見出し画像

無限に広がる写しの世界「ファンタジア」

海辺には、珊瑚や貝殻、流木や植物の種
石ころや砂、人工物など
様々な造形が溢れていて
同じものでも、よーく見ると
同じようでいて、同じではない。

ひとつひとつ違う、という事が
とても面白いなと思う。

Tida Panaは、その面白さを伝えたくて
2009年から、海辺の欠片たちを拾いあげて
アクセサリーにしています。

割れていたり色あせていたり
形が伴わない貝殻や珊瑚を
拾いあげているけれど、
制作してゆく中で時代も進んでいき
だんだんと、自分の中に芽生えてきた思いがありました。

「貝殻や珊瑚の欠片は海辺に沢山あるけれど数に限りがあるものたち。

いろんな人に欠片の魅力を
知ってもらいたいけれど
沢山拾って沢山販売したら…
沢山の人が沢山拾ったら…
どうなるだろうか?」

大好きな海辺、大好きな貝殻拾い。

欠片たちの魅力を知ってもらいたい
という思いから始めたアクセサリー作り。

時代が進み、世の中の変化とともに
変わっていく島、個人が持つ正しさ。

欠片たちを拾いあげる時は
沢山とらないよう、自分なりにルールを
決めている。制作に時間がかかってしまう為、販売する数も少ない。
けれど…
罪悪感のような気持ちがモヤモヤと渦巻き
自信を持ってアクセサリーを販売する事が
できない時期がありました。

「本物の貝殻や珊瑚を使わずに、
欠片たちの魅力が伝わるアクセサリーを
作れないだろうか?」

そんな思いを抱くようになっていた時、
とある雑誌社の方から
「親子で楽しみながら作れる、
海辺のアクセサリーを企画できますか?」
と、お声をかけて頂きました。

コロナ渦で不安定な状況だった事と、
西表島は本土から遠く取材が難しいという事もあり、残念ながらその話しは進みませんでしたが、この時に、うっすらと考えていたものが、ファンタジアのアクセサリーです。

子供も大人も楽しめることって何だろう?
海辺の欠片たちの面白さを感じて欲しいけれど、できたら本物の貝や珊瑚を使わずに作りたいな。

あれこれと考えていたら、ふと
保育園に通っていた頃、手に絵の具をつけてハンコみたいにポンポンって押して遊んでいたのを思い出しました。

小さな手、大きな手、指の形や指紋
似ているけれど、みんな違うということが
凄く面白かった。
どんなふうに模様がでるのか
先生たちも一緒になって楽しんでいたなぁと。

「そうだ!海辺の欠片たちをハンコみたいに押してみたら、どうかな?
色々な模様ができるし
その模様をアクセサリーにしたら、
実物を使わずに作ることができる。

けれど、白い紙に押すだけだと
絵の具を欠片に塗らないといけないし
平面的でアクセサリーにはしづらい。
価格もできるだけ抑えたい。

そうだ!白い粘土に押してみたら
どうだろうか?
絵の具を使わずに模様を写しとることができて、しかも少し立体的になる事で、より造形の面白さを感じることができる。

海辺に流れ着く様々なものを写しとる楽しさを子供も大人も体験できるのではないかな。」

と、思いつきました。

実際に白い粘土を購入して、欠片たちを
ポンポンって押し当ててみました。
写しとることで模様が反転し、新たな造形が生まれたり、写しとる位置をほんの少し変えるだけで全く違う模様になる。

海辺の欠片たちは有限だけれど
その模様や造形は無限にある。

果てしなく広がる「写し」の世界に
たまらなく面白さを感じました。

そんな時に出会った一冊の本が
ブルーノ・ムナーリの「ファンタジア」です。

創造力ってなに?
という問いかけから始まるのですが
この本の中で、ちぎった様々な形の紙を
子どもたちがそれぞれに選び、
そこに絵を描くという話しがあります。

ちぎった紙は円形だったり、ひし形だったり大きかったり小さかったり色々な形があって
子どもたちは、その紙の形から思いつくものを思うように描く。
紙を縦向きにしたり横向きにたりする事で
また違うものが思いつく。

『子どもたちが自分で選んだ紙にどんな絵を描こうか考える姿を注視する時、彼らの表情から創造力やファンタジアが、まさしくその
瞬間生まれ出るのを目撃したように思えてくる。』

とても共感する言葉でした。

私自身、竹富島に住んでいた頃
流れ着いている珊瑚や貝殻の形から何かを
想像する事がとても面白くて、毎日のように浜辺に行っていました。

「あ!この珊瑚はトカゲみたいな形!」
「あ!この貝殻は人の顔みたい!」
ひとつの欠片を色々な角度から眺めては
何かをイメージして、
ひとりでニヤニヤとしてしまう。

これは、Tida Panaの
アクセサリー作りの原点です。

ファンタジアの本を読み終えた時
今まで制作をしてきた事に対して
それでいいんだよって言われているような
気持ちになりました。

ずっと頭の中でバラバラになっていたものが、ぎゅっと合わさった感覚になりました。

様々な造形に溢れている海辺の世界を
とらわれることのない自由な世界を
楽しんでもらえたらいいな。

そんな想いが形になり
2021年に、Tida Panaの「ファンタジア」が
生まれました。

海辺にある不思議で面白い世界。
足もとにある小さな世界。
割れていたり色あせていたり
見向きもされないものかもしれないけれど

そこにはとても美しいものがあることを
色々な角度から見て想像する楽しさを
そして、
イメージしたものを形にする面白さを
Tida Panaのアクセサリーとして、
表現していきたい。

時代が進み世の中も変わり続けていくけれど
ずっと変わらずにあるもの、
ずっと変わらずにある想いを大切にしたい。

持続可能性を考えたうえで
これからも海辺の欠片たちを紡いで
アクセサリーを作り続けていきたい。

ファンタジアが出来上がった事で
モヤモヤと抱えていた気持ちも吹き飛んで
Tida Panaの想いや、これから、どんなふうにしていきたいのかが、
前よりもずっとずっと強く見えるようになりました。

海辺に流れ着く欠片たちの様々な造形と
果てしなく広がる写しの世界を
いろんな人と楽しむことができたら
嬉しいです。



















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?