奈倉有里さんのエッセイ「心を寛く レッシング」日本経済新聞夕刊2023.11.1

 ロシア文学者の奈倉有里さんが日本経済新聞水曜夕刊で連載中のエッセイを毎週楽しみに読んでます。

2023.11.1は「心を寛く、レッシング」
〈つまらない話はあとにしてください。そこに涙する人がいます、まずはあの涙を拭かなくては。〉
ゴットホルト・レッシング「賢人ナータン」

 1779年に刊行されたというドイツ詩劇「賢人ナータン」の舞台は12世紀のエルサレム。

「ユダヤ教、キリスト教、イスラム教のいずれが真の宗教か」と問われたユダヤ教徒ナータンの言葉が印象的です。

「なにが本物の宗教かを突き詰めて排他的になるより、それを乗り越え互いを尊ぶ方がよほど大事だ。」

 キリスト教徒に妻と子供を殺されたナータンがこのセリフを言えるようになる過程を伝え、最後に奈倉さんの言葉でこう締めくくります。

「どんなに尊い思想も大事な宝物も、殺し合いの種になった時点でその最も尊い部分が壊れてしまう。立ち止まるべきはもっとずっと手前にある。」

 古典の中に現代の社会問題を重ね合わせ、控えめに諭すような文章で平和への想いを伝えようとする意志が汲みとれます。

 報道からロシア-ウクライナ、イスラエル-ハマス間のつらいニュースがなくなることを願いつつ、自らも何かできることはあるだろうか?と考えた時、まずは、「心を寛くもつ」ことからはじめようと思いました。

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