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適応すれども同化せず」: 広告代理店がクライアントに提供すべきもの。

「適応すれども同化せず」: 広告代理店がクライアントに提供すべきもの。


クライアントと広告代理店の関係


広告代理店は、クライアントのマーケティングにおいて効果的にプロモーションを実行するための重要なパートナーです。単なる広告表現開発とその実行とタッチポイントの設計と運用に留まらず、自らの便益をより適切にクライアントに提供することが期待されています。

「Be a Part of Culture」と「アウトサイダー」の両方の役割を果たす広告代理店がどのようにしてクライアントにとっての価値を生み出すかについてその関係性から考えます。


得意先の企業文化への適応


広告代理店がクライアントの文化の一部になるということは、クライアントが目指すビジネスのゴールにとどまらず広く社会に提供する価値を深く理解し、それに基づいたプロモーション戦略を展開することが期待されています。クライアントの共通言語と行動様式を理解し、その一部になることが重要です。

- 共通言語の理解: クライアントの企業文化には特有の言葉や表現が存在します。これを理解し、実際のコミュニケーションで使用することが、クライアントとの信頼関係を築く第一歩です。
- 行動様式の適応: クライアントの企業が重視する行動様式に合わせることも重要です。クライアントの行動様式はターゲット顧客との接点の一つであるプロモーション(広告)の開発と実施においても反映されます。

ケース:TBWA Chiat DayとApple

Appleの広告活動で有名なTBWA Chiat Dayのクリエイティブディレクターであったリー・クロウ氏は、広告代理店がクライアントの文化の一部となりつつも、新しい視点を提供することの重要性を強調しました。

彼のチームは、Appleの広告を通じて革新的でクリエイティブなアイデアを提供し続け、Appleが世界中で愛されるブランドになるのに大きく貢献しました。クロウ氏は、広告代理店で働く人が自ら価値のある情報を生み出すだけではなく「ストーリー」を伝えることができる存在であることの重要性も語っています。

AppleのためにつくったこMeadia Arts Labはこの信念を体現したものと僕は理解しています。


アウトサイダーとしての新鮮な視点の提供


一方で、広告代理店はクライアントの外部から新しいアイデアを持ち込むことが期待されています。これにより、クライアントは自分たちでは思いつかなかった新しい方法で商品やサービスを宣伝できるようになります。この「アウトサイダー」としての役割は、広告制作だけでなく、プロモーション、マーケティング、さらには製品開発や経営戦略にも役立ちます。

-広告表現開発の枠を超える貢献: 広告代理店が持つCreativityを製品開発や経営戦略にまで広げることで、クライアントのビジネス全体をサポートできます。例えば、テクノロジー会社に対して他の業界で成功した技術やデザインのアイデアを応用し、より魅力的な製品を作り出すために何がよいかの示唆を提供することができます。

- 社会変革への寄与: 広告代理店が提供する新しい視点であるアイデアは、クライアントのビジネスを前進させ、社会的に新たな価値を生み出すことにもつながります。広告代理店は単なる広告制作会社から、社会変革の一翼を担う存在へと進化を目指すのであれば、広告を通じた貢献ではなく、自らが強みと信じるCreativityを積極的に解放する必要があります。


適応すれども同化せず


「適応すれども同化せず」という考え方は、広告代理店がクライアントの文化に適応しつつも、完全に同化しないことを意味します。広告代理店はクライアントの目標や価値観を理解しつつも、独自の視点やアイデアを提供し続けることができます。

客観的かつ独立した存在であり続けるためには経済的に十分自立していることが重要です。自分たちの売り物は何であるのか?得意先が広告代理店から買いたいものは何か?広告代理店で働く私たちは改めて考えましょう。

まとめ


エージェンシーが実務で重要視すべきは「適応すれども同化せず」です。
これが、フェアな関係においてクライアントビジネスへの最大の貢献をする鍵です。

広告代理店が生み出すアイデアはCreativity・創意工夫が源泉です。
そのアイデアはクライアントのビジネスを前進させる新鮮な視点です。
代理店が提供したアイデアはクライアントビジネスの一部としてターゲット顧客に受け入れられ、はじめて価値になります。

その価値の蓄積がブランドであり、クライアントと顧客の間での共創が進むことで、社会的な資本になっていきます。


広告代理店が持つCreativityを広告表現開発にとどめず、得意先ビジネスの上流工程にも開放していくことを進めていきましょう。外部からの新鮮な視点を通じたクライアントへの貢献は広告制作に留まらず、プロモーション、マーケティング、製品開発、経営戦略などの幅広い領域で価値を提供できます。

広告代理店が自らのビジネスの可能性を追求することはCreativityの解放です。
Creativityをより魅力的な広告代理店を生み出すために使うのではなく、クライアントに解放していきましょう。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

それでは、また。


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