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AIと研究者の協働で実現!世界最高性能の鉄系高温超伝導磁石が誕生 東京農工大学

東京農工大学とその協力研究者たちは、AIと人の力を融合させ、鉄系高温超伝導磁石の合成において画期的な成果を達成しました。この新たな超伝導磁石は、従来の磁石を凌駕する強力な磁力と優れた安定性を持ち、幅広い分野への応用が期待されています。

本研究の成果は、従来の世界記録の2倍以上の磁力を持つ鉄系高温超伝導磁石の開発に成功した点です。この磁石は、小型冷凍機によって38ケルビン以下に冷却することで2テスラを超える強力な磁場を安定して保持することが可能です。従来の超伝導磁石は液体ヘリウム(沸点:4.2ケルビン)を必要としていましたが、鉄系高温超伝導体の応用により、よりエネルギー効率の高い冷凍機での運転が可能となります。これにより、MRIやNMRなどの医療機器から高エネルギー加速器まで、さまざまな分野での利用が期待されています。

本研究の鍵となったのは、AIによる機械学習と研究者の経験に基づくアプローチを融合した合成プロセス設計手法です。多結晶型の鉄系高温超伝導体は、構成する結晶粒界の複雑なミクロ構造が性能に大きく影響します。この課題を解決するため、研究者は自らの知見をもとにプロセスを設計し、AIは機械学習に基づいて合成プロセスを最適化する方法を提案しました。

具体的には、AIがプロセス設計向けにカスタマイズされたベイズ最適化ソフトウェア「BOXVIA」を活用し、研究者が試料を合成して特性を評価、データベースを更新する一連の流れを繰り返しました。このプロセスにより、研究者とAIが独立して最適な合成条件を見出し、最終的には非常に高性能な磁石を作り上げることに成功しました。

AIが設計した試料では、結晶粒界の間隔に二峰性の広い分布が見られ、これまでの高温超伝導体では見られなかった新しい特徴が確認されました。このミクロ構造は、超伝導電流特性に大きな影響を与えると考えられ、鉄系高温超伝導磁石の性能向上に寄与する重要な要素とされています。研究者が設計した試料との比較により、AIが探索したプロセスが新しい可能性を開拓する力を持つことが明らかになりました。

今回の開発による超伝導磁石は、多結晶型材料の製造プロセスを基盤にしており、計算シミュレーションの活用によりさらなる性能向上が見込まれています。一般的なセラミックス合成プロセスの応用が可能なため、効率的なスケールアップが期待されます。これにより、医療機器、科学研究、エネルギー分野などでの実用化が一層加速するでしょう。

今後、AIを活用した材料合成プロセス設計手法は、データベースや生成AIの進化とともに、さらなる発展が予想されます。研究者とAIの協働が、新たな超伝導材料の開発に貢献し続けることで、科学技術の進展に大きく寄与することが期待されます。

詳細内容は、東京農工大学が提供する元記事を参照してください。

【引用元】

【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7


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