ロシア・ウクライナ戦争三年目

 2024年の2月24日も過ぎ、ロシアとウクライナの戦争は三年目に突入した。去年の主要な出来事と総括は下記に綴ってあるが、世間的関心度の低下は実感としてかなりある。統計によれば両国の死傷者数(軍民合算)は月に1,000人を超えるが、22年当時のように仔細に語られることは少なくなっている。

https://note.com/tina_note/n/nbd7caec14162

 去年の大きなトピックはウクライナの反転攻勢(ワグネルの反乱もここに含める)とイスラエルとハマースの間で始まった新たな戦争だろう。

・反転攻勢は失敗だった

 ウクライナ軍の南部での反転攻勢は大いに喧伝され、期待されたが、結果を出すことは出来なかった。ウクライナがどう取り繕おうとこれは動かしようのない事実であり、ロシア軍を純粋な軍事力のみで後退させることは難しいことが証明された。

 おそらく、この反転攻勢に付随する一連の出来事の中でもっとも衝撃的な出来事はワグネルの反乱だったが、振り返ればロシア軍の一本化に貢献した以外の功績はなさそうに見える。

 ざっくり言えばウクライナ軍が主導権を握っていたのは2023年の9月か10月までで、それから今現在(2024年3月)まではロシア軍に移っていて、この状況はしばらく続きそうだ。

・イスラエルとハマースの戦い

 中東で突然始まったこの戦争はふたつの意味でロシアとウクライナの戦争にインパクトを与えている。ひとつはウクライナへの関心度の低下を引き起こしたことで、特にイスラエルの強力な後ろ盾であるアメリカが嫌でもそちらにリソースを割かざるを得ないことはウクライナにとって厳しい。

 もう一点は「ロシアを非難しつつイスラエルを擁護する姿勢」に対するダブル・スタンダードという声である。ウクライナから見れば、これはどちらかと言えばポジティブな要素というべきだろうが、すでに証明された「国連の死に体化」の強力な証拠がひとつ増えた点は残念だ。

 もうひとつ幸いなことは、こちらの戦争は終局が見えつつある点で、紅海を航行する船舶の安全という問題を除けば、当初最も心配されていた中東戦争に飛び火する可能性が現時点ではあまり高くはなさそうなことだろう。

・三年目の展望

 ウクライナ軍が近いうちに領土奪還を目指す可能性は低く、兵力と防衛ラインの再編にかなりの時間を割くことになるだろう。これに失敗すればウクライナは一気に崩壊する可能性があり、ないとは言い切れない程度には現実感がある。

 ロシア側が崩れる可能性があるとすれば、戦場ではなく国内(あるいは国際的な)政治問題に起因する何かが起きた場合だろう。これは予測不可能なことなので、やはりなにも解らないとしか言えない。

 いずれにせよ、ウクライナは「結束を保ちながら」「国民にさらなる犠牲(=動員)を許容してもらい」「しばらくポジティブなニュース(=領土奪還)を諦めてロシアに出血を強要する」という非常に難しい綱渡りを強いられることになると思われる。

 生命線とも言える欧米の支援も不透明な状況が続いている。欧州については開戦直後の曖昧な態度よりはずっと前向きに見えるのは良い兆候に見えるが、大統領選挙を控えるアメリカの態度は目に見えて悪化している。
 「世界への影響を考えた場合、ロシアを勝たせるわけにはいかない」という点では一致しているのは最低限の良心と言うべきだろう。

・ドローンの話

 今回の戦争でもっとも目に見えて進化しているのはドローンの扱いだろう。開戦からしばらくは偵察や着弾観測が主任務だったが、やがて手榴弾程の大きさの爆弾を投下できるようになり、FPVドローンは装甲付き車両ですらも撃破できるようになった。海でも様子は同じであり、すでに数隻が撃沈されている。
 去年後半からはFPVドローンが対人にも利用されていて、砲撃と同じ程度の死傷者を出していると言う。FPVドローンの特性上、映像データが残されるわけで、長距離の砲爆撃で「死を直視することが少なくなった」時代が終わり、データを通して「死を直視する」時代が再びやってきたことは憂慮すべきだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?