アレのアレ/増谷文雄全訳注「正法眼蔵」七「王策仙陀婆」

 2023.11.5プロ野球は日本シリーズで阪神タイガースが「アレのアレ」を決めました。38年ぶりと言われても岡田監督が5番を打ってた頃のことなので昔すぎて記憶から消えてしまってます。

 日本シリーズをテレビで見てる時、「それ ちょうだい!」と家族に言われ、テーブルの上に置いてあった「テレビのリモコン」を渡すと「ちがう!」と言われ、再度「ボールペン」を渡すと、また「ちがう!」、再度「耳かき」を渡すと怒り出し、「ポ テ チ!!」と言って私の食べていたポテトチップスを強奪されました。

その時に思い出したのがこの本です。

 私が本屋さんだったら、誰も買わないかもしれないことをわかりつつ、必ず置いておきたい本の一つ「正法眼蔵」増谷文雄訳注(講談社学術文庫/全8巻)の7巻に「王索仙陀婆」という言葉があります。

 この「王索仙陀婆」の巻は寛元3年(1245)10月22日、道元が越前の大仏寺にありて衆に示すとあります。大仏寺は翌年の6月15日から「永平寺」と名前を変えます。そうあの「永平寺」です。

「仙陀婆」とは、「saindhava」の音写で、塩、器、水、馬の4つの意味を持つことばで、むかし大王が「仙陀婆」ともとめると、智慧のある臣は、それが何を意味するかをすぐ知ることができたといいます。

 例えば、王が手を洗いたいと思っている時に「仙陀婆」と言われれば、即座に水を用意し、外出したいと思っているときに「仙陀婆」と言われれば馬を準備するといった感じです。

「智慧ある臣は、よく大王の密語を解するというものだと世尊は説かれた」と「大般涅槃経だいはつねはんぎょう」巻九、如来性品にょらいしょうぼんに説かれているとのこと。

 つまり「仙陀婆」は「アレのアレ」みたいな使い方とも言えます。「それ」と言われて1回でポテチを渡すことができなかった私は、すぐれた臣下にはなれないようです。
残念!!

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