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言葉は世界を変えるのかもしれない

出だしにやりがちな自己紹介はやる必要はない、らしい。
同じセリフを繰り返すのは効果的、らしい。

………言葉のプロフェッショナルってなに?

第1章から引っ張られた。なんだろう、これ。



最近わたしのなかで圧倒的に原田マハさんのブームがきている。

よくお名前は聞いていたし、気になってはいたのだけど 積読がそれどころではなくて手を出せていなかった。

それがどうしても好奇心が抑えられなくて『異邦人』を読んだことがきっかけで、むちゃくちゃすきかもしれない…と出会ってしまって『楽園のカンヴァス』であっさりと落ちた。

作家読みするタイプの私は好きになった人の作品は片っ端から追っていく。目につく限り手に取って読んでみたところ、どうやら私はこの人の書く美術ものが好きらしいと気づいた。だからぱらぱらと読んでみて、現代物っぽい本は読んでいなかった。

だけど、なんとなく読んでみたら、心が本当に震えちゃうくらいに良かった『本日は、お日柄もよく』

言葉を扱う仕事がしたい。そう思ってライターの端くれを名乗って一年経つ。書けば書くほど、考えれば考えるほど、言葉は出ないし、文章はめちゃくちゃになっていく。好きだと思う、からなんとか続けているけど下手くそでしかないわたしの言葉なんて意味なんてないんじゃないかと落ち込む日のほうが多い。

単純に「書く」というお仕事のなかでも当然、好きなことだけ書くわけでもないし、楽しいことばかりじゃない。PCを開いて自分で綴ることはおろか、言葉で溢れたSNSを見ることすら嫌なときもある。

だけど、この物語を読んで「言葉の可能性ってやっぱりすごいのかもしれない」とちょっとだけ顔を上げることができた。もっともっとやってみたいかもしれない、と。

電撃的な出会いを経て、スピーチライターの仕事に興味を持った主人公のこと葉。言葉の力を借りて、選挙候補者のスピーチ内容を考えることになる。

新しいことを始めたいけど、と一歩踏み出すことに悩むこと葉に友達の千華が「良い方に変わるなら変わったほうがいい」とにっこり話すシーンには背中を押された。

だって変わることってとてもとても勇気がいる。誰だって現状維持の方が楽だもの。それでも少しでも良い方へ変わるのなら、それはきっと変わったほうがいいことなんだ。


他にも名セリフがありすぎてありすぎて、とにかく読んでみてくれとしか言えないんだけど、私がいちばん心に響いたシーンはやるべきことが多すぎて、自分の抱えられるのか不安になってしまったとこぼすこと葉に、ライバルでもあるワダカマが話した言葉。

「一番やりがいを感じることを、いまはひとつだけするべきだと思う」そのために他のことを捨てる、という選択肢もあるんじゃないかな。

言葉の持つ力って本当にすごい。って読みながら何度も思った。もっともっとこだわりたいのにって何も生み出せない今の自分が悔しくなった。

ぐっとくるシーンと役に立つ内容が余すところなくありすぎて、小説なんだか実用書なんだかわからないくらいの読み応え。

言葉に興味がある人、言葉を使うひと、全然興味ないけどなぜだか人前で話す機会の多い人、もはや日本語を話す人、全ての人に読んで欲しい。

図書館で見つけて読んだけど、これは絶対に手元に置いておくべきものだって確信して読み終わってすぐに本屋さんに走った。

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