したときの達成感や有能感を味わえる旅。思わぬ助けに感謝できる旅。そんな旅が好きだ。 いろんな場所が,

嫌なのは最初だけ 【地方空き家サバイバル,23日目,2022/6/14(火)】

脳の学習能力はすごい。良いことも悪いことも,すぐに色あせる。そんなことを,日々実感している。主に,悪いことからだけど。 今日は,キッチンの水漏れの原因を調べた。キッチンの棚ごと取り外してみたが,そこには最悪の光景がひろがっていた。うごめくGたちと積年の汚れだ。とはいえ,こんなこと,この家に来て何度目のことだか。もう慣れてしまっている。掃除の邪魔をしてくるGたちを潰しながら,ゴミを取り除いていった。 この家に来て,嫌だと感じることは結構あったが,どれも慣れた。ハエのたかるト

ワイルドな遊び場 【地方空き家サバイバル,22日目,2022/6/13(月)】

今日は,庭の畑に畝をたてた。畝立て作業は,楽しい。子供の頃,砂場で街を作ったことを思い出す。道路や川をつくる気分で,通路の土をすくい,畝に土を盛っていく。ここはサトイモ,ここはホウレンソウ,と区画をくぎっていく。3×3mくらいの小さな畑なので,1時間くらいで終わった。楽しい範囲で終わるのが,家庭菜園のいいところだと感じた。 近所をうろつくと,家庭菜園をやっている畑をたくさん目にする。それぞれの人が思い思いの畝をたて,野菜の街をつくっている。支柱のたて方,ネットのはり方など,

レジ打ちと対人不安 【地方空き家サバイバル,19日目,2022/6/10(金)】

今日は,ホームセンターでレジ打ちのパート。島根に移住してから,最もたくさんの人と接した日だった。独り身なので,誰とも話さない日もある。近所の人は積極的にからみに来てくれるが,それでも,誰も来ない日もある。 レジ打ちの仕事は,人と接する機会を持てて良いのかも知れない。というのも,コロナ禍で家に引きこもっているとき,じゃっかん対人不安が強くなった経験があるからだ。そのときは,何をされるわけでもないのに,周りに人がいるのが嫌だった。気になり,『社交不安障害』という本を読んでみた。

にぎやかな畑仕事 【地方空き家サバイバル,18日目,2022/6/9(木)】

畑を耕してから,2週間たった。ポットにまいた種も,芽が出て十分育ってきた。天気も晴れ。今日は植え付け日和だ。畑での作業に精を出した。 畑で作業していると,たくさんの人に声をかけられた。畑を貸してくれた人,近所の人,近所の保育園や介護施設の職員,そして,散歩にでた園児たちの大群。ここ島根の文化なのだろう,通る人はみな,挨拶したり,話しかけてくる。 いい場所の畑を借りられた。 通る人たちも楽しめる畑になるといいなと思う。 そんな私の,家庭菜園生活18日目を記す。 やったこ

ゴミの輪廻 【地方空き家サバイバル,17日目,2022/6/8(水)】

この家には,地下室がある。しかし,地下室の入り口は,封鎖されていた。家具がたくさん積み重ねられていたのだ。地下室の中に何が入っているのか。当然,気になっていたのだが,家具をどけるスペースが確保できなかった。日々の地道な掃除とゴミの分別により,スペースは確保できた。ケガをしないように家具をどかして,入ってみた。 地下室は6畳くらいの広さで,高さが1.5mといったところ。キッチンの下の空間だが,キッチンの初期状態よりきれいな気がする。気になる中身だが,ちょっと良さげな家具と,大

庭効果 【地方空き家サバイバル,16日目,2022/6/7(火)】

生い茂る庭木を伐採してもらった。その下の土には,大量のゴミが埋まっていた。植木鉢,ビール瓶,蛍光灯,トタン,割れたガラスなどなど。いわゆる,埋め立てるゴミが埋め立ててあった。私にはこんなことはできない。土に還らないものを土に埋めるなんて。悲しさと怒りを感じた。いつどんな時代に生まれたらこんなことができるんだろう。 とはいえ,今私が使っているものも,埋め立てるゴミになるものばかりだ。くそっ。腹立たしい。自分も同類じゃないか。私が出したゴミも,どこかの土に埋められている。 ゴ

虫はさっさと移住する 【地方空き家サバイバル,15日目,2022/6/6(月)】

問題はズボラな私を動かしてくれる。今日,私を動かしてくれたのはコバエだ。2日前にトイレで5匹くらい見かけた彼らだが,今日は20匹くらいになっていた。さすがにうっとおしい。我が家のトイレは汲み取り式である。まあ,ボットン便所ということ。糞尿は便器の下のタンクにたまり,数年に一度くみとってもらう。 トイレについて調べてみると,世の中にはコンポストトイレ(バイオトイレ)というものが存在していることがわかった。このトイレは水を使わない。微生物によって,糞尿を分解してもらうというもの

木が潤い,自分も潤う 【地方空き家サバイバル,14日目,2022/6/5(日)】

今朝は,朝から眠かった。起床時間を3時から5時に変えたので,時差ボケが起きているのだろう。ちょっと体を動かせば,目が覚めるだろうと思い,畑を耕した。 1週間ぶりに耕した畑。1週間前はガチガチで,土器のように生き物の気配がない土だった。だが,少しいれた堆肥が効いているのだろう。少しだけ微生物の気配がしてきた気がする。目に見えない微生物たちの働きが,土の状態として可視化されている。 土にはたくさんの微生物がいるということを,発見してくれた人々のおかげで,土作りの方針がたてやす

お気に入りの西の窓。ガラスはまだない。 【地方空き家サバイバル,12日目,2022/6/3(金)】

虫にとって,人家は牢獄のようだ。この1週間,家の隅々を掃除してそう感じた。私の家の周りには,豊かな自然が広がっている。そこから家へ迷い込んだ哀れな虫が,ガラスに阻まれ出られずに死んでいったようだ。窓の周りには虫の死骸がたくさん転がっていた。 現在,窓の修理中。バリバリに割れたガラスを窓枠から外した。しかし,窓枠にはめるガラスはまだない。しょうがないから,ガラスなしのままにしている。ビニールなどでふさごうかと思ったけどやめた。これなら,迷い込んだ虫たちも,無事に家から出られる