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詩-慕標墓情-

路上の広場の腰掛け
背もたれなしの石の椅子
向かいの歩道橋から眺めてみたらそれはまるで
墓碑だった

ビルとビルの合間に鎮座する
公園と緑地の遊び場は、
とても子供の遊べるような場所とは思えなくて
まるで
怖いものを見たくって通っている、
無謀な少年をただ魅了する場所だった

高い高い四角いお墓の各階毎に人は埋まって
俺は埋まった人々の肉のかけらから出た油に
社会が固まらないように掃除をしている

日本は特に狭いから土地が足りなく
だから上に上に登っていくんだね

翌る日もそのまた次の日も
列車に乗ってゴトンガタン
生き急ぐラッシュの光景
建てられ続ける平屋と平屋の集合体

あのさんざ愛したオニヤンマはもう
見かけなくって
たまに緑地で幅きかすスズメバチに
怖い怖い
役所を頼って電話する

ああ狸穴にある噴水の

底なし沼の排水溝

工事現場ばかりあって、でも花摘む場所は少ないから
だから公衆トイレの面前を
俺は俺はキレイにするんだ。
見掛け倒しのコーティング
半年に1回切り替える気持ち
オフピークに通う地下鉄の中で
文字しかないニュースを読んだ
もっと名前を呼んでおくれ
枯れた鉢はまるで月のクレーター 

きっと明日はあまやどり
明後日明明後日はサカナヅリ


架空写詩集『守銭奴の演目』より

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