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ルワンダのキブ湖周辺のコーヒー協同組合を訪問する

今までグアテマラ、エチオピア、コスタリカとスターバックスと関わりの深い産地をピックアップして記事にしてきました。今回はルワンダのコーヒー協同組合を訪問した際の文章をポストします(約5000文字)。

スターバックスは普段ルワンダのコーヒーは扱っていません。とはいえリザーブ店舗では期間限定でムホンドやムササのお豆を取り扱っています。これはスターバックスがエチオピアやタンザニアだけでなくルワンダにファーマーサポートセンターを有していることも一役買っているのではないでしょうか。

年間のコーヒー生産量は25万8千バッグ(1,5万t程)です

ルワンダの首都キガリにはスターバックスのファーマーサポートセンターがあります。現地で活躍している日本人のご厚意もあってルワンダとコンゴ共和国の国境近くのキブ湖周辺やフイエという山の多い地域にあるコーヒー産地を見ることができたのでその経験を投稿します。

「ルワンダの歴史」

ルワンダという国の名前はコーヒーを扱っているとよく耳にします。コーヒー関係者以外の方がこの国の名前を聞くときは、映画で見知ったり、この国の抱えている歴史から認知しているのではないかと思います。

1994年に起きたジェノサイドは100万人近くが犠牲となり、ホテル・ルワンダという映画の題材として取り上げられる等、歴史に暗い影を落としています。
現地ではジェノサイドの話はタブーとなっており、観光者がその当時を感じるのはキガリにある記念館やメモリアルパークだけです。でも現地を訪問し、当時の凄惨な様子を知ると平和の大切さを改めて感じます。

現在は「アフリカの奇跡」、「アフリカのシンガポール」という呼び名もあるほどに経済やインフラが発展しています。

そんなルワンダのなかでもコーヒー産業は復興のシンボルとなり各地に精製工場が建設されました。
その結果、スペシャルティーコーヒーの産地として有名になり、アフリカ初のCOE開催国としてコーヒー産業をリードしています。

COE: CUP OF EXCELLENCE 国内の優れた生産者が自農園のコーヒーを持ち寄りブラインドでカッピング評価、優れたコーヒー生産者のブランディングの手段となっている。カッピングの評点が86点以上となるとCOEを関することが認められ、現在では11か国で開催されています。COEでは順位もつけられ、最近では2018年のコスタリカのCOE優勝豆が73,000円/㎏で取引される等話題を欠きません(コマーシャルコーヒーは400円/㎏、スペシャルティーコーヒーで1,500円/㎏程度)。

「ルワンダのコーヒー産業」

ルワンダは国土の中央から西側にかけてリフトバレー(大地溝帯)が走っているためコーヒーの生産に必要な標高の高い地域が多いです。ルワンダは千の丘とも呼ばれる素晴らしい景観を持つ国でもあります。

そんなルワンダには1904年ドイツの宣教師によってコーヒーが持ち込まれました。

生産地域は西部や山の多い南部、そして東部で行われています。品種はブルボンやミビリジというルワンダで生まれたブルボンの変異体が植わっています。

私が訪問した地域では水洗式の精選施設があり、水洗式で加工がおこなわれていました。

もともとは乾燥式がメインの国でしたが2004年から各地にウォッシングステーションを建設し、現在では水洗式での加工をメインとしています。
私がキガリで地域別のコーヒーカッピングをした際には乾燥式の加工をしている地域もありました。
いろいろな加工方法を試しながら付加価値を高めようとしている点はコスタリカに近いのかもしれません。

風味の特長としては上質なものにチェリーのような風味が見られますが、マイルドな味わいのものが多いです。
残念なことにコーヒーチェリーを食べるカメムシに由来するポテト臭が見られることもあり、産地ではポテト臭を予防するための対策が取られています。

「首都キガリでのカッピング」

前述したとおり、ルワンダはアフリカ随一の発展を遂げています。
首都キガリの街ではぴかぴかのデパートがあったり、コーヒーを楽しむためのおしゃれなお店も見かけます。
エチオピアや中南米でコーヒー産地をめぐっているときに日本人を見かけることはありませんでしたが、ルワンダでは旅行や留学に来ている日本人も見かけました。

ルワンダ滞在中は生産地での活動を行う一方で、キガリでコーヒーの販売をしているQUESTION COFFEEという団体がやっているカフェを訪ねました。
立派な焙煎機があり、エスプレッソマシンが鎮座されています。海外でも焙煎豆を販売しているそうです。

各種のセミナーが開催されており私はルワンダの地域別のコーヒーのカッピングをするセミナーを受けました。

ルワンダ国内で生産された5種類のコーヒーをカッピングすることができました。
全体的にどこの地域もクリーンでSCAA方式で80点~81.5点くらいの産地が多かったです。
産地によって大きな差があるというよりは精選方式による味の差の方が顕著に感じられました。印象としては東部の産地の豆の方がクリーンな酸がしっかりと感じられる印象が強かったです。

「キブ湖付近のコーヒー産地訪問」

ルワンダでは北部にあるフイエと西部にあるキブ湖周辺のコーヒー産地を訪ねました。今回はキブ湖周辺のコーヒー産地を回った際の日記を記事に起こしています。

キブ湖はコンゴ共和国とルワンダの国境に位置する湖です。ルワンダ側は山に囲われており、コーヒーの栽培が盛んです。コーヒーハンターの川島さんが指導に入っていたり、JICAの現地活動でコーヒーに関する指導をしていたりと日本との所縁もある地域です。
ルワンダ自体は小さな国なので首都のキガリからバスで5時間程度で到着することができます(バスを見つけるのが大変なのですが、、)。

キブ湖の近くにはホテルもあり、食事も安心して食べられるものが多かったです。
朝晩ランニングしてても不安を感じないくらい穏やかな地域でした。

私はKOPAKAKI、KOPAKAMAとふたつの生産者団体が管理する加工所を見て回りました。

「KOPAKAKIウォッシングステーション」

KOPAKAKIではウォッシングステーションを中心に設備を見せてもらい、育苗やたい肥作りなど、どんな取り組みをしているのか教えてもらいました。

コーヒーの種から育苗をしています。こちらの生産組合では、苗を畑に植え替える際に使うカゴを自前で作っているそうです。

こちらのカゴはビニール製のものだとゴミが出てしまうところ、カゴのまま農園に植えることができるのでゴミが出ないうえに、コーヒーへのストレスも少なくすむ優れもの。今は試行錯誤の最中ですが、現地にこういった栽培方法を指導しているそうです。

農園に撒く肥料に関しても、栄養のバランスがとれるようにたい肥+近くの川の土+コーヒーチェリーを混ぜ合わせ、ミミズを使って有機肥料を作っているとのこと、掘り返すとわんさとミミズが出てまいります。

この地域のコーヒーの収穫はすでに終わっていたため収穫風景やウォッシングステーションの稼働している様子を見ることはできませんでした。

精選を終えたコーヒー豆はアフリカンベッドに広げられ乾燥されていました。一日に何度も雨が降ったりやんだりするのでこまめに乾かしたり回収したりすることが大切です。そしてコーヒーを広げるときは厚みが均一になることが大切!そのため、作業は丁寧に行い、乾燥台として使われるアフリカンベッドもきちんと管理することがコーヒーづくりのチェックポイントです。金網がたわんでいるとどうしても乾燥が不均一になってしまうため定期的なメンテナンスが欠かせません。

「KOPAKAMAウォッシングステーション」

KOPAKAMAの生産者組合はコーヒーの加工設備があるだけでなく、地域の学校が併設されており、女性の生産者を助けるための運動も行っているとの事でした。男の人はお金を稼いでもろくなことに使わないので女性の生産者を支え、稼げるようにしているそうです(耳が痛い話です)。

カメラを持った私が珍しいのかみんな外に出てきてみんなでご挨拶

みんなご挨拶!!ってみんな出てきてくれてありがとう。

こうやって子供たちが一同に集って勉強をしている姿って当たり前のように感じますが、これはアフリカでは教育が成功している例なのだと思います。エチオピアの田舎で話を聞いていると、子供は勉強を!というよりも労働力という認識が垣間見られました。

スターバックスがやっている倫理的な調達の輪が広がればより一層こういった子供たちの笑顔が広がっていくのだと感じます。

「KOPAKAMAコーヒードライミル」

ウォッシングステーション訪問の後は各ウォッシングステーションで集められたパーチメントコーヒーが集められる集積所兼ドライミルを訪ねました。

こちらの敷地の中にはコーヒーのドライミル(パーチメントコーヒーのパーチメントを取り除く機械)とカッピングの施設が入っています。

納入されたパーチメントコーヒーはでっかい秤で重量を計測し一度保管されます。この保管期間の間に乾燥時にできた水分の局在が均質になり、劣化しにくくなります。保管により水分を安定したコーヒー豆は粉砕分別の機械⇒選別⇒比重選別⇒スクリーンサイズ選別を通ることでグリーンビーンになります。

こちらの倉庫に保管されていたコーヒーはキガリにある大きなコーヒー倉庫に輸送されていたので在庫は多くありませんでしたが風通しの良い倉庫は相当な量のコーヒーが保管できるスペースがありました。

こちらとは別の建物にはコーヒーのカッピングスペースがあり、そちらも訪問させてもらいました。

「KOPAKAMAでのカッピング」

カッピングステーションにはサンプルロースターが設置されており、品質管理の責任者が適宜カッピングをしているということでした。サンプルロースターやミル等、結構いい装置が入ってますし、カッピングのための機器もそろっているのはさすがルワンダと感じます。

私はQグレーダーの資格を持っているのですがそのことを伝えるとカッピングを一緒にやらせていただけました。

Qグレーダー:Licensed Q Arabica Grader 。SCA(スペシャルティコーヒー協会)が定めた基準・手順にのっとってコーヒーの評価ができるとCQI(場合によってはCQIとSCAの両方)が認定した技能者のことです。

今回とらせていただいたのはKOPAKAMAのカップ、Dark cherryのニュアンスとコーヒーらしい焙煎香、ナッツのような香りが感じられる80点は超えてくる品質のカップでした。

ルワンダのコーヒー産業は国の発展のシンボルともされ、血の通った支援がなされているように感じました。私の訪問できた産地は多くはありませんがそれぞれの産地で生産者が誇りをもって仕事にあたる姿、そして子供たちが楽しそうに学び、遊びまわっている姿を見ることができました。

こんな光景がコーヒーの生産現場で広まってくれたらとコーヒー関係者として切に願います。

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