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才助(さいすけ)

新潟県長岡市にある、小さな集落の中に建つとある家。

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明治10年竣工し、築143年経つ、私の祖父母の家です。

私の高祖父(ひいひいおじいさん)の代から住んでいるのは確かなのですが(仏間に写真がある為)、それより前の先祖も住んでいたかもしれません。

まだきちんと家の歴史を辿れていないのですが、家紋には木瓜(もっこう)が使われています。

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文様としては古く唐時代に用いられわが国へ伝来しました。木瓜とも記しますので胡瓜の切り口を連想しますが、本当は地上の鳥の巣を表現したものとされています。神社の御簾の帽額(もこう)に多く使われた文様であったので、もっこうと呼ばれるようになったと云います。
鳥の巣は子孫繁栄を意味し、神社で用いる御簾は吉祥であるということから、めでたい紋とされ、織田信長を代表として家紋とした武家は多くあります。その幾何学的で図案化しやすい絵柄からも分かるように、大変バリエーションの多い紋です。

また、田舎あるあるですが屋号もあります。それが、タイトルの「才助(さいすけ)」です。

江戸時代では、原則としては身分制度により武士以外の者が苗字を名乗ることが認められていなかったため、人口が増加するにつれ同地域内で同じ名を持つ者が増え、個人を特定・判別しにくくなった。旧来の集落単位では人別が出来なくなり、商人や農家が、集落内で取引あるいは日常生活に不便を生じたことから、家ごとに名称を付け、これを人別判別の材料として使うようになった。




ここに住んでいた祖父は、おそらく、この家の4代目くらいだと思います。祖父は、漁師をしていたのですが、祖母と野菜やお米も作っていました。ある時は、酒造出稼ぎもしていたようです。

新潟県の酒造出稼ぎは江戸時代初期の元和年間(1615~1622年)に始まっていたとされ、400年間にわたり続けられられきました。そして、近代には全国の酒造出稼ぎ者の四分の一を新潟出身者が占めるほどになっていました。

[50年程前の家族写真]

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そんな暮らしをしていた祖父母の元に、私の家族は毎年、盆暮れ正月には帰省をしていたので、小さい時には遊んでもらったり、祖父は漁で獲った魚をさばいて食べさせてくれたり、祖母は畑に連れて行ってくれたりしていました。

他にも、お盆には先祖の霊を迎える為のお盆飾りを作り、お墓参りをし、おしょろ船を海へ流すといった流れを見てきたのですが、今思うと「これって貴重な体験だったな」と思うのです。

※以下、「おしょろ船」参考記事

小学生くらいの時「はるちゃんちには、田舎があっていいな」と言われていたのですが、当時はその意味がわからず、みんなそういう体験をしていると思っていました。25年前でさえそんな状況だったので、今となっては、田舎でそういった体験をすること自体が珍しくなっているかもしれません。

祖父は88歳で亡くなりましたが、75歳まで舟に乗っていました。
引退をして入退院を繰り返しながらも、舟の仲間達を気遣ってたようです。


[火葬後、最後に舟と海を見せてあげようと、港に立ち寄り撮影]

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他にも、祖父母からは「戦争の話」を聞いていました。

祖父自身も出征しているのですが、私がずっと覚えているのは、曾祖父が戦死した話です。
お盆のお墓参りの時に、お参りするお墓の内の1つが敷地内にあるのですが、そのお墓は私の曾祖父のもので、お墓の中に骨は入っていません。曾祖父は第二次世界大戦時「玉砕の島」と言われている硫黄島で戦死しているので、骨を持って帰ってくることが出来なかったのです。その為、お墓に入っているのは、終戦後に曾祖母宛に送られてきた「硫黄島の砂」です。そして、お墓には「陸軍曹長」という階級と、名前が彫られています。​

私が13歳の頃まで曾祖母が生きており、よくこの話をしてくれていました。当時は、話自体が怖くもあったけど、年を重ねるにつれその話を聞けたことがどんなに貴重なことだったかと思います。

そんな幼少期を過ごしていたので、映画「硫黄島からの手紙」(2006年)が公開になった時には、絶対見ようと思っていましたが、そもそも話を聞いていなければ、戦争自体に興味がなかったり、他人事のように感じていたかもしれません。



このように、日本の文化や歴史をリアルに体験できる機会が本当に減っていると感じます。

私は、曾祖父に会ったことはありません。でも、実際に生きていた、こんな風に人生を全うしたという話を祖父母から聞いたり、写真やお墓を見たりしてるからこそ、リアリティを感じられて自分事になったのだと思います。

日本の伝統的な文化や歴史が、才助の家で今まで紡がれていたように、今度は大人になった私たちが、これからの世界を担っていく子供達の為にも、こういった話、体験を絶やしてはいけないと心から思います。


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