一二三

台湾 高雄の歴史建築を訪ねる 3

高雄の旧市街には、哈瑪星(はません)と呼ばれるエリアがある
地元の人たちが親しみを込めてそう呼ぶんだそうだ

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昔の地図をアレンジしたトートバックのプリント
こういうセンスの良いお土産が博物館に売られている

この地図のあたりが哈瑪星と呼ばれる場所にあたる。下には港という文字がある通り、目の前に海が広がっている港町だ。地図の左に「高雄駅」と書いてあるのが分かると思う。現在の高雄駅とは違って昔の駅は海沿いにあったんだ。今はこのエリアには電車は走っていなくて、巨大な広場と倉庫を改装したアートスペースになっている。
高雄市役所も地図の右上のほうにしっかり載っているのが分かる。つまり、昔はこのあたり一帯が高雄の中心部だったんだ。百貨店がちらほらあるのも面白い、昭和の雰囲気がある。

なぜ哈瑪星(はません)という地名が地元の人から親しまれるようになったか、その理由が実はここにある。旧高雄駅から海沿いには、後から延長させた線路(引き込み線)があった。港から運ばれた物資を効率良く運び出すためだ。高雄は今ではアジア有数の貿易拠点になっているけど、その原型をこの時代に見て取れる。そして、その路線の名前は日本統治時代に浜線と呼ばれていて、その名前がいつしか地名として定着。どこか懐かしいその響きをそのままに、中国語で漢字を当てて哈瑪星となったという。

旅の2日目は、このエリアを中心に散策した

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写真の旧高雄駅は今は資料館になっている。
少し離れたところには、これとは別に鉄道博物館というものがある。

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鉄道博物館 なんといっても見どころはアジア最大級の鉄道ジオラマ!

ここは是非行っておきたくて、楽しみにしていたスポットだ。たくさんの観光客でごった返しているかと思ったものの、予想に反してガラガラ。そんなにメジャーなスポットじゃないのだろうか?
ガラスの仕切りも無いし空いてるし、自由に写真を撮るには最高だった。

博物館に入るとスタッフが日本語で声をかけてくれた。台湾には日本語を勉強しているという人が結構いる。
初めにVR映像を見せてくれたんだけど、その内容は日本統治時代の哈瑪星エリアを映したものだった。きれいなCGで当時の街並みや着物・袴姿の男女が行き交う光景。セピア調のノスタルジックな映像で、まるで台湾にとっての「ALWAYS三丁目の夕日」といった感じ。「あの頃はよかったよね」と地元の人の声が聞えてきそうな、風情ある光景が広がっていた。
それにしても、この場所の地名の由来と言い、日本の統治時代はそんなに良かったのだろうか?はたまた、単に懐かしいというイメージで作られた半分フィクションだろうか?思い出化される歴史というのも考えてみるとまた面白い。

台南駅

台南駅 東京の上野駅をモデルにしたとか

新竹駅

新竹駅 東京駅とは姉妹駅になっている

嘉儀駅

嘉義駅 バランスの取れたスタイル、どの駅も個性があって良い

スタッフの女性はとても気さくな人で、ジオラマを前に台湾にまつわるいろいろな事を説明してくれた。特に、次台湾を訪れるならココ、とおすすめしたくれたのが阿里山(ありさん)という場所。ここにも鉄道が走っていて、これも当時日本が山から木材を調達するため、難工事の末に登山鉄道を完成させた。日本から遠く離れた台湾という地で高度な技術を使って鉄道や建物を作ったと言う事がよく分かると思う。ここで伐採された台湾ヒノキは明治神宮の鳥居にも使われている。
「日本は阿里山の木をぜんぶ持って行っちゃった...。昔の日本人の考えてたことはよくわからない。」スタッフさんはそう語った。

僕はここまで、日本が台湾を統治していた時代に整備した建物や鉄道について、そしてそれが今でも台湾に残され地元の人が感謝や親しみを感じていると書いてきた。だけれど、植民地支配というのはそんな楽観的な側面ばかりではない。なぜこの時伐採したヒノキが日本にあるのか?日本が台湾を整備したとは言っても、それは現地に住む人たちのためではないんだ。そのあたりのことは次回に回したい。

それからスタッフさんとは、戦争に関連したエピソードも話に上がった。前回紹介した高雄市役所の屋根や外壁が緑色なのは、上空の敵機から建物を見つけにくくするためだと言う。正直、この話は調べても見つけられなかったけど、それだけ空襲というものが台湾の人たちの記憶に刻まれている事が分かる。ジオラマには空襲から電車を隠すためにわざわざ何もない線路上につくられたトンネルがあって、そのことも教えてくれた。ガイドさんがいなかったら気付かずに素通りしてたと思う。
この通り、台湾にも空襲はあったし、戦争の爪痕が残っている。以前訪れた台南という街にあるリノベーション百貨店にも屋上には機銃で撃たれた痕跡が説明書きを添えて残されていた。

リノベーションを単にレトロ、オシャレというだけで消費するんじゃなくて、そこにある負の痕跡を残して歴史を伝えようとするのは素晴らしいし取り組みだし、日本も見習うべきだと思う。なんでもキレイに作り替えるだけが大切なわけじゃない。この辺りの価値観について、僕たちはあまりに潔癖症な気がする。ここではそんな事を感じさせられた。

つづく


追伸:サムネ画像は哈瑪星エリアにあるかつての日本料亭を改装したカフェ、書店喫茶一二三。日本語の本もたくさん置いてあって、店内もオシャレな雰囲気なので気になる人はぜひ

#台湾 #高雄 #旅 #鉄道 #歴史  

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