[ interview#3-16 GK滝本晴彦(柏レイソル) ]

小池龍太選手、古賀太陽選手と続いたinterviewシリーズ。その#3は滝本晴彦選手を直撃いたしました。
滝本選手といえば、「学生時代から『雰囲気』を醸すことにかけては一級品だった」というアカデミー同期選手たちの数々の証言や「滝本選手と記念撮影をした子供たちは健やかに育つ」という、まるで昭和の大横綱のような逸話を持っていますが、その素顔は純粋で謙虚。そして、経験を力に変える特別な能力に恵まれたアスリートなのです。そんな人間性や潜在能力の一端が伝わるinterviewをお届けできたらと思います。

「チームやスタッフ、全ての人たちに信頼されるGKに」
——滝本選手もプロ2年目を迎えました。指宿キャンプはいかがでしたか?
滝本「キャンプへ向かうにあたって、自分が持っていた志や臨む姿勢そのものは昨年と変わらず、集中して毎日を送ることができました。自分の立場とか細かいことは特に考えず、サッカー漬けの充実感あるキャンプでした。大袈裟でなく、集中して練習に入り込める素晴らしい環境を用意してくれたチームに感謝しないといけませんね」

——充実感は昨年から伝わっています。
滝本「新人だった昨年は何も無いところからのスタートでした。今思うと、信頼関係も人間関係も何も無い子供のままキャンプへ臨みましたから(笑)。あれから一年が経って、いろいろと試行錯誤してきて、自分の成長がどこかに表れていたらうれしいです」

——どの世界でも信頼関係は重要です。滝本選手がイメージしている信頼関係とはどのようなものなのでしょう?
滝本「信頼関係はプレーに直結すると思っているんです。1人の選手として、すごく重要なものだと感じています。自分はまだまだプロとしての実力が足りていないですから、まず力を付けて、どんな人間か理解してもらって、試合でもTMでも、『晴彦を助けたい』って思ってもらえるような信頼関係を築きたいです。監督やコーチはもちろん、レイソルを支えてくださっている社員の方々。たくさんの人たちに信頼される選手になって初めて…う~ん…(言葉を探す滝本)」

——……「一人前」だと?
滝本「そうですそうです。『一人前』…それが言いたかったんです(笑)!そう思ってもらえて初めて、一人前の選手だと思うので。それは1年目には気づかなかったり、考える余裕も無かったことでもありますね」

——プロ1年目、滝本選手の中でどのような技術的な進歩がありましたか?また、今年向上させたい技術は?
滝本「昨年よりビルドアップの部分に良い感触があります。少し前だと、プレスに来た相手選手を意識し過ぎて、バタバタしていましたが、今は自分の間合いで下がりながら、『ギリギリまで相手をしっかり見る』ことを強く意識してプレーすることで、少しずつ改善できていますし、『セーフティにクリアする』という選択の余裕を持ったら、下がりながらでも、周りにパスを付けやすくなりました。バックパスを受ける場合も落ち着いてプレーできています。自分へまだまだの選手ですけど、アカデミー時代から叩き込まれてきた足元の技術がようやく身についてきた気がします。元から苦手意識自体も無いですし、根気良くというか、ブレずに続けていきたいですね。どん欲に」

——精神的な部分ではいかがですか?
滝本「メンタルの部分でも、昨年は強い口調のコーチングを受けた後に怯えてしまったり、遠慮をしてしまったり、プレーの質を落としてしまうことが多かった。叱られているわけではないのに。それではもったいないですし、細かなプレーの1つ1つから信頼を積み重ねていきたいです」

——信頼獲得へ向けて、日々の取り組みも変わってくるものですか?
滝本「毎日の練習へ臨む際の気持ちの持っていき方や集中の仕方、準備のところでのルーティーンを一度構築してみたいですね。1つの形に囚われずいろいろ試しています。すごくきっちりしたものでは無いですけど、今は次の日の練習に臨むための最低限のルーティーンをこなしています。いつ寝て、いつ起きて、どのように練習の準備をして…というような。そういった意識が少しずつ技術の向上に繋がっているかもしれません。ただ、ゲン担ぎだけで守れるワケじゃないですけどね(笑)。それは十分わかっているんですけど、一度ルーティーンを組み立ててみたいですね」

——意識の目覚めに伴ってか、プレー中のコーチングやプレーそのものの迫力も変化してきたように思います。判断に迷いがないというか。
滝本「昨年はオドオドしていると思われていたかもしれません。ただ、ゴールを守るだけでなく、チームの狙いや戦術理解を深めながら、先輩たちとコミュニケーションを取って、意見交換していく必要を感じています。きっと、いろんな発見もあるでしょうし、先輩たちの経験から得るもの学ぶものがたくさんあるはず。コーチングだけではなく、自分の考え方や意図も伝えられますしね…さすがに、まだまだ言われっぱなしですけど(笑)、先輩たちとしっかり対話できるよう、知識とボキャブラリーも増やしていきたいです」

——プレーの参考にしている選手はいますか?
滝本「FCバルセロナのGK、テア・シュテーゲンのプレーを参考にしています。バルセロナの選手ですから足元の技術も素晴らしく、相手をいなせることが特長ですね。身体的なサイズもあって、シュートストップの技術も、タイミングも全てが参考になるGKです。自分なりのボキャブラリーで説明すると、『すごく丁寧なGK』です。プレーの1つ1つ、プレーの準備・選択の1つ1つが丁寧な印象があります。自分も丁寧なプレーをするように言われ続けてきたので、シュテーゲンのプレーに目を奪われているのかなって」

「『誰かの目に止まるプレー』ではなくて、いつも『高い水準のプレー』を」
——技術は様々な映像でいつでもどこでもチェックできますが、意識の部分はいかがですか?
滝本「『チャンスが来た時に何ができるか?』というところはプロとして常に意識しています。でも、いくら意識していても、それは突然できるようになるわけではないですし、日々の行いや準備の積み重ねだと思っていますね。そのあたりも毎日の練習を丁寧にやっていきたいです。今の自分にはそれしかないですから。良い練習と良いプレーを丁寧に繰り返すこと、それを続けていきたいです」

——チームの中でも、年代別日本代表候補選手の1人としても、良い緊張感を保った状態で練習に没頭できていますね。
滝本「監督が見てるからとか、誰かが視察してくれているからではなく、『いつもの自分を見てください』というスタンスで勝負できるようになりたいです。『誰かの目に止まるプレー』ではなくて、いつも『高い水準のプレー』を、と。それが自分の目標である東京五輪出場へ繋がっていけば、すごく幸せです。たとえ、1パーセントしか可能性がなくても、今の自分には十分です」

——若手GKにとって、日常的にJ屈指のアタッカー陣のシュートを味わえる練習環境は最高ですよね。
滝本「それぞれのシュートの球筋1つとっても全然違うので、すごく良い経験をさせてもらえています。ディエゴなんて、『そこから?そのタイミングで?』ってシュートが来ます。しかも、どちらの足でも狙える。クリスのパワーも凄まじいですし、ハモンの間合いもヘッドも凄い。パワーやテクニック、シュートコース、どれをとっても恐ろしいレベルの人たちなので(笑)、技術や状況判断を鍛えるには最高の環境ですし、タクヤさん(松本拓也GKコーチ)は様々なアイデアで自分たちを鍛えてくれます。きっと、GKにとってはお金を払ってでも練習したい環境ですよね、本当に幸せです」

——日立台での試合前のウォーミングアップに参加する滝本選手の姿はサポーターのみなさんにももうお馴染みですね。
滝本「まず、『サポーターがたくさん入った状態の日立台の雰囲気に慣れるように』ということで参加させてもらうことになりました。また試合になればもっと盛り上がって別の雰囲気になるはずですが、こういう経験がその先に繋がると思います。でも、試合形式とまた違ったフルパワーのシュートが飛んできて最初は驚きました(笑)。視野の違いなども勉強になります。自分がいつか出番をもらうことができて、この経験が活きれば、後輩たちも繋がっていくんだよなって意識しながらボールを追っています。『たきもとー!』って声援もいただけたり、しかも今年は応援歌まで用意してもらえて、幸せ者ですね!」

「程良い緊張感を保ち、目の前のトレーニングに集中していく」
——少し話はそれますが、最近では「柏は優れたGKを輩出する」という評判もあります。レイソルのGKというグループの中でどんなことを思いますか?
滝本「昨年はイナさん(稲田康志:アルビレックス新潟)との自分にとってすごく大きな出会いがあり、今はキリさん(桐畑和繁)と(中村)航輔くんの背中を追い掛けている立場であり、ハルキ(猿田遥己)やアカデミーの後輩たちもメキメキと力を付けている中でもあるのですが、自分は力まずに…というか、程良い緊張感を保ちながら、目の前のトレーニングに集中していくこと、チャンスが来たら自分の力を発揮できるように毎日を大切にしていくことしかできない…うん、ずっと、そうやってきましたからね」

——なんというか…本当に大人になりましたね(笑)。
滝本「そうですか?!それはありがとうございます(笑)」

——最後に、「滝本選手に抱っこしてもらったお子さんは健康に育つ」という都市伝説は知ってますか?
滝本「知らないです…それはどういうことですか?」

——昔、「お相撲さんと写真を撮ると子供は健やかに育つ」という言い伝えがあったとかで…滝本選手がちびっ子たちとファンサービスゾーンで戯れる姿、その「神対応」ぶりからそんな都市伝説が…。
滝本「(まんざらでもない笑顔で)いいっすね、それ!ただ、自分みたいな選手のために長い時間待っていてくれたり、サインをして喜んでくれる子供たちやサポーターさんたちに最低限のことをさせてもらっているだけです。将来はそんな選手になっていたいですね!」

——…相変わらず前向きで、なんでも力へ変えますね。
滝本「それが自分の取り柄なんで、毎日を真面目に前向きにがんばります!また話しましょうね(笑)!」

【Haruhiko Takimoto profile】
■ポジション:GK■背番号:16
■身長・体重:190cm・79kg ■生年月日:1997年5月20日(19歳)
■出身地:茨城県
■経歴:セントラルFC-柏U-12-柏U-15-柏U-18ー15/4柏レイソル(第2種登録)ー柏レイソル
interview by 神宮克典
©Libretas de Tiki-taka_magazine

#インタビュー #スポーツ #サッカー #Jリーグ

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