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少子化の当事者になっていた

保育園の内定通知が届いた。

私たち夫婦はこの地区ではおそらく収入が少ないほうなので、まぁ順当だったのかもしれない。後から振り返ればそう思えるが、届くまでの数日間ずっとソワソワしていた。

「まったくどこにも入れない」という状況にはならない、とわかっていた。定員割れしている保育園もいくつかある。しかし、10箇所の保育園を自分の目で見て回った結果「ここはちょっと嫌だな」と感じる園もあったわけで、希望した場所に子どもを通わせられることにホッとしている。とても嬉しい。

そして、ようやく仕事復帰できることにもホッとしている。正直、子育てしながら仕事をすることに困難を感じはじめていた。仕事自体は楽しいが、思うように集中できず、もどかしい。体力も削られる。「預けて仕事をするほうがずっと楽」とよく聞くが本当にそうだろうと思う。

何はともあれ、4月から新生活が始まる。

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子どもが生まれて以降、夫婦でずっと話し合っていることがある。

「子どもをもう1人(以上)つくるかどうか」。

結論から言うと答えは出ておらず、とりあえず(夫婦ともに)仕事を頑張る、ということにしている。1年も育休をもらっていたので、すぐに子どもをつくってまた中断、というのは嫌だし。

とはいえ、もう30代後半。そんなに悠長なことを言っていられない年齢でもある。

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子どもは可愛く、子育ては楽しい。大変なことも多々あるけれど、それ以上に子どもができて幸せだなと私たちは感じている。だから、子どもがもっといてもいいなと思う。

何かの本に書いてあった。
子どもが1人だと、家族内で子どもがマイノリティになる。
子どもが2人いると、大人と子どもの数が対等になる。
子どもが3人以上いると、家族内で子どもがマジョリティになる。
この考え方に「なるほど」と膝を打った。

だからというわけではないが、3人ぐらい子どもがいてもいいな、とすら思う。出産前に比べるとかなり考え方が変わった。

それでも迷っている理由は、9割以上が金銭面の事情だ。現状すごく困窮しているわけではないが、余裕もない。

──私は「金銭的な事情で何かを諦めた」という経験がない。高校までは公立で塾も行かなかったが(地方だったし、一人で勉強するほうが好きだった)、大学には2回通った(私立&国立+仕送り…恐ろしい出費)。海外旅行にもたくさん連れて行ってもらった。欲しいものもたくさん買ってもらった。「学研」の科学と学習、ワガママ言って両方とらせてもらったこともある。

2つめの大学に通いたい、と親に話した時に、ネガティブなことは何一つ言われなかった。むしろ喜び、全力で応援してくれた。そのおかげで今の仕事をしているし、夫をはじめとして今の人間関係のほとんどはこの大学で生まれた。

やりたいと思ったことは全て親がサポートしてくれた。たぶん、甘やかされすぎではある。全てが教育上良かったかはわからないが、たくさんの経験をさせてもらったことには感謝してもしきれない。

だから自分の子どもにも、たとえば医学部、私立理系、私立美大、海外留学……というような選択肢の全てを応援したいという気持ちがある。できるだけ「奨学金使ってね」とは言いたくない。

お金がなくても幸せになれる、かもしれない。たしかに、お金がなくても前向きに生きていくのは大事なことだ。でも「うちは貧乏になるけど力を合わせて頑張ろうね」と今の私が言ってしまうのは、無責任だと思う。

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少子化問題が、以前にも増して話題になっている。東京都はすでに月5000円の手当を発表した。もちろんありがたいことだが、5000円(18年間もらったとして108万円)では正直、心が動かない。

自分がお金をかけてもらったからこそ、同じように子どもの未来に投資したい。それができるか、不安だ。

そうか。私たち、まさに少子化の当事者になっているんだな……と気づいたのはつい最近のことだ。

終身雇用でもない私たち夫婦にとって「よし、育てられる!」と確信が得られる日など来るはずもない。だから、諦めるか、ひとりっ子を前向きに捉えるか、それとも職を変えるか、「子どものためにもっと稼ごう(たぶん稼げる)」と楽観視するか。どれかだろう。

国が“異次元の”少子化対策を打ち出しているという事実は、具体性はなくとも、少しだけ楽観視の支えになる。ほんの少しだけど背中を押してくれる。

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他の家庭は、この問題をどんな風に考えたり、解決したりしているのだろう。


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