見出し画像

【2】ギャルネイリストが不採算店の経営立て直しに着手した話

前回の話は、こちらからお読みいただけます。

不採算店に異動するにあたって提示した2つの条件

思い返してみればこの頃の私は、3年間の実務経験以外にはなんの知識もスキルない中で、サービス業の業務改善による収益化を地でいく仕事をしていました。

フラッグショップ化を目指している銀座店への異動を部長から打診され、それを受け入れることにした私は、2つの条件を提示しました。

  1. スタッフ数をギリギリまで減らしたシフトを組んでもらうこと

  2. サブのスタッフとして2名、私が選んだスタッフを配置してもらうこと

簡単に売上が上がるとは思っていなかったので、手っ取り早い対応策として、人件費削減による黒字化を考えました。

サービス業なので繁閑の波はありますが、アイドルタイム(予約が入りにくい時間)への予約の誘導をスタッフ全員が行うことで、ある程度は平準化ができ、1人当たりの生産性を上げることができるはずと考えました。

忙しい時間帯は自分がフルパワーで稼働すれば、飛び込みのお客さまや当日電話予約のお断りも、最小限に済ませられると判断しました。

当時は今と違って、自動予約システムなどはなく、すべてのご予約は店頭か電話でお受けする手段しかなかったので、効率的な予約取りのノウハウは、暗黙知的な要素(ルール化・マニュアル化できないもの)でした。

異動するにあたっての人選のポイント


次に、店長である自分を支えてくれるスタッフ2名については、私自身に決めさせてほしいという条件を提示しました。

ネイリストは平均して1時間、お客様と対面で向き合って、サービスを施します。接客の質は、リピート(再来店)に繋がるかどうかに大きく影響します。もちろん一定の技術レベルは必要ですが、それ以上に集客に影響する大きな要素は接客である。当時の私も今の私も、この考えに変わりはありません。

今までのように他のスタッフのことを大事にせず、自分一人だけの力で売上を上げていくやり方には限界があると判断したのです。強力なチームワークを形成するために、未熟だった私を慕ってくれていたスタッフ2名を、サブとして指名しました。

彼女たちは、入社4ヶ月目と2か月目の新人で技術は未熟でしたが、店舗運営には非常に協力的でした。当時24歳だった私にとって、スタッフの2/3は歳上でしたし、ひと回り以上の年齢差がある者もいました。その点、彼女たちは、比較的年齢も近く、その点でもやりやすさを感じていました。

実務上は大した要素ではないはずなのですが、とにかく自信がなかった私は、年齢差すらも、これまでのスタッフと上手くいかなかった要因の一つだと捉えておきたかったのかもしれません。

「誰と働けばチームワークを形成しやすいか?」
を重要視した人選でした。

部長には心配されたましたし、他の店長クラスのスタッフほぼ全員に、聞かれたものです。
「本当にあの2人で大丈夫なの?」

「やってみないとわからないけど、なんとかなるでしょ!」
こう答えて、やり過ごしたものです。

2人の技術力が足りない分は、自分が途中で接客を代わって最終仕上げを行うことで、技術の質をカバーしつつ、接客時間の短縮化を図るという戦術をとることとしました。


売上アップの方策を分解思考で模索する


次に、銀座店の売上を上げるための具体策を、以下の切り口で考えました。

  • 客数(新規)

  • 客数(既存)

  • 客単価

  • 1人1時間あたりの生産性

「客単価」と「1人1時間あたりの生産性」というMECE(モレなくダブリなく)ではない要素で分解しているあたり、素人感が満載です()

KPI(重要業績評価指標)という概念すら知らなかったことは、言うまでもありません。

なにせ経営知識はゼロですから、致し方ありません。
ちょっと歳のいった現役ギャルだったので、脳みそは空っぽでした()

とにもかくにも、3人の間で明確なルールを決めました。


  • ご来店のお客様に対してはもちろんのこと、通りすがりのお客様に対しても、とにかく明るい笑顔で元気な挨拶をすること

⇒ 感じのよいお店だというイメージをもってもらうことで、今後の来店促進や口コミの醸成をねらった(新規顧客・既存顧客アップ)

  • なるべく中途半端な空き時間をつくらない予約の取り方のルールを決め(これこそ暗黙知)、徹底すること

⇒ 営業時間全体の稼働率アップをねらった

  • 各自が次の予約に影響しない範囲で、オプションメニューか、自宅ケア用の店販品をお勧めすること

⇒ 客単価アップと1時間あたりの売上アップをねらった

  • ご来店のお客様には、定期的なケアの必要性を説明し、次回の予約をお勧めすること

⇒ 新規顧客のリピート化をねらった


当時はここまでロジカルに考えたわけではなく(なにせ現役ギャル→2回目)、感覚に頼った戦術に過ぎなかったのですが、後から振り返ってみると、当時の状況にはマッチしたものだったと認識しています。

いざ、実践!

挨拶やオプションメニューのお勧め、次回の予約取りについては、私が率先垂範することで、2人も同様にやってくれました。

効率的な予約取りについては、1週間分の予約表を自分の頭に叩き込み、お客様と会話しながらも、常に周りに注意を傾けるように気をつけました。他のスタッフが予約取りをする際にロスがあればその場で指摘し、より良い予約の取り方や、別の日時への予約の誘導の仕方を都度説明し、徐々に覚えていってもらいました。

これらの取り組みにより、早い段階から予約表を埋めることができるようになりました。その事前予約をベースとし、合間の時間に当日予約や飛び込みのお客様を取り込んでいくことで、忙しい時間帯のお断り数を減らし、新規・既存顧客を増やすことができました。

日頃から混み合いやすい週末は、前日の段階で終日予約がいっぱいという日まで出るようになりました。

私が銀座店に異動して2〜3ヶ月たった頃には、以前からの常連様に
「最近、ここ混んでるね」
「忙しそうだね」
と頻繁に言われるようになったことを、今でも覚えています。


  • 評価された上での異動であれば、会社側に条件を提示して、自分自身が結果を出しやすいと思われる環境の準備に努めるべき

  • チームプレーで売上を上げる店舗ビジネスの場合は、「誰と働くか」が重要

  • どんな業種業態であっても、こちら側の都合に合わせて顧客にご来店いただけるような仕組みを作ることで、生産性が上がる


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?