がんばって
桜舞い散る東京の
住宅街近くのスーパーマーケット
どこからか湧いて出た
ピカピカの一年生が
雑貨売り場に出現する
主婦歴の長い
このわたしにも
一年生だった頃は
確かに
あった
目をつけた少女の後を
さりげなく追う
何を買うのかなと
ちょっとした興味
ベビーカーを押した主婦に
買い物を見られている事に
当然ながら彼女は気づかない
彼女はひとり
買い物をする
まだ友達はいない
風呂イス、洗面器、突っ張りポール、洗濯バサミ、東京都指定ゴミ袋、
洗剤類、タオルかけ、キッチンツール、なべ、三角コーナー
割り箸、コップ、トイレブラシ
ちょっと見えるだけでも
これぐらいはカゴに詰めこんでる
びっくりした
わたしが一人暮しをはじめた十年以上前と
買い物の中身がそんなに変っていないことに
新しい環境で
彼女は暮らし始める
きっとこれから
いろんなことがあるのだろう
浮ついた心を
ぺしゃんこにすること
都会にはたくさんあるけど
がんばってね
と、
ベビーカーを押した近所の主婦は
思ったのでした
おしまい
初出 現代詩フォーラム 20040407
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