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知らない世界で笑っていてほしい/『夜に啼く鳥は』

人がこうなのかもしれないと願ったり、信じたりすることで生まれる不思議なお話がだいすきです。

だから都市伝説とか、妖怪とか、超常現象とか、ファンタジーとか、すごく気になってしまうタイプで。わたしが把握できていないことなんて世の中にはたくさんたくさんあるのだから、何が起きたって別にいいんじゃないかなって思うのです。

いろんなことをフラットに楽しみたいな〜という気持ちがいちばん強いのかもしれません。否定しちゃうよりも、せっかくだからそのまま想像を膨らませたほうが楽しそう!ですよね。

今回、読んだ小説に出てくるのは「不老不死」の一族。あらすじを読んだ瞬間、おもしろそう……!!って思ったてわくわくしながら扉を開きました。

千早茜さんの『夜に啼く鳥は』

傷みや成長を食べる「蟲」を体内に宿した、不老不死の一族。その始まりから、現代にも生きる一族を描いた物語です。

最初の一章は、「むかし、むかし…」と始まりそうな不思議な感じ。どんな風にしてこの一族が始まったのかがわかります。

自分がどうしてほかの人間とは違うのかわからなくて、疎まれ、恐がられ、畏敬され。愛した人とも一緒に生きられない。孤独に生きてゆくしかない姿に胸がきりきりと痛みます。

二章からは現代が舞台。一族の長である御先(みさき)は蟲の力を使いながら、ひっそりと都会で生き、そこで出会う人々を描いた物語。

わたしは違う。けれど、違うということがわかるだけで、未だに自分がなにものであるかわからない。男でも、女でも、人でもない。わからぬまま生かされている。

不老不死だから、食欲もなく、生殖能力もなく、大切な人が死にゆく姿を何度も見送る。どうしても達観せざるを得なくなる。それでも思い出が消せるわけじゃない。

不老不死って人間の憧れのように扱われることが多いけど、やっぱりいいことばっかりじゃないよねって読みながら強く強く感じました。

この小説に出てくる、登場人物が幸せになれることがあるのだろうか。と考えると、切なくてやりきれなくなります。

わくわくしながら読み始めたけど、それはやっぱり他人事だからなんだよなあと思います。あくまでもファンタジーなのかもしれないけど、それでもこういう人たちが、もし、いたら。

どうか、わたしの全然知らない世界で笑っていてくれたらと願います。

千早茜さんはまだ5作くらいしか読めていないのだけど、どれもほんの少し仄暗さがあってとてもすき。おとぎばなし感というのでしょうか。

これから他の作品を読むのがすごく楽しみな作家さんのひとりです。

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