2021年の三冊
今年も残り数時間。師走は年々短くなるようです。
引き続きのコロナ禍や東京オリンピックなど社会的な波が多く、また個人的にもビッグウェーブに飲まれた一年でした(その話は年明けに)。そんな2021年、特に印象的だった三冊を紹介します。
一冊目|リチャード・P・ファインマン『ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上・下〉』
ノンフィクション/エッセイから、こちらの一冊(厳密には上下で二冊)。
なんといってもファインマンさんの愉快で前向きな人柄に惚れました。かつ純粋に面白く、何度も笑いながら読んだ記憶があります。物理学者という職業は自分自身と遠く離れていますが、「ファインマンさんのような人間になりたい!」とはじめて思えた人物かもしれません。その後以下の記事にもつながっています。
どんな人にもお勧めしたい一冊なのですが、特に、まだ将来が見えないと感じている若い人に読んでほしい。中学生ぐらいから読めるかな。ファインマンさんの好奇心やバイタリティを知って、元気になってほしいなと。(まぁ、私なんて若くないのにいまだ将来が見えないんですけどね。笑)
二冊目|レイモンド・カーヴァー『大聖堂』
海外文学に関しても実りの多い一年でした。中でも特別に刺激が強く、忘れられない一冊がこちら。
短編なのですぐに読めます。全体的にややシュールで好みが分かれそうなカーヴァー作品においても、『大聖堂』(本のタイトルではなく短編として)は骨格がわかりやすく読みやすいと個人的に感じました。
ネタバレすると面白さが激減してしまうので、本当に良かったシーンをここに書くことはできないのですが……アメリカの現代文学に興味のある方はぜひ読んでみてください。冷たいようで温かい「人間」という存在の尊さを、混じりっ気なしに感じられる一編。
ちなみに、英語学習気運が高まっていた時期に重なったのでペーパーバックも買いました。が、まだ読めていません……。来年読めるかな。
三冊目|志賀直哉『暗夜行路』
年末にすべり込みでのランクイン!
昨日感想文を書いたばかりなのであまり書くこともありませんが……今年読んだ日本文学の中では特に面白かった一冊です。(村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と迷いましたが、あちらは再読でこちらは初読なので、初読のほうを選びました。)
上の記事ではあまり触れなかったけれど、「小説の神様」と呼ばれる志賀直哉の文章力にも感銘を受けました。私は「どうだ、上手いだろぉ?」という文体や過度な語彙にはちょっと引いてしまう時があるのですが、志賀直哉の文体は思った以上に自然でした。夏目漱石が「あれはオレにも書けん」と評した──的なことが解説に書いてあり(こんな口調じゃないけど笑)、そこも面白いのでよかったら読んでみてください。
内容的には暗い物語、でも不思議と元気をもらえます。人生に悩んでいるときに読むと回復できそう(人によるかもしれませんが)。
最後に
昨年の記事(「2020年の三冊」)を読み返すと、こんなことが書いてありました。
2020年は、明るさよりも暗さの印象が勝つ年だったな。今になってそう感じます。コロナのインパクトはもちろんのこと、自分にとって出会いよりも別れの印象が強く、精神的には健全だったものの前半も後半も自分らしさを見失っていたように思います。
それに対して2021年は──まだうまく言葉にできないけれど、出会いの多い年でした。出会いというとすこし大げさかな。過渡期というのか。自分のこと、家族のこと、仕事のこと、将来のこと。「自分」にまつわる諸々と向き合う一年でした。
そのぶんあえて距離をとったものや結果的に距離が離れてしまった物事もありますが、自分らしさを取り戻す過程における必然だったと前向きに感じています。
来年はどんな年になるのか、今までで一番予測ができない大晦日です。
とにかく周りのみなさんが元気で健康で過ごせたらいいなと願っています。今年も一年ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。
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