君が恋をしたなら vol.6「花見」
ユキトたちが花見をするという話。
当然呼ばれるつもりの私たち。
思えば、出会ってからもう半年近く一緒にいる。
でも、相変わらず『友達つれてこい』だし、遅刻もするなという割には自分はするし、つくづくユキトが嫌いに…なるはずもなく、どんどんわがままワールドに引き込まれていく私。
それでも幸せだった。
花見のセッティングについて、三人であーだこーだ言い合っている姿をのんびり見ていた。
『花見には私たちも参加していいんだよね?』
とふみが確認。
合コンの甲斐なく、彼氏ができなかった二人。
ユ『あー、お前らも来る?明日なんだけどさ』
や『うん、行く行く!』
ユ『じゃあ飲み物結構揃えなきゃね』
ルンルン気分である。
ここで誰も思い出すことはなかった、大晦日のカウントダウン…。
じゃあ、明日!
と今日は早めの撤退だった。
明日何を着ていくか、迷う三人娘。
とりあえず動きやすいほうがいいよね、とジーンズにした。
職場の人たち以外と花見をしたことがない私たちは話が沸いた。
明日のことを夢見ながら眠った。ムフフと、にやけたまま眠りに落ちていった。
翌朝、ユキトにメールをするが、返事がない。まだ寝てるんだろう。
花見かぁ、と思いながら洗濯を干す。
楽しくなってきて、掃除までやってしまった。
時刻は12時。
そういえば今日は何時から花見するのか聞き忘れたな…。と思いながらふみに電話をする。
私『何時からか聞いてないよね?』
ふ『まゆが聞いてないなら私らがきくはずないじゃん。』
私『朝から何回かメールしてるけど、返事がないんだよね』
ふ『それ、電話したほうがいいよ』
私『だって私、電話番号知らない…。』
ふ『はぁ?こんだけ長く一緒にいて、電話番号知らないだぁ?』
はい、そうですよね。ごもっともです。
ユキトはなぜか電話番号を教えてくれない。
だから、こちらから聞くこともなくなったのだ。
私『ともかく、連絡してみる』
そう言って早くも数時間経った。もう夕方だ。
ありえない…。
私の脳裏に大晦日の晩がよぎる。
花見をするだいたいの位置は話の流れで小耳にはさんでいた。
一か八か行ってみようとのことになり、三人車に乗り込んだ。
いつもならホルモン大絶叫なのだが、この日はそんな気分でもなく、無言のまま現地へついた。
見慣れた車がある。マルオの車だ。
ここにやつらがいることは間違いない、と三人で公園に踏み込んだ。
すると、すっかりキャンピング仕様にされた簡易テントと、その横にバーベキュー、そしてユキトの姿を確認した。
走って詰め寄る私。
私『…なんで?』
その声に反射的にユキトがこちらを向いた。
気まずそうに、
『お前ら、来ちゃったの?』
という。
バーベキューには女の子が数名、いた。
かあっとなった私はさらにユキトに迫った。
私『これってどういうこと?私たちお邪魔ムシってこと?』
ユ『いや、そうじゃないけど』
私『ユキトはいつもそうだよね!自分のことばっかり。私には名前も年齢も嘘をついて、私の気持ちなんてちっともわかってくれない!私がこんなに好きなのにわかろうともしてくれない!友達まで巻き込んで…。最低!』
最後の『最低』は自分に対してのものだった。
ユキトは何も言ってはくれなかった。
この騒ぎにマルオとケンジもあわてて出てきたけれど、わたしは聞く耳を持たなかった。
三人で帰る途中、涙が止まらなかった。
途中から嗚咽が入り、運転できる状態じゃなくなり、ふみに運転してもらった。弥生は優しく私の髪をなでてくれた。
私の心はズタボロだったが、二人のおかげでなんとか持ち直した。
帰り道はユキトたちに対する愚痴大会だった。
ふ『いつもこっちが出向いてやってるのに、カラオケ代だって割り勘だし』
や『約束しといて他の女と遊ぶってどういうこと?』
私は黙って泣きながら二人の話を聞いていた。
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