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ミコ・ぺレド、スピーチ(3)

パレスチナ解放運動家のイスラエル人、ミコ・ペレドの2020年のスピーチ。第三、最終回。初回、第二回はこちら


*講演中、彼はイスラエルと私たちが呼ぶ国の事をパレスチナと呼んでいます

パレスチナ人の階層分け


イスラエルは「パレスチナ人のトーテムポール」を作った。最下層は「難民キャンプ住まい」のパレスチナ人。彼らの環境が最悪である事に間違いは無い。その上は「ガザ・西岸地区」のパレスチナ人。その上は「イスラエル国民」のパレスチナ人。そして最上層が「ディアスポラ(国外)」でそれぞれ居住国の市民権を持つパレスチナ人。

https://promisedlandmuseum.org/israeli-identification-and-segregation/ イスラエル政府による国内パレスチナ人の階層分け。

トランプ政権の「今世紀最大の取引」と言われるProgram for Peace to Prosperityに目を通した事はありますか?トランプ政権が息子のクシュナーと共に作成したイスラエル=パレスチナ情勢の「解決策」で、イスラエルの要求を全てのみ、パレスチナ人には完全な服従を強いるものである。グラフやなんやらを持ち出してそれらしく見える様になっているが、その中に私でさえもショックを受けた「提案」があった。

「イスラエル領土」(1967以前の"proper Israel")内にある10のパレスチナの町。50万人。将来「パレスチナ国家(ガザと西岸地区)」が認められた時にはそれら市民はその国家に移動せよ、というもの。一見理にかなっているように見える。しかし本当の目的は、前述のトーテムポール第2層の「イスラエル国民パレスチナ人」から権利を奪い下層の「ガザ・西岸のパレスチナ人」に格下げする事だ。

カルト的極右がメインストリームに

この「イスラエル国内のパレスチナ人を排除したい」という運動は今に始まった事では無く昔からあった。しかしそれらの議論は「過激派」の議論であり、メインストリームでは語られなかった。今、堂々とメインストリームで語られ、米国大統領(トランプ)の承認をもらっている。

「最近のイスラエルは右翼化・過激化が酷いよね。」「昔はもっと穏やかで平和を好む国だったのにね。」との意見をよく聞くが、考えて見て欲しい。イスラエルはジェノサイドと民族浄化、虐殺によって作られた国である。これ以上「過激」なことなどあるだろうか?そのキャンペーンは「労働党」「社会主義」の「左派」によって行われたのだ。

イスラエル初代首相のベン-グリオン。建国時に500のパレスチナの村々を抹消したユダヤテロリストグループの一つ「ハガナ」をIDFに作り替えた。社会主義者の「左派」。

「イスラエルは平和を望む国家である」との見た目を演出するのには長けていた。「イスラエルは平和を望んでいるんだ。でもテロリスト(パレスチナ人)が隣に住んでいるから平和を獲得できない。」と言う訳だ。近年、15年ほど、イスラエルはこの「建前」すらも捨てた。何をやったってどうせ許されるのだ。本当の目的を隠す意味など無くなった。

昔は「過激派」「アタオカ」と言われていたのに今はもう正当なメインストリームになっている運動はまだある。Temple Mount loyalist。人種差別的なチンピラ達。エルサレムのアルアクサ神殿を破壊して、ユダヤ教の「第三の神殿」を建設する事を目的とする。カルト集団だ。


その集団のリーダー達は今はなんと閣僚になっている。防衛大臣、教育大臣、防衛閣僚。彼らは粗暴で行儀が悪いで昔ながらの「リベラル」イスラエル人からは嫌われるが、イデオロギー的には両者に変わりはない

彼らは今のtemple mount、ハラマシャリの見学ツアーをする。参加者、昔は10人、12人と小規模だった。現在そのツアーに参加するイスラエル人は6−7万人/年。エルサレムを拡大し、その中心に「第3神殿」を建設する、との計画が彼らにはある。「大エルサレム」はラマラからベツレハムまで含む。

「そこに住むパレスチナ人はどうしますか?」

彼らには3つのチョイス。有名な一節だ。1。外国人居住者として権利無くここに留まる 2。去る 3。死ぬ(財務大臣、極右差別主義者スモトリッチの言葉)

このビジョンはエルサレム周辺のパレスチナ人のみに適用される訳でない。国内全域のパレスチナ人はその「三択だ」と言う。

アパルトヘイト

国家がある属性の国民と違う属性の国民を、異なる法律・規則で統治すること。これがアパルトヘイトの定義である。イスラエルがやっていることそのままである。前出の「パレスチナ人格付けトーテムポール」のどれにいようが、イスラエルはパレスチナ人をユダヤ人とは異なる法律で規制する。国外に暮らしていたって同じだ。ヨルダンのパレスチナ難民はイスラエルに家に戻る事を「禁止」されているのだから。

ガザで子供が生まれると、イスラエルのデータベースに登録される。ガザの200万人のパレスチナ人はイスラエルによって統治されている。水の供給がままならないのも、最低限の医療サービスも思うように受けられないのも、栄養が足りてないのも全てイスラエルがそうデザインしている

イスラエル人はこう思いたい。「西岸地区に入っていって無理やり住んでる"入植者"達は私たちとは違う。私たちは穏やかな一般市民だ。私たちは入植者ではない。」

よく考えてみて。

テル・アビブ。「リベラルイスラエル人」の牙城。もともとパレスチナ人の町だっただろう?なぜ「リベラルイスラエル人」が「"入植者"で無い」、と言えるんだ?

西岸、とかつて呼ばれた地区。昔の地図にはあり、今でもそう呼ぶ人もいるが、そんな地区は実際にはもうない。

「西岸はスイスチーズのようだ」と言われる

入植者に侵略され、完全に「イスラエル」と同化させられている。ユダヤ・サマリア地区と呼ばれる。その地区の交通標識はイスラエル国内のそれと変わらない。違うのは「"問題のあるコミュニティ"が所々にあること」だけだ。それらコミュニティは壁とチェックポイントに囲まれ、権利も水も剥奪され、イスラエルコロニーに囲まれている。

壁で仕切られた高速道路。西岸。片側がイスラエル人用。片側がパレスチナ人用(Photo: Olivier Fitoussi/ Haaretz)

パレスチナ人の状況は悪化する一方だ。トランプが、イスラエルに政治的ギフトを送るたび、現地のパレスチナ人への暴力は増す。もっと子供を殴打するし、もっと銃撃する。

トランプがエルサレムをイスラエルの首都とし、大使館を移動した時、パレスチナ人の逮捕者数は増大した。今はもうトランプによりイスラエルはコントロールを増大させたので、現地のパレスチナ人の生活はどんどん辛くなっている。

希望、未来

逆に、今米国には「AIPACコンファレンスには出席しません」と公言する大統領候補がいる。(バーニー・サンダース)。そんなことが起こると5−10年前に聞いたら私は信じなかっただろう。バーニーは、イスラエルへの支援に紐付けをしろ、と言う。長年の活動家の働きがこの変化につながっている。

「パレスチナ人は何が欲しいか自分で分かってない。」「パレスチナ人は分断している。」「パレスチナ人は未来を描けていない。」などという言説があるが冗談じゃない。ネガブ砂漠のパレスチナ人活動家と話してみたらいい。ヤッファの、エルサレムの活動家と。ラマラでも、ガザでも。彼らの希望は決まっている。一つだ。「Free Palestine」。川から海まで、レバノン国境からgulf of aqabaまで。パレスチナ人が自由に生きること。道路閉鎖から自由に。人種差別的法制から自由に。水の供給の停止から自由に。彼らの声は一つだ。

じゃあどうしたらいい?

武力では勝てない。

2005、パレスチナ人は私たちに戦う術をくれた。BDSだ。Boycott Divestment and Sanction。これが私たちへのガイドだ。正義と自由のために。暴力でなく、BDS。

これが非常に効果的だったのでシオニスト達はどう対応するか数年間考えた。暴力しか知らない彼らは、この非暴力運動に戸惑った。コンファレンスが何回も開かれ話し合いが行われた。分かった!!

「反ユダヤだ!」と攻撃すればいい!!

は?

イスラエル国内のユダヤ人にもBDSを実行する人はいた。

BDSの要求は
1。軍事占領の終了
2。西岸と呼ばれた地区のパレスチナ人の解放
3。国内アパルトヘイトの終了(平等な法制)
4。パレスチナ難民の帰宅・帰国

正義・自由・平等。

これらが「反ユダヤ」だというのか?

これらがユダヤの教えに反するというのか?

そんな狂った発言をチャック・シューマー(米国上院議員)がする。シオニスト議員が言う。イスラエル政府が言う。

BDSの要求は合理的、熟慮され、救済的なものだ。救済的とは、イスラエルがパレスチナ人に降り注いだ苦難から救済する意味。ユダヤ人のことなんて言っていない。ユダヤ人を追っ払うだのユダヤ人をどうこうするだの、そんな事は一言もない。BDSの目的は「パレスチナ人が他の人間と同じ様に生きられない」という現実を正そうとするだけだ。

それを「私の権利を阻害しようとしている」と読み取るのは特権階級の人間だろう。しかしそれは真実ではない。パレスチナ人が元の家に戻れば、70年前そこを奪って家賃も払わず住んでいた分、払わなければならないのは当然だろう。美しいパレスチナの家屋が破壊されず残っている地域はまだある。西エルサレムなどだ。入植者が住んでいる場合もあるし、美術館やレストランになっている場合もある。70年間分の家賃を払うべきだろう。それだけだ。大したことじゃない。

BDSの要求は決して人種差別的でない。実際正反対だ。人種差別に対抗するものだ。正義を求めるもの。

パレスチナの問題は余りに難しいので希望が持てない、と思う人もいるかも知れない。ガザに行ってみたらいい。ガザ市民のPhD取得率は世界トップクラスだ。希望が無い人がPhDを取ろうと思う訳が無い。彼らはあの困難な状況で希望を捨てていない。よりよい未来を信じていなかったら、なぜ度重なる爆撃を経験してまで、子供達を学校に送る?

ここ(米国)で希望が持てないだって?

パレスチナに行ったらいいよ。希望がある。町、村、ネガブ砂漠、ガザ強制収容所、人々は希望に満ちている。我々に「希望が持てない」なんていう権利は無い。私たちは、イスラエルに、経済支援をしているのだ。民主主義、アパルトヘイト崩壊、一人一票。そういうものに希望を持つなら、立ち上がらなければならない。

あの国をなんと呼ぶ?

イスラエル、パレスチナ、イスラエルーパレスチナ、パレスチナーイスラエル、イスラエルと占領地区、正当イスラエル領、紛争地域、、、、。あんな小さい場所に色々な名前がある。

あなたが何を大切にしているか、考えたらいい。

宗教で無い。政治は関係ない。あなたの価値観だ。

「暴力と人種差別」を支持する?

「正義と自由」を支持する?

暴力と人種差別を支持するなら、あの国をイスラエルと呼んだらいい。あの国をイスラエルと呼ぶことは暴力と人種差別を正当化することだ。

正義、自由と平等を支持するなら、先住民の名前で呼ぶべきだ。パレスチナ。あの国の名前はパレスチナだ

「ということはユダヤ人を追い出せということだろう!」

と言われる。

正義と自由と平等を支持しているんだ。ユダヤ人が出ていかなければならない理由が無い。一人一票。当たり前だ。

問題なのは現在パレスチナに住んでいる500万人のパレスチナ人はイスラエル政府に統治され、投票権を持たないことだ!500万人が選挙に参加できないんだ!

この暴力的な国家は解体され、民主主義国家に作り変えられるべきだ。一人一票。その民主主義国家では、、

もしかして、パレスチナ人の首相が生まれるかも知れない。シオニストにとっては悪夢だろう。アパルトヘイト時の南アフリカの白人も同じ事を恐れていた。ネルソン・マンデラを恐れていた。因みに現在何千人ものパレスチナ人バージョンのネルソン・マンデラは何人もイスラエルに収監されている。

もしかして、イスラエル人の子供の学校にパレスチナ人の先生や教頭がいるかも知れない。

でもそれはこの世の終わりでは無い。朝起きて、自分は仕事に、子供達は学校に行く。新しい現実だ。

その新しい現実は、私たちが活動しない限り絶対に訪れない。私たちが組織化しない限り絶対に訪れない。私たちの政治家達が$4B毎年イスラエルに送り続ける限り絶対に訪れない。

声を上げろ、活動しろ、組織化しろ。要求するんだ。BDS。イスラエルを孤立させるんだ。国際文化的イベント、スポーツイベント、アカデミックイベントにイスラエルを出禁にする。南アフリカのアパルトヘイトはそうやって崩壊した。イスラエルもそうやって崩壊させるんだ。

パレスチナ国内のパレスチナ人に会った事あるかい?希望に満ちて、思考を外的影響に占領されていない人たちだ。イスラエル人の方が頭を占領されている。私たちがずっと前に取るべきだった責任をここで取るべく運動すれば、パレスチナは自由になる。

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