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ドンキホーテシンガポール進出あれこれ

去る先週12月1日にディスカウントストアのドンキホーテがシンガポールでオープンした。Orchard Centralというその名の通り、シンガポールの繁華街のど真ん中で、路面店では無いものの2フロアを占有して華々しいデビューを飾った。ユニクロも旗艦店を構える超一等地であり、銀座をイメージしてもらえるとわかりやすい。

いきなりだが、店名は"Don Quijote"ではなく、馴染みのない"Don Don Donki"という名前だ。それは、シンガポールには既に同名のスペイン料理のレストランが存在し、それなりに名を馳せているので、店名を変えざるを得なかった経緯だ。

シンガポールのドンキは日用品雑貨と食品スーパーの二段構えとなっており、雑貨フロアはまさに日本のドンキといった雰囲気がそのまま味わえる。ジャングル陳列というほどでは無いが、かなりの品数を揃えており、正直ここまでやったか、と良い意味で予想を裏切られた。

筆者の周辺でもシンガポール人の日本旅行経験率はかなり高く、ドンキの知名度は元々高いようで、そこに来て、これだけの品揃えで迎え撃つ訳なので、開店前の行列と週末の大混雑も頷ける。

商品のラインアップを見ても、訪日外国人旅行者に人気のある熱さまシート、抹茶味の菓子類、アイメイク用品を前面にプッシュするなど、日本で培った知見が充分に活かされてるように見受けられる。1パック50セント(約40円)のじゃがりこをオープン記念の目玉商品に選んだのも、売れ筋商品をよく理解しているな、という印象である。

食品スーパーのフロアもその規模と商品ラインアップ、そしてその価格に驚嘆した。ここ最近、日本食材専門のミニマート的な店の新規オープンが増えてはいたが、その店舗のみで買い物を完結できるほどの品揃えは無く、どうしても他の総合スーパーとの併用、あるいは特定商品のスポット的な利用に限られてしまっていた。

現地日本人の目から見れば、明治屋、伊勢丹に対抗する、日本食材が揃う総合スーパーの第3極が登場したことを意味する。

そしてやはり特筆すべきはその価格にある。詳細な価格調査には基づかないものの、全般に明治屋、伊勢丹の1〜3割は安く感じた。(ミョウガや大葉といった比較的需要の少ない香味野菜で特に価格差を感じた)これはシンガポールに住居を移していたドンキ安田会長がインタビューで答えていたように、シンガポールで買う日本食材は高すぎる、という率直な消費者としての目線が強く意識されての価格設定だという。

海外では「日本食材は高品質なのだから高くて当たり前」という常識がまかり通っている感もあるが、日本人以外のボリュームゾーンをターゲットとするのであれば、日常的に消費する食材に対して許容しうる価格の閾値を大きく超えていないか、見直す必要があるのだろう。

先日のCJ機構のアプローチとの比較で言えば、ドンキは既に外国人にウケている(需要のある)商品を惜しみなく供給する一方で、日本人以外には未だ価値が理解されていないものは、手頃な価格でまずは手にとってもらう、という教科書的で基本に忠実な戦略であると思われる。

いつの世も舶来品が普及するのは価格破壊がきっかけではなかったか。まさに「驚安の殿堂」の成せる業と言えよう。

もちろんオープンから数日でドンキのシンガポール進出の成否を判断するのは早計だ。商品の幅広さは同時に在庫のリスクと表裏一体であるし、日本食材に関しても、正直ここまで「日本のスーパー」でやっていけるのか、という一抹の不安もある。日本人には大変有り難いのだが、余りにローカル色を排していて、シンガポール人が日常使いしてくれるのかどうか。24時間営業のオペレーションコストの回収可否も夜間の集客次第だろう。

既に二店舗目を来年6月までに、今度は中心部ではあるがビジネス街寄りであるTanjong Pagarエリアにオープン予定とのことで、こちらはドンキのような業態にとってさらに集客の難しいエリアのようにも思える。

夜22時以降の酒類販売禁止の規制も24時間営業にとっては逆風だ。Donki Barと名付けた16-26時で営業する立ち飲みカウンターは22時以降も酒類を提供できるが、どれだけ集客に貢献できるだろうか。

またオープン初日でアダルトグッズの陳列棚が撤去されるという事態にも見舞われた。当初「健康器具」コーナーで展示販売されていたものの、顧客からのクレームで翌日には撤去を余儀なくされ、12/15以降のオンライン販売で仕切り直すこととなった。個人的には、少々怪しげなものも清濁併せ呑むのがドンキらしさという気もするが、この種のゾーニングの考え方など、シンガポールにおいてはコンプライアンスに十二分に注意されたい。

Don Don Donki S’pore store no longer displays Tenga sex toys https://mothership.sg/2017/12/don-don-donki-singapore-tenga-sex-toys/

なお余談だが、「ドンドンドン ド〜ンキ♪」でお馴染みの、テーマソング「Miracle Shopping」がシンガポールの店内では聞こえてこなかったが、海外店舗で流れる英語版のボーカリストを目下選考、収録中らしい。こちらもリリースを楽しみにしている。



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