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少しずつ、大丈夫になること

先日、はじめて映画『海街diary』を観ました。

「少しずつ、大丈夫になる」ということを思いました。


海街diaryは、鎌倉に住む幸、佳乃、千佳の三姉妹が異母姉妹であるすずを引き取り、一緒に暮らしていくという物語です。
鎌倉の海や桜など美しい景色とともに、4人の交流が描かれています。

映画の中で、すずはさまざまな悩みを抱えています。
父のこと、父が再婚した義母のこと、三姉妹から父を奪ったのは自分の母であること、どこにいても居場所がないように感じてしまうこと…
義母とうまくいっていなかったすずにとって、三姉妹との出会いは救いでしたが、不安や葛藤をともなうものでもありました。

三姉妹もまた、さまざまな事情を持っています。離れて暮らしている母との関係や、付き合っている男性との関係などそれぞれに悩みやぎこちなさを感じています。

この映画では、それらの悩みが少しずつ、吐露されていきます。
すずの同級生の男の子や、馴染みの食堂のおばさん、三姉妹の母、幸と不倫関係にある男性、そして4人の姉妹同士の関係のなかで、1年の歳月をかけて、その悩みは打ち明けられます。


私はその流れる季節を見ながら、そうだよな、少しずつ、大丈夫になるんだよな、ということを思っていました。


多くの物語では、問題は最初に提示されます。主人公は悩みやコンプレックスに自覚的で、読者、視聴者である私たちにもそれがわかります。
そして、その問題はひとつのなにか大きな出来事によって解決される。

しかし、現実ではそうでないことが多いのではないか、と思うのです。
自分の悩みには、悩んでいる最中にははっきりと気づけなかったり、うまく言葉にならなかったりします。
そして、悩みを一度に解決するような劇的な事件も、そう簡単には起きません。

少しずつ、悩みを自覚して、少しずつ、大丈夫になっていくのです。

直接は関係のない誰かの一言に、少し落ち込んでいた気持ちを掬い上げてもらったり、ふと見た景色の美しさに悩みをさらわれたり、季節ごとの行事を積み重ねることでここにいていいんだと思えたり。

そういう、小さなことの積み重ねのなかで、悩みが少しずつ浮かび上がって言葉にできるようになる。知らぬ間に解決されることもある。
そういう、少しずつ大丈夫になっていく様子が、この映画では描かれているように思いました。


とても素敵な映画でした。
そして、いつも近くにある海に、不思議と懐かしさ、安心をおぼえます。
もうすぐ夏が始まります。
梅雨があけたら、私も海を眺めに行こうと思います。

#エッセイ #コラム #感想
#海街diary #海街ダイアリー #是枝裕和
#夏に見たい映画


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