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家に住めない人との旅 1

今日から数回に渡って、最近行った来たロードトリップについて書いてみようと思います。楽しい旅とは言いがたい、難しい相手との大変な旅でした。何もかもが計画外れ、というか元々非常に計画の緩い(最低限に言って)ものが基盤だったですが。。

ロードトリップという言葉はピンと来るでしょうか?
目的地は最終地点も含めて一応いくつかあるのですが、どちらかというと移動を楽しむ類の旅です。長距離運転とロードサイドの泊まるだけのホテル(motel)、加えてロードサイドの典型的なアメリカンフードに依存することになるので、好きな人とそうでない人に分かれると思います。
そのかわりにありきたりな観光地では見られない、壮大な自然をじかに体験できる貴重な機会にもなり得ます。

私が一番大規模に経験したロードトリップは、米東海岸から西海岸へ殆ど一直線に約3000マイル(=4828km)、7日かけての大陸横断の旅でした。

今回の旅行は期待も大きく、楽しい旅になるはずだったのですが、初日からナダレの如く崩れる、崩れる。。。

ここで運転手である私のパートナーと、この旅の背景にちょっと触れておきましょう。二コーラは自分のSUVに住んでいます。 ヴァン・ライフという言葉があるくらいで、ヴァンやトラックを改造して車兼住居にしている人は結構いて、近年人気のライフスタイルになりつつあります。

彼はこれをかれこれ15年程やってきて、大抵ぼろぼろの(20年位前の、200,000マイル以上=329000 km)の車を見つけてきて、全部好きなように改造します。近年ヴァン・ライフをする女性も増えてきたので、改造してそういう人に売ったりもします。元々レースカーの製造が専門の車野郎で、何でも直せてしまうのは強みです。これは性能のいい車を持つのが当たり前の日本人には馴染みの薄い問題かもしれませんが、アメリカでは(おそらく他の多くの国でも)、車の故障は本当に、どんな計画も水びたしにしてしまう、更には頻繁に起こり高くつく頭の痛い問題です。

しかしながら他の時はホームレス扱いを受ける事もあります、なにしろ家に住む事が嫌いで、住んでいないので。。
なぜ普通の人間のように家なりアパートなりに住まないかというと、

① 室内の空気に我慢ができない --- 空気が悪いそうです(どんな家、誰の家でも)。真冬でも暖房を入れながら窓を開けたがりますが、ガスストーブの換気という意味ではないです。

② 一つの場所に留まっているとストレスが溜まって動きたくなる --- 車での生活はやはり不便な面も多く、ある時「一時的でもここに居れば?」と私の小さな家をオファーすると、「気が狂う」との返答。。

③ 室内の温度が高いと眠れない --- 私は寒さに弱く彼は暑がりで、一緒の空間で寝るには端と端に離れて (やはり窓を開けて) 寝るしかありません。なので実は全然いてくれなくていいです。。今まで何度凍えながら寝た事でしょう。。

④ 自分の空間 (車) にいるのが単に好き --- 私の家に遊びに来ても、大抵自分の車にいます。ただし私が車にいるのは大丈夫なよう。

これはこの人がかなり変わっているのであって、ヴァン・ライフをする人達みんながそういうわけではないと思います。

知り合った頃私の家に泊まりに来た時は、ハイキングトレイルの途中でトラブルに遭い、車もなく、行く所もなく、歩けないと言い、知り合って間も無い私の所へSOSの電話があった時でした。ホテルを取ってあげるつもりで2時間運転して迎えに行くと、2-3日休ませてもらえないかと言うので家に泊めてあげたのですが、暗くなってから家の外に寝袋を持って行って地面に敷いて寝て、明け方近所の人に見つかる前に中へ入って来るという、非常に変わった習性のある人です。迎えに行って泊めてあげた意味はあったのだろうか。。

もしも隣人の目に留まってしまっていたら、警察を呼ばれていた事は間違いないでしょう。もしも、
「あなたの家の目の前でホームレスの男が寝ていたわよ。何も取られてない?」
などと気遣ってくれていたら何と返答していたでしょう。。

これは彼が重度の不眠症という事にも大きく由来します。室内だと眠れないことに気づき、車や外だとまだ眠れるという事で、15年前に住居を内から外へ移動したらしいのですが、しかしはっきりいって原始人に近いです。

今回の旅は、アメリカに20年以上滞在しながら、「本当に素晴らしいアメリカ」を全然見ていない私を、あちこちに連れて行くために計画したものでした。また彼にとっては最後となるかもしれない旅でもあり、殆ど楽しい思い出のない私達の思い出を作るという目的もありました。彼は治らない病気を抱えていて、いつ終わりが来てもおかしくない状態なのです。


(つづく)

もしもサポートを戴いた際は、4匹のネコのゴハンやネコ砂などに使わせて頂きます。 心から、ありがとうございます