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塩むすびの底力

皆さん、おにぎりは好きだろうか。

私は大好きだ。
茶碗に盛ったご飯も良いけど、
ハンバーガーやサンドイッチも美味いけど、

ガブリとかぶりついて、
噛むほどにじんわり甘くなるお米と程よい塩気…何にも代えがたい美味しさだ。

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おにぎりといえば、
主役級の肉じゃがとか天ぷらとか寿司に隠れた、和食の原点じゃないかなぁと思う。

だって米がなければ和食は回らないもの。
どんな味や食材も受け止める大事な存在。

おかずは漬物や納豆とシンプルで良いけど、
米がなくては、おかずがいくらあっても始まらない。

そして即効性のあるエネルギー源として、
お米をコンパクトに携帯する…という知恵として生まれたのがおにぎりだ。

かの豊臣秀吉が、織田信長を討った明智光秀に報いるべく猛スピードで引き返したという
「中国大返し」。

その時も、兵士たちのパワー補給に役立ったのがおにぎりだった。
そう、おにぎりの歴史は深いのだ。

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さて、このおにぎり、
シンプルが故にアレンジが効くし、
それでいて人それぞれ好みが分かれがちな所もある。

具は何が好きかとか。
海苔はパリパリか、しっとり派か、とか。
三角か俵型か、とか。

呼び方も結構いろいろ。
おにぎり、おむすび、にぎり飯…
普段、皆さんは何と呼んでいるだろうか?

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私が小さい頃からよく食べているのは、
一番シンプルな塩むすびだ。

もちろん具が入ったものや混ぜご飯のおにぎりも食べるし好きだけど、
やっぱり最後は、米・塩・海苔の鉄板トリオに戻ってくる。

そして海苔は巻きたてのパリパリよりも、
少し時間が経って米に馴染んだしっとり海苔が好きだ。

パリパリだと海苔が細かくこぼれて食べにくい…というのも理由だが、
1番は小学生の頃、遠足のお弁当におにぎりが入っていたのが嬉しかったからだと思う。

たくさん歩いてヘトヘト、汗びっしょりになった所に、
冷めたおにぎりと麦茶を流し込むのが最高だった。

時間が経って海苔が馴染んだおにぎりは出来たてと違い、
お腹を空かせて美味しく食べる瞬間の為に、わざわざ家から持ってきた「とっておき」なんだと思った。

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突然だが今日、私は家に帰ってきて泣いた。別に仕事で嫌なことがあったわけではない。

今まで繁忙期でキリキリした状態が続き、
帰ってきても頑張る気力が出ず、
それでも免疫力をキープして体調は整えねばと、自炊と睡眠を最優先していた。

健康第一に頑張っていたのに…
悲しいかな、病院にいかねばならぬ不調が発生したのだ。

※あまりお話できないが、
とりあえず薬を飲んで体調を整えれば治るものでした

だが連日の疲れとストレス、
自分のなけなしの頑張りが無駄になったような気持ちで、限界が来てしまった。

もう、何も頑張れない。
そう思って抜け殻と化し、ボロボロと泣いていたのが数時間前である。

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ふと、お腹が空いたなと思った。
夕飯をまだ食べていなかったのだ。

最近の自炊のお陰で常備菜はあるから、何とでも食べられる。
体調不良を治して健康に過ごすなら、
野菜も肉もしっかり摂らねば。

でも今日は、どんな栄養満点のおかずよりも…お米をシンプルにいっぱい食べたいと思った。
そうして私は、
本日のディナーをお米へ全振りすることに決めた。

冷やご飯を気持ち多めにレンチンし、
海苔も大ぶりに2枚カット。

塩を振ったラップにご飯を半量。
多分お茶碗0.7杯ぐらい。
これを丸っこい三角形に握った。

そこに海苔を、ご飯にピッタリ張り付くように巻く。

これをもう一個作る。
実家にいた頃、
母が夜食に作ってくれた塩むすびはこのぐらい大きかったなあと思いつつ。

あえてこの後ゆっくりお茶を淹れたのは、
もちろん海苔がしんなりするのを待つため。

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両手で持って、てっぺんから一口頬張る。
うん、シンプル・イズ・ザ・ベスト。
お米があれば何とかなるなぁと謎の自信が湧く。

ビタミン、ミネラル、食物繊維タンパク質…
それらを考えて作るいつもの常備菜も、
我ながらちゃんと美味しいとは思う。

けど、炭水化物がほとんどを占める、
このでっかい塩むすびは、
それとはなにか違う力が湧いてくる。

ジブリ映画『千と千尋の神隠し』では、
ハクから差し出された塩むすびを千尋が泣きながら食べるシーンが有名だが、
似た感情かしら、これ。

私は泣きながら食べてないけど、
何かが抜け落ちてた自分にパワーを与えてくれるという点では、同じかもしれない。

多分ありきたりだが、
塩むすびがくれたのは「元気」というやつだろう。



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