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世界に合った料理を/『ご飯の島の美味しい話』

映画のなかに出てくるごはんに興味を持ったのは『かもめ食堂』が初めてだったと思います。

フィンランドを舞台に、日本食の食堂を切り盛りする女性が描かれているこの映画を初めて観たときのことは今でも覚えています。

多分、高校生くらいだったと思うのですが、なんてことない休日の昼下り。父と話しながら、適当にチャンネルをザッピングしていたとき、たまたま放映していたこの映画が流れていて。なんとなく気になって、なんとなくそのまま最後まで観てしまったのです。

観終わったあと「こんなになんでもない映画なのに、なんか、すごく良かったよね…」と父を話しあって、それからとてつもなくおにぎりが食べたくなったことも。(シナモンロールも食べたかったけど、そのころはまだ未知の食べものでした)

これまで映画といえば、ワー!と盛り上がったりするものばっかり観ていたわたしにとって、それはそれは衝撃的でした。

起伏が大きくなくても日常を淡々と描いた作品に心惹かれるのは間違いなく、この映画との出合いがあったからだと思います。

それから何度も観ている『かもめ食堂』。この映画が素晴らしい理由のひとつとして、絶対的に料理がおいしそうということが挙げられると思うのですが、その料理を「おいしそうに見せるプロ」がいるということを知ったのは随分あとのことでした。

『かもめ食堂』をはじめとして、素敵だなあと思う料理が登場する映画のほとんどでフードスタイリストを担当している飯島奈美さんです。

今回読んだのは、飯島奈美さんのエッセイ『ご飯の島の美味しい話』。

『プール』『深夜食堂』『マザーウォーター』『海街diary』などで、フードエッセイストとして携わったときのエピソードや、実際のレシピ、参考にしている料理本などが載っていて、飯島さんファンのわたしからするとたまらない一冊です。

そのなかでも『海街diary』で登場した「しらすトースト」のエピソードが印象的でした。このしらすトースト、原作ではなかなか重要なポジションで登場することもあって、映画でも絶対に出るだろうと思って楽しみにしていたんです。

そして、出てきた映画。正直原作で見ていたよりもずっとずっとおいしそうでめちゃくちゃ食べたくなりました。

このトースト、ただしらすをのせるだけではポロポロ落ちてきてしまうのだそう。飯島さんはひと工夫して、落ちなくてかつ美味しくさせてみせたのです。

原作マンガに「しらすトースト」のレシピは出てきません。監督からも特にリクエストはなかったので、私が自分で想像して、考えます。見た目もよく、食べて美味しいのはもちろんだけど、映画の中での演技のも考えて、ただ美味しいものを作ればいいというわけではありません。

いろいろと組みあわせて、世界観を崩さず、演技もしやすく、かつ美味しい。というのはフードスタイリストさんならではの視点だなと思いました。

エピソードを知ると作品にますます思い入れが強くなります。今度、同じ料理を作りながら、映画をみようかな。

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もっともっと新しい世界を知るために本を買いたいなあと思ってます。