マガジンのカバー画像

【読書】のマガジン

147
読書感想文、読書に関連する投稿のみを集めています。読書の記事のみにご興味のある方はこちらをフォローしてください。
運営しているクリエイター

2021年6月の記事一覧

新潮文庫のプレミアムカバー2021

ふらっと近所の本屋に立ち寄ったら、見つけてしまった。待ち望んだ今年のプレミアムカバー✨ さっそく、7冊中4冊を購入。私が本屋でみつけたラインナップは、 ●夏目漱石『こころ』 ●太宰治『人間失格』 ●星新一『妄想銀行』(※たぶんこれだった……自信なし) ◎村上春樹『蛍・納屋を焼く・その他の短編』 ◎シェイクスピア『ハムレット』 ◎ヘッセ『車輪の下』 ◎三島由紀夫『金閣寺』 ※公式サイトでまだ発表されていないので、他にもラインナップがあるかもしれません。 ●は見送り、◎を

「物語を支配するものは声ではございません、耳でございます」

■イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』 「物語を支配するものは声ではございません、耳でございます。」 (P.175) 難解な本である。 短く、読むこと自体は難しくないが、解釈の難しさにおいてはなかなかのものだった。 しかし私は「作者の意図を真に理解する」という願いはもともと叶わないし、その必要もないと思っている(カーヴァー『愛について語るときに我々の語ること』の感想でもそのようなことを書いた)。投稿のタイトルで引用したように「物語を支配するものは声(語り)ではなく、耳

「真理はその美しさと単純さによって感知される」

■リチャード・P・ファインマン『物理法則はいかにして発見されたか』 推論の正しさは、帰結をすべてチェックするよりはるか以前にわかるものです。真理はその美しさと単純さによって感知される。仮説をたて、ちいさな計算を二つ三つして明らかに誤りということでないのを確かめると、もうそれだけで容易に正しさが知れるものです。 (P.264) 前回読んだ『ご冗談でしょう、ファインマンさん』はごくライトな話題を扱うものだった。しかしファインマンさんは「物理学を教える人」として、そのわかりやす

性からの解放、性への解放

■マリオ・バルガス=リョサ『楽園への道』 「女神か。娼婦か。この女は何者なんだ、コケ」 「女神で娼婦で、他の者でもある」とポールは友人たちのように笑わないで言った。「それがこの絵のすごいところさ。一人の女の中に千の女がいる。あらゆる欲望の、あらゆる夢のためのね。俺が飽きない唯一の女だ。今では俺にはほとんど見えないがね。でもこことここ、そしてここにあるぞ」  そう言いながら、コケは自分の頭と心臓とペニスをさした。(P.460) ずいぶん前に、池澤夏樹編纂の世界文学全集の一冊

「その不気味さが、言いしれぬ魅力となって、私をそそのかすのでございます」

■江戸川乱歩『江戸川乱歩傑作選』 でも、その不気味さが、言いしれぬ魅力となって、私をそそのかすのでございます。(「人間椅子」) 数年ぶりの再読。江戸川乱歩に関してはこの『江戸川乱歩傑作選』と『江戸川乱歩名作選』の二冊しか読んだことがないが、やはり、魅力的な作家である。 ぱっと見はその、(言ってしまえば)趣味の悪い奇怪な世界観に一歩ひいてしまうのだけれど、グロテスクというベールに隠された文章力に気づくとき、ハッと驚かされる。 江戸川乱歩とエドガー・アラン・ポー江戸川乱歩