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今日、トイレで並んで待っていたら、個室のどこからか携帯の着信音が流れてきた。

(トイレの時は出られへんから困るよなぁ)と思っていたら、「もしもし?」と電話に出る声が聞こえてきた。

(おいおい、トイレで出るんかい!)とびっくりしつつ、事のなりゆきを見守った(いや、声だけなので聞き守った?)。

特に聞こうと思わなくても、トイレ中に声が響いているので、自然と聞こえてしまう。

「ごめーん!今、トイレなの。個室にいてさー、ごめんね、ほんと。またね、ごめんねー!!」と、豪快な声で受け答えをしている。すごいなぁ。声から察するに年配の女性だろうか。

結局、その女性の顔を見ることなく、トイレを後にしたのだが、トレイ中に携帯にでるというのはけっこうすごい。そうですよね?出るほうが一般的?なわけはないと思うのだが。

多数派はどちらかは分からないが、私の場合はもちろん、トイレ中の着信にはでない。ただ、例外はもちろんあって、この2つの場合だけ。

①ものすごく親しい人(=「今、トイレやねん(笑)」と言える人)
②どうしてもどうしても大事な用事

①ものすごく親しい人って、どれくらいかというと、この世で1人しかいない。実の姉だ。夫は無理。そこはさすがに夫婦なので…。友達もちょっと。そこまでは笑い飛ばせないかなぁ。

「トイレでさー」っていうと、どうしても相手の人は情景を思い浮かべてしまうだろうし、言わなくても後ろでザーって音がしたらなんかわかっちゃうし…。

②どうしてもどうしても大事な用事は、仕事とか受験結果の通知とか、その時に話をしないといけないものだけど、今の私には幸い(?)ない。基本的にメールやチャットのやりとりだけで仕事をしているから。

ただ、四六時中、寝てるとき以外、携帯を肌身離さずにいたときが過去にはあった。今から20年近く前、就職活動をしているときだ。

就職活動は忙しい。午前はここ、午後はここ、面接、説明会、筆記試験…と、1日中動き回っている。移動中や試験の時に着信音が聞こえるとよくないので、基本的には外出時はマナーモード。しかし、それでカバンに入れてしまうと気づかないので、ほんとにずっと手に握りしめていることになる。男性のスーツのように、胸ポケットとか、どこかに携帯をい入れることができるスペースが女性用スーツにもあれば…と何度思ったことかしれない。

なんでそんなに携帯の着信を気にしているかというと、試験の合否が電話で伝えられるからだ。着信に出なくても、何度かかけてもらえるとは思うが、もしかしたら「もう面倒だ」と思われて、あるいは忘れられて、連絡がこないままになってしまうかもしれない。だから、企業から着信があればすぐに出たい。

携帯は軽いのでそんなに大変じゃないでしょ、と思われるかもしれないが、ずっと手になにかを握りしめているというのはけっこう疲れる。身体的にはもちろんそうだが、精神的にもかかってくるかこないか分からない着信を待つというのは、かなり疲労困憊だ。さらに、当時は超就職氷河期。

以前も書いたが、40社近く受けたし、エントリーシートの送付から考えれば数か月は活動を続けたと思う。

そんなわけで、家の中にいても、いつ着信があるか分からないので、トイレにも持ち込んでいた。私が携帯を持ち歩いているのか、携帯が私を連れているのか、もう分からないくらい一心同体だ。

とにかく、辛かった就職活動ははるか20年前に遠ざかり、令和3年の私は、着信をそれほど気にしなくてもいい立場にいる。(小学校や幼稚園からの着信はこわいけど)今のところ、トイレで電話にでなくてもいい。

それでもスマホになって、さらに外出自粛になってから、画面を見つめる時間が増えたと思う。以前は必要に迫られて持ち歩いていたものを、今はそこまで必要がないのに肌身離さず持ち歩き、ないと不安になってしまう。

便利になったのか、不便になったのか、難しいところですね。とりあえずトイレは完全なる私的空間として死守したいと思います。




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