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隠された真実

青山里奈は、都会の喧騒から逃れ、静かな田舎町での生活を夢見ていた。彼女が選んだのは、山間にある小さな村「和泉村」だった。里奈はここで新しいスタートを切ることを決意し、古い民家を購入して引っ越してきた。

村の人々は温かく迎えてくれ、特に隣人の中村夫妻はとても親切だった。和泉村は美しい自然に囲まれ、平和な日常が広がっていた。しかし、里奈はすぐにこの村には何か奇妙なことが起こっていることに気づき始めた。

ある日、里奈は散歩中に古い神社を見つけた。神社は長い間放置されているようで、苔むした鳥居や倒れかけた祠が不気味な雰囲気を醸し出していた。好奇心に駆られた里奈は神社に近づき、中を覗いてみることにした。

すると、そこには古いお札や供物が置かれており、何かを封じ込めるための儀式が行われていた形跡があった。里奈はその光景に興味を持ち、もっと調べてみることにした。

里奈は村の古老である佐藤さんに神社について尋ねた。佐藤さんはしばらく黙っていたが、やがて重い口を開いた。

「その神社は昔からこの村を守るための場所だと言われている。ここには封じられたものがあるんだ。」

「封じられたもの?」里奈は興味津々で尋ねた。

「詳しいことはわからん。ただ、村の平和を保つために大事な場所だということだ。」

佐藤さんの話に謎めいた感じを受けた里奈は、更に調査を続けることにした。

数日後、里奈は再び神社を訪れ、もっと詳しく調べることにした。彼女は古い祠の奥から古文書を見つけた。文書には、この村の過去と封じられたものについての記述があった。

「和泉村はかつて、恐ろしい災厄に見舞われた。その原因は村の近くの山に住む悪霊であり、その悪霊を封じ込めるために神社が建てられた。悪霊は人々の心の闇を利用し、混乱と悲劇をもたらしたという。」

里奈はその記述に驚きと恐怖を感じたが、同時にこの村の秘密を知ることに興奮を覚えた。

里奈は村の図書館でさらに調査を続け、古い新聞記事や村の歴史についての資料を読み漁った。その結果、彼女はこの村で起こった一連の失踪事件について知ることになった。過去数十年間にわたり、和泉村では何人もの人が神社の近くで失踪しているというのだ。

「この村には何かが隠されている…」

里奈はそう確信し、失踪した人々の行方を追うことに決めた。彼女は村の住民たちから情報を集めようとしたが、誰もが口を閉ざし、何も話そうとしなかった。

ある夜、里奈は奇妙な夢を見た。夢の中で、彼女は神社の前に立っており、そこに封じられた悪霊が囁いていた。

「真実を知りたいのか?ならば、私を解放せよ…」

目が覚めた里奈は、夢の中で見たことが現実なのかただの幻想なのかを考えた。しかし、夢の中の囁きが現実に起こっていることを示唆しているように感じた。

翌日、里奈は神社に再び向かい、封印を解く方法を探し始めた。彼女は古い文書を読み解きながら、封印を解くための儀式について学んだ。

その夜、里奈は決意を固め、儀式を行うことにした。彼女は祠の前に立ち、古い文書に従って呪文を唱え始めた。すると、周囲の空気が変わり、冷たい風が吹き始めた。

突然、祠の中から不気味な光が溢れ出し、悪霊が現れた。

「ついに解放された…」

悪霊は冷笑しながら、里奈に近づいてきた。

「これが…真実なの…?」

里奈は恐怖と興奮が入り混じった気持ちで悪霊を見つめた。しかし、その瞬間、彼女は背後から何者かに襲われ、意識を失った。

目が覚めると、里奈は村の広場に縛り付けられていた。周囲には村の住民たちが集まり、不気味な儀式が行われていた。中村夫妻や佐藤さんもそこにいた。

「里奈さん、あなたは禁忌を犯した。」

佐藤さんが厳しい声で言った。

「何が起こっているの…?」

里奈は混乱しながら尋ねた。

「この村の平和を保つためには、悪霊を封じ続ける必要がある。そのためには、定期的に生け贄を捧げなければならないのだ。」

佐藤さんの言葉に里奈は愕然とした。

「じゃあ、失踪した人たちは…」

「そうだ。全ては村のためだった。」

里奈は怒りと恐怖で叫び声を上げたが、村の住民たちは無情に儀式を続けた。悪霊は冷笑しながら、里奈に近づいてきた。

「お前の犠牲で私は再び封じられる。」

悪霊は里奈の身体に触れ、その瞬間、彼女の意識は永遠に途絶えた。

村は再び平和を取り戻し、何事もなかったかのように日常が続いた。しかし、里奈の失踪については誰も触れようとしなかった。和泉村はその秘密を抱え続け、悪霊を封じるための犠牲を繰り返す運命にあった。

そして、新たな住民が村に引っ越してくるたびに、その秘密は再び隠されるのであった。村の美しい自然と平和な日常の背後には、恐ろしい真実が潜んでいることを誰も知らないまま…。

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