おべんとう日記「オムライス記念日」
彼の家の冷蔵庫にはなぜか、業務スーパーで買った大きめのケチャップしかないらしい。
「最近、スーパーのお弁当しか食べてないし、栄養のあるものが食べたい。」と、仕事終わりの疲れた私に、電話ごしの彼は言う。
正直、今日は自分の家でゆっくりしたいし、今から料理を作るのは面倒くさいし、料理に自信がある方ではないし。『栄養のあるものって何?』って、足らない頭をぐるぐると回転させて、栄養があるかないかは置いといて、『オムライスにしよう!』と閃いた。
冷蔵庫にあるウインナーが、『チキンライスにしなくても、ウインナーで簡単にできるよ。』と、優しく諭してくれている気がした。
とりあえず、キッチンにあるオムライスに合いそうな、にんじん・ピーマン・トマト・たまねぎ・コーンなどのお野菜と、冷凍庫にあったシーフードミックスを、先ほどのウインナーと炒めて、ケチャップライスとフライパンで一緒にした。
自分のために作るオムライスには、たまごは1つしか使わないけど、なんとなく『2つ使ってもいいかな?』なんて思って、ふわふわのたまごで、ケチャップライスを包んだ。
「お腹減った。」のLINEが届いて、「私も。」と適当に返事を返す。
棚にちょうど最近買ったお気に入りのまんまるいわっぱのおべんとう箱があって、オムライスが見事にハマった。
隙間には、塩麹で味つけして焼いたエリンギと、片栗粉をまぶして揚げ焼きしたダイコンに塩を振ってから入れて、ミニトマトを添えた。
出来たばかりのオムライスを持って、急いで彼の家に向かった。
インターホンを鳴らしたらドアが開いたから、「UberEatsです!」と私は冗談を言いながら、クスッと笑った彼にオムライス弁当を渡した。
食べ始めた彼が、スプーンですくったシーフードミックスの小エビを私に見せながら、「何入れたの?」と聞くもんだから、「毒しか入れなかったよ。」と、私はシリアスな表情で答える。彼は自分の首を抑えて「うゔ」と声をだして、苦しんでいるフリをする。
そんな彼を見て、『いとおしい』と思う。
「おいしい」とか気の利いたことは言ってくれないけど、モリモリと食べてくれて、私のおべんとう箱を丁寧に洗ってくれたから、とりあえずいいや。
5歳児みたいなあどけない彼の笑顔をみると、今日の疲れが吹き飛んじゃったしな。
気分の乗ったわたしが「今日はオムライス記念日ね。」って弾んで言うと、「俵万智?」って聞いてきたから、得意げに笑いながら「うん。」って言ってみた。
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