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なんでもない記念日2

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365日分の「なんでもない記念日」を祝して。130文字以内の小話を、1日に1つ。0214〜 #記念日BL
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#記念日BL

5月6日 ゴムの日

「お前のそういう柔軟性あるとこ、好きよ」

ドタキャンも浮気も許した。
許せる柔らかさが、彼の帰ってくる所以だと思っていた。

上質なゴムのような俺は、けれどゴムなので、伸ばし続ければ萎び、劣化もする。

ある朝弾け、切れて、戻ることをやめた。

隣だと思っていた、掌の上。

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5月5日 こどもに本を贈る日

昔、本をもらった。

くれたのは憧れの、隣家のお兄さん。

憧れは募り、本は本棚から消すことができないまま。
20年後の今日僕は、彼が結婚し、妻子を連れて里帰りしてきていると知る。

今日だ、と思った。
彼の子に、この本を。

笑顔でいられるようにと念じつつ、隣家へ向かう。

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5月4日 ラムネの日

咥え込むような姿に欲情する。

「ほら、お前も」と差し出され、初めてのそれを両手で包む。

壊れ物のようにそっと。
そして、口元へ。

喉に甘い刺激。
癖になる刺激。

跡をひきながら離した唇の残滓を舐めとる。
甘い。
もはや、甘いばかりの。

からん、とビー玉が小さく音を立てた。
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5月3日 ごみの日

なんであんな駄目な男に惚れたのかと不思議がられる。
友人らには、やめておけ、と忠告もしてもらえている。

けれど。

「ざけんなこのクソゴミ野郎。きもい。無理。きもい」
「あ…っ」

軽蔑の冷たい目で睨まれ暴言を吐かれる度、下半身が疼く。

そう、物事には、理由があるのだ。

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5月2日 緑茶の日

「ほれ、飲め」

寂れた住宅地の中にある、そこだけ陽だまりの落ちてきたような小さな庭で、緑茶を淹れてもらう。

お茶の美味しさなんてわからなかったのに。
パックのお茶なのに。

ふいに涙がこみ上げる。

50年後、60年後…老後までの約束を彼と交わせた奇跡が、静かに沁みて。

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5月1日 語彙の日

「好きだよ」
どれくらい?
「すごく好きだ」
愛してる?
「愛してる」
どれくらい?
「すごくすごく、すごく愛してる!」

…語彙力のない彼が一生懸命に伝えてくれるのが嬉しくて、いつもつい、しつこく聞いてしまう。

本当は別に、言葉なんか大して欲してないのにな。

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4月30日 図書館記念日

デート経験のない俺に付きあい、練習させてくれた幼馴染の兄貴。

「このことは、誰にも…弟さんにも言わないで欲しいんです」

口元に指をあて、ウインクしてくれる。

「利用者の秘密は守るよ」

ワンコインでの指導。
彼の弟さんを、幼馴染の彼を、どうか満足させられますように。

※「図書館は、利用者の秘密を守る」…「図書館の自由に関する宣言」第3より

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4月29日 みどりの日

教室内ではいつも地味な彼が叫ぶ。

「そっちもっとしっかりおさえて!」

初めてのお泊まりデートは、まさかのキャンプ。
気に入りらしい「マイテント」をはらせる彼の姿は、室内のそれとは一変している。

緑の中でこそ輝く人だったのだ。

変態的に微笑む彼に惚れ直す、春の休日。

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4月28日 缶ジュース発売記念日

浮気の理由は「あんたが構ってくれないから」としか答えられない。

温もりの消失に耐えきれないのだ。
昨夜は缶コーヒーを奢られた…130円が、俺の値段だ。

けれどあなたはそんな俺をまた抱きしめてくれるから、胸が苦しくて、不自由な呼吸が嬉しくて、堪らなくなってしまうのだ。

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4月27日 悪妻の日

なんで浮気したんだと尋ねれば、返ってきた応えは「だってあんたが構ってくれないから」だった。

おおよそ恋人にするには不似合いな男。

「そうか…悪かったな」

けれどそう言って謝れば、赤い顔で涙目で唇を噛み締めて震える。

彼を手放すことなど、もう考えられもしないのだ。

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4月26日 よい風呂の日

風呂好き・温泉好きが高じてくっついた俺らだが、最近はよく意見が割れる。

「何で浴槽のサイズでばかり風呂をか語るんだよ! それやめろ!」

そうは言うけど、でもな。

狭いと、中で抱き合えないじゃないか。

そう伝えるのは気恥ずかしくて、このところ目下の、幸せな悩みだ。

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4月25日 DNAの日

声を聞くと嬉しくなる。
目が合うだけで鼓動が早くなる。
触れれば悦びが込み上げ、触れられれば腹の奥が疼く。

きっと細胞の一つ一つ、DNAの構成レベルで、僕はそんな風に作られているのだ。

「DNAにそんな機能などない」

なんて言いながら、頬を赤くしている君に今日もキスを。
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4月24日 ダービーの日

難しい恋をしている。

「好みのタイプ? 面長で、毛は茶色で目のクリッとした…あぁでも一番は、走っているときの力強さとか…」

「馬じゃなくて」

「馬じゃなくて? え? じゃあ何?」

思考の3分の2をダービーに費やす彼の視界に入るには、どんな人参になればいいのだろう。

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4月23日 地ビールの日

ただの酒好き。
ただの酔っ払いだった俺。

「ここの地ビールは、地産品との飲み合わせが考慮されていて素晴らしいね!」

地ビールおたくのあなたに惚れて、悪趣味な酒の強さはツールとなり、酔い潰れる醜態いは晒せなくなった。

あなたの前では、いつも酩酊状態だというのにね。

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