公明党は「改憲勢力」か?(んな訳無い

国政選挙がある度に強い違和感を覚える。
マスコミは一貫して公明党を改憲勢力としてカウントしてるのだ。
が、そんな訳は無い。
今回は、何故マスコミがこういう報道をするのか、(私見たっぷりに)解説する。


改憲勢力とは?

国会議員の中で、憲法改正を進めたい勢力の事だ。
今のところ、

  • 自民党

  • 日本維新の会

  • 国民民主党

の3政党だと抑えていれば良い。
(少数政党、無所属議員は分かりやすさ優先で省かせてもらう)

国民民主党は、憲法改正へ向けた論点整理や緊急事態条項の必要性を党公式ホームページに出していて、そこは評価する。
ただ、憲法改正に後ろ向きな「連合」(労働組合の全国組織)を支持母体とする政党である事、また野党共闘の可能性を残していて、選挙戦略によって改憲への熱意を強く打ち出し続けられるのか?では、怪しい所がある。

で、問題の公明党だ。
どこのマスコミ報道でも、必ず公明党は改憲勢力にカウントされる
だが、これは明らかな嘘だ。
公明党は憲法改正などしたくないのだ。

公明党の主張する「加憲」

公明党は「改憲」とは言わない。
「加憲」を主張する。

「現在の憲法の精神は素晴らしい。
この全条文について、文言の訂正も要らないし、削るべき所など無い。
ただ、時代の変化に応じて、新たな国民の権利を書き加える事は、あっても良いかも知れない。
なので公明党の求めるものは、現在の日本国憲法を改変する「改憲」ではなく、新たに書き加えると言う意味で加憲なのだ。」

こういう理屈だ。
ばっさり斬り捨てるが、公明党の主張は完全な欺瞞だ。
本音ではどのような形でも憲法改正になど手を付けたくない。
何故なら、公明党は元々、絶対的な護憲政党であり、その精神は今も全く変わってないからだ。

公明党が「加憲」を言い出した理由

公明党が「加憲」を主張し出した理由は明快だ。
「改憲絶対反対」の立場では、国会内で存在感を完全に失う状況に置かれた事があったからだ。

今ではかつての民主党系議員も相当数が「憲法改正反対」に振れてしまっている。
だが、民主党が二大政党の一翼を担い得る国民政党を目指し、自民党と政権を争う事の出来る”現実的”な政党だとアピールする為に行ったのが、
 「私たちは、日本社会党のような『何でも反対』の政党ではありません。
  その証拠として、私たちは憲法改正議論を真っ向受けて立ちます。」
との主張だ。

もし、自民党と民主党、2つの大きな政党が憲法改正を行う事自体に賛同するとした場合、公明党はどうなるのか?
長らく自民党、公明党で連立政権を組んで来たし、予算案、法律立案、改正では与党協議で十分擦り合わせを行って来た。
そこで公明党らしさをアピールしていれば、政党の役割としては十分だった。
自民党内には憲法改正に積極的な議員もいるが、トータルで見れば改正反対派も少なくない。
自民党では「改正した方が良い所はある」は共通認識だが、「国民の反対の声を押し切ってまではやりたくない」「マスコミから袋叩きにされるのは真っ平御免」が本音の議員が中心なのだ。
だからこそ、「自公連立」を組んでいる間は「憲法改正」議論が起こるなんて想定してなかった。
なのに、急に現れた民主党が憲法改正バッチコーイとなれば、自民と民主の2党だけで憲法改正に必要な国会議員の3分の2を満たしてしまう可能性がある。
こうなると自民党が「通常の予算、法案では協力を続けるけれども、憲法改正だけ公明党との協力関係は一旦停止で。だって、公明党さんは『改憲絶対拒否』だもんね?」と言い出しかねない。

「憲法改正」と言う大問題で自民、民主の二大政党が話を付けられるとなれば、それより遥かに簡単な予算、法案でも部分的協力が当たり前のようになるかも知れない。
こうなれば、公明党立党の理念である「護憲」を維持出来ないばかりか、「自公連立政権」の存在意義すら揺らぎかねない。
「護憲」を絶対的教義としていると、今持っている全てを失いかねないのだ。

そこで編み出されたのが
 「改憲」ではなく「加憲」
と言う「護憲」のマイナーチェンジだ。
そもそも、公明党の支持母体である創価学会は、熱心に平和主義活動に取り組んでいる強烈な護憲組織でもある。
「政治的状況から已む無く改憲を了承しました」と公明党が言い出した場合、創価学会側から強烈な反発を受ける事も必至だった。
※基本、集票の実働部隊である創価学会の方が力が強いが、個別政策の話で公明党と創価学会とで揉める事はたまにある。創価学会の方が公明党を完全支配しているようなイメージはちょっと違う。
これまでも、自公連立政権を維持する為に、普通の左派政党だったら絶対飲めないような安全保障関連の議論で自民党側に相当歩み寄って来た。
実は創価学会側はこれらをずっと苦々しく思っていたのだ。

(特に創価学会婦人部は原理的平和主義の主張に強く共鳴している為、自民党への協力を「反戦平和」の理念から遠ざかるとして一部の地域で自公協力を拒む動きもくすぶってる。沖縄など、イデオロギー色の強い地域で、自民党候補が立っているにも拘らず、反対陣営に創価学会の三色旗が飾られる場合があるのは、現場の信者の反発が抑えきれない結果だ。それくらい、公明党が自公連立を通じて無理をして来たとも言える)

政治的状況と政党理念、支持母体である創価学会の意向を考慮した時、
 内部的には「我々の『護憲的精神』は失われていないのだ」
 外部的には「私達は『憲法改正絶対反対』勢力ではありません」
と言い繕う事の出来る「加憲」は、彼らにとって最強の発明だったのだ。

現在の政治状況を振り返ってみれば……

民主党が国民政党を諦めるに至った流れ

民主党政権が終わり、民主党が野党に転落して以降、民主党は国民からの支持を失った。
それも圧倒的に、だ。

民主党の支持母体である労働組合は、かつては社会党を支持していた。
だが、新党が乱立した頃に古臭い反対勢力のイメージしか残らなかった社会党は一気に衰退し、労働組合も社会党から離れ、大半が民主党に乗り換えた。
社会党の主張していた政治的イデオロギーの信奉者が、「社会党はもう古い」「我々は憲法改正を完全拒否する社会党とは違う」と主張する民主党へ乗り換えたのだ。
ここにも軋轢は生まれていた。

民主党には社会党の衰退を見越して、早めに離党した議員が参加していた。
旧社会党グループだ。
民主党が国民政党を標榜し、それなりに議席数を確保できていた時代は、旧社会党グループの存在感は相対的に小さくなった。
だが、広く国民からの支持を失った後、それでも民主党に投票を行い支持を表明するのは、かつて社会党を熱心に支持していたゴリゴリの左派活動家や労組が中心となる。
こうなると、55年体制(国会の議席数で与党自民党が3分の2、社会党が3分の1を分け合う政治状況を指す)の頃から、社会党が強かった地域で民主党が勝つパターンが多くなる。
当然、大きく減った議席数に対して、旧社会党グループの比率が大きくなって行く。

ただ大きくなったとは言っても、元々の社会党系議員数は多くない。
代表選挙の際に自前の候補を立てられないが、他のグループから出馬する2人に対して、旧社会党グループが何方に付くかで当選が左右される、キャスティングボートを握る状況になった。

キャスティングボートとは?
英語での綴りは Casting Vote
cast は「投票する」、vote は「投票(動詞として「投票する」の意味もあるが、ここでは名詞)」。
直訳だと「票を投ずること」。
元は賛否の投票が同数だった場合、最終的な判断を行う議長による投票を意味する。(これは「議長決裁」や「決定投票」とも言う)
転じて、議会において2大政党が拮抗していて、その趨勢を決める第三極の事を指すようにもなった。
「キャスティングボートを握る」との表現で使用される事が多い。

時間泥棒・作

この為、どの党代表も旧社会党グループに配慮せざるを得なくなる。
選挙においても、未だに投票してくれる有権者の中で旧社会党的政策を強く支持する人達を強く意識するしかない。
こうなると、余計にかつての社会党的方向に寄って行くようになり、増々平均的な無党派層には響かない政治主張に流れ着き、更に得票数を減らす悪循環にハマって行く。

立憲民主党が昔の社会党みたいな立ち位置になっているのは、状況から考えればごくごく自然な話だ。
国民政党である事を諦め、常連客だけを相手にする商売へ切り替えたのだから。
このように彼らは急に先祖返りしたのではなく、一歩一歩着実に古い社会主義へと戻って行った。
そして、強烈な「護憲主義」を唱え出すようになる。

公明党から見える今の政治状況

公明党としては、大きな野党勢力が改憲を訴える「最大のピンチ」を脱する事が出来た。
「改憲」は今すぐ出来るような政治課題ではなくなったのだ。

公明党が「加憲」を言い出した理由は何だったか?
二大政党の間で埋没しない為だ。
連立政権を支える政党としての立場もしばらくは安泰と言える。

この中にあって、敢えて「加憲」を強く求める動機など、公明党の中にある訳が無い。
「やりたくはないが、どうしてもやると言うのならば、『加憲』までが限界」が本音なのだ。
公明党に「今すぐ加憲を実現したいのですか?」と質問すれば分かる。
「一番触れては欲しくない所を突っ込まれた」との思いで絶対、口籠るはずだ。

「公明党は改憲勢力」としてカウントしてるマスコミの頭はどうかしてる。
(と言うと、まるで普段は頭がどうかしていないかのようだ。言葉って不思議だ)
ちょっと前の政治状況がどんなものだったか振り返れば、政治に関してずぶの素人である私が辿り付ける簡単な理屈すらまともに報道出来ない。

ただ、マスコミ人がこの公明党の事情について、まるで分かってないと結論付けるのは少々早計だ。

マスコミが、改憲勢力に公明党を入れたままにしておきたい訳

左派マスコミにとって、最大の願いは何か?
自民党政権の終焉だ。
戦後左派の宿願である社会主義的政権の樹立とその政権安定こそを望んでいる。
そういう思いを込めているから、おかしな報道を次々行うのだ。

いまや知ってる人も少なくなったであろう「椿事件」も左派マスコミを覆う反自民の空気を象徴している。

椿事件とは?
1993年、第40回総選挙に際して、テレビ朝日の報道局長・椿貞良が起こした舌禍事件
日本民間放送連盟の会合にて、非自民連立政権樹立を促す報道姿勢だった旨の発言を行い、これを産経新聞が報道して大問題となった。
放送法で求められる報道の公平性を意図して破った疑惑として国会でも議論を呼び、椿貞良は証人喚問されたが、ここでは一貫して否定。
テレビ朝日に対して免許取り消しも取り沙汰されたが、最終的に行政処分で終わった。
また、この事件を切っ掛けとして、放送倫理・番組向上機構(BPO)が設立される事となった。(ただし、その実態は「私達の方で審査はやっておくから、政治が放送内容について口出しするな」のお手盛り機関に過ぎない)

時間泥棒・作

マスコミは一貫して自民党が大嫌いだし、憲法改正を望まない勢力の巣窟だ。
憲法改正を望まない連中にとってみれば、
 「憲法改正に潜む危険性」
を大きく報じた上で、
 「改憲勢力が国会議員の3分の2を越えそうだ」
とアピールするのが一番都合が良い。
憲法改正を望まない有権者は改憲勢力以外に投票する事になるだろう。

つまり、実態はともかく、公明党を改憲勢力に積み上げておくことが、自民党の勢力抑制に一役買うのだ。

そこには「国民の知る権利」を守る姿勢も無ければ、事実をありのまま伝える「ジャーナリズム精神」も無い。
ただただ、自分達の政治的イデオロギーを優先し、活動家然として反自民的報道に邁進する歪んだプロパガンダがあるのみだ。

マスコミ報道を普通に追ってるだけでは、このような背景を正しく把握する事が出来ない。
国民を自分達の目的達成の駒として使うのだから、正にマスコミは「第4の権力」と言えよう(皮肉)。
日本のマスコミは性根から腐っている。

<了>

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