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日系企業の中国でのマーケティングについてプロモーションの再設計が必要では?:中国の農村で暮らしてみて分かった、現地の生活はどう変わったか?体験価値と広告代理店の役割について

割引あり

中国の農村に1ヶ月ほど滞在しました。
アフターコロナの現地での生活を広告系として考察します。


コロナを経て3年半ぶりに中国です


今回はただ行くだけではなく1ヶ月間、妻の故郷に家族で滞在しました。
家族で過ごすことを大事にしてキャリアチャレンジをしています
このタイミングで妻の故郷を体験しもっと理解したいということ、子供と一緒に農村生活を体験してみたいという希望を叶えることができました。
とても貴重な体験です。
湖南省にある農村部で生活しました。田園風景が広がる豊かな大地です。

虹がよく見える場所があります


朝は豆腐屋さん、精肉屋さんが行商にきます。
僕の母親の実家が農業だったので、何となく懐かしい感じがします。

その農村を中心に家族で近くの街に行ったり、義理の兄や姉の家族に連れられて山遊びや川遊びをしました。
二人の子供たちはおじちゃんのバイクに乗って鴨に餌をあげに行ったり、おばあちゃんと野菜を収穫に行ったり…言葉の壁を柔軟に乗り越えてコミュニケーションしていました。
親戚の子供とおもちゃを取り合ったり、年上のお姉ちゃん、お兄ちゃんにフルーツ狩りで遊んでもらったりもしました。

唐辛子を干しています

たくさんの思い出と共に、日に焼けて逞しくなりました。良い体験でした。まさに「モノより思い出。」の毎日でした。

農村での思い出


モノより思い出


今回の滞在の目的の一つが中国でのビジネスチャンスとそれにつながるインサイトを捜すことです。
コロナ前後で改めて世界中の市場が変化していますが、中国市場で何が起きているのか?できる限り一般的な生活をしている人たちと身近に触れ合うことで広告系として今の市場のインサイトを発見したいという考えです。

「買うことが始まりになる」:以下のアドタイの記事を参照してください。
みんなが大好きな「モノより思い出。」を開発したクリエイティブディレクターの小西さんのインタビューです。


「体験価値」がより重要視される


中国市場は日本市場を20年-30年遅れでおかけていると言うような理解が僕が中国広州市駐在していた2009年から2017年にかけて日系の市場関係者の中でよく言われてい他ことです。
日本においてその転換期を2000年前後とすれば、失礼な言い方になるかもしれませんが、コロナという特殊な状況を経てではありますが、中国市場が「体験価値」に動いてるように思います。

長男の誕生会をしてもらいました



中国経済の世界的な成功による自信とコロナによる世界市場の分断で中国市場の人々の幸福観や価値観が変わっています。
特に若い人たちは国産の「商品サービス」に対してポジティブです。

ユーザーインターフェース:非接触とタッチパネル

市場を見渡してデジタルテクノロジーの進化を日常的に享受している市場というのが僕がまず持った認識です。

顔認証技術や、音声認識、非接触のインターフェースが当たり前です。
個人の滞在ステータスの情報が必要になるので中国国内での長距離移動は外国人にとって元々簡単ではありません。

鄭州市の駅から見た風景


そしてこうした認証技術は中国国内の決済システムと連動していることもありさらに難易度が増しているように思います。

非接触による認証は駅の改札に限ったものではありません。
日常のあちらこちらにあります。
非接触とタッチパネルでの機械とのインターフェースの代表は自動車です。中国製EVのインターフェースはまさにテスラです。

中国のローカルブランドEV


テスラ感覚、iPad感覚のメカとの手触り感はキッチンやトイレのスイッチでも。徐々にではありますが、機械式のダイヤルやボタンがタッチパネルに移行し始めています。

プロダクトやサービスが持つ「先進性」の観点では残念ながら「日本製」への興味が薄れています。クルマや電子機器などがステイタスを表現するモノだけではなく、日常的な生活様式の中に入り、仲間達との体験を共有するメディア(体験情報交換・共有の場所)となった印象です。

「先進的なモノ」=未知のモノ・分からないモノではない


デジタル決済などについての抵抗感はとても低いです。元々現金を信じない(偽札など)ということは消費者の深層心理にあったのではないかと個人的には思っていますが、デジタル決済にどんどん移行しています。

旧暦の3と6と9がつく日は実家の近くの街に「朝市」がたちます。
生鮮品の販売も含めてQR決済を使えるお店がたくさんあります。QRコード決済は日常的なものです。
決済の仕組みが銀行との連携を含めてローカルなプラットフォームなので、それを使いこなすことは旅行者である外国人には簡単なことではありません。

地元の朝市


年配の女性がスマートフォンを三脚に固定して、オンラインでダンスレッスンをエンジョイしている風景をあちこちで見ることができます。個人練習した後は近くの広場でみんなでダンスするという楽しい光景を目にします。微笑ましいですね。
オンラインヨガをはじめ様々なジャンルのビデオレッスンがあり、それを多くの人が楽しんでいます。コロナでの隔離生活がもたらした新しい体験型学習スタイルです。


地方都市と農村部の2拠点生活


今回体験経済が進んでいるなと思った一つのケースです。
若い夫婦は農村部からクルマで30分程度の街で生活をしています。会社勤めだったり自営業だったりをして農業から距離を置いています。マンションを持つ人も多いようです。彼らは子供と一緒に週末は農村部に帰り、両親や友達と過ごしています。より裕福な家庭は農村部の家を最新のものに建て替えて、週末は仲間と交流するための「別荘」として使っている印象です。

電動バイクが産む「静かな」喧騒


都市の様相も変化しており、電動バイクの普及によって交通状況が大きく変わりました。
新たな移動手段が増えることで、都市の喧騒も従来とは違っていました。
日本でも有名になったレンタル自転車に変わる都市部での便利な個人の移動の主役はレンタル電動バイクです。フードデリバリーサービスも電動バイクを使っています。
電動バイク達は音もなく近づいてくるので、その対応に苦労しました。

薄味に:食品安全に加えて健康志向が


食品においては、安全性と健康志向が重要なテーマとなっています。食品に限らず安全性については僕が駐在していた時代も大事なテーマでした。「日本製」が持つ品質は「安全」と解釈されることが一般的でした。
今回の滞在中、色々なローカルレストランで食事をしましたが、味に大きな変化がありました。以前よりも薄味が好まれ、食材の品質に対する要求が高まっています。多くの友人たちがそのことを教えてくれました。
料理の盛り付けにこだわるお店も増えました。

モダンな広東料理

日本のプロダクトやブランドは、食の安全性において他国に対して優位性を持っており、その価値が認められています。しかしながら、流通や価格設定の課題が存在するように思います。ヤクルトやサントリーはローカル都市でもきちんと棚を抑えています。意外なところでは「不二家のペコちゃん」が活躍していました。

あるローカルストアの店頭風景


本当に不況なのか?


経済ニュースなどで中国市場が不況に直面していると言われています。
労働人口のピークを過ぎた、大学の生就職が難しい、日本のバブル以降のBS不況に似ている、などなどの報道があります。

僕が滞在していた場所ではこうした話はあまりありませんでした。もしかしたら意図的にこの手の話を避けていたのかもしれません。
それでも不動産についての不安を耳にすることはありました。

鄭州市の夜景

広告系の変化


広告系の人たちに話を聞きました。
彼らの意見を参考にするともしかしたら不況は静かに忍び寄っているのかもしれません。
市場全体においてセールスの圧力が強まっているそうです。ブランド創りよりも短期的なセールスへ貢献すること、そのためのスピード感あるサポートが求められています。

僕の駐在中に好まれていた企業や商品サービスの過去のヘリテージを強調することでブランド(価値)を創る手法はほぼ興味を示されないとのことでした。企業の持つ歴史だけではブランドコミュニケーションが通用しなくなっています。ここはターゲットとインタラクションをする上で認識を変える必要があります。

ブランド創りにおいては企業・商品・サービスの持つ先進的な要素を「未来志向」としてマーケティング戦略に落とし込むことはまだ余地がありそうです。ただしセールスの圧力(荷を動かすプレッシャー)が強まる中でのクライアントの期待はTikTokなどの動画コンテンツのスピード活用がです。
クライアントさんから「今はやっているTikTokのコンテンツフォーマットを来週提案して欲しい」というリクエストがよくあるそうです。

超高速対応


従来もスピード感重視の市場でしたが、コロナ前後の変化の中で、さらにスピード感(それも今までとは違うスピード感)が台頭しています。
現状への対応を優先する中で、つまり得意先の要望に応えて納品を急ぐあまり広告代理店とプロダクションの役割の境界が曖昧になりつつあると捉えている関係者がいます。

なかなか厳しい状況です。
広告代理店が持つ戦略の視点に対するクライアントの期待はあり、プロダクションとの差別要因です。

市場にある中国人新消費者として自信を背景にしたローカルインサイト、TikTokなどローカルプラットフォームでのコミュニケーションなどにおいては、広告代理店が提供できる戦略性が注目されます。

TokTokは体験共有プラットフォームと認識されています。つまり商品(モノ)をドーンと出しても誰も振り向かない、何かしらの「体験」を通じてTikTokを使っている人たちとのコミュニケーションすることが求められます。彼らと会話・インタクションするプロトコルが重要です。
これは表現だけで解決できる問題ではありません。

クライアントチームにスキルフルなローカルプラナーと気鋭のクリエティブを組み合わせて、かつテクノロジーについての理解のあるプロデューサーが営業リーダと一緒に動くことが必要です。

この発想で企画から納品まで2週間で対応する仕組みを準備したエージェンシーリーダーがいます。

これにより得意先の期待に応えるためにはスピード感を保ちながらも、戦略的なアプローチを提供することが可能になりました。
提案・解決策として鮮度、精度をチームでどう出すか?
CokeのHillTop/Re;briefの背景ビデオの中で語られるHarveyさんの言葉にエージェンシーとしてのチームワークのヒントを見ることができます。


いつの時代においても、広告代理店は市場と得意先の変化に柔軟に対応し、マーケティングにおいて顧客とのインタラクションをする企画を実装することが仕事です。急速なテクノロジーの進化や市場の変動に立ち向かい、顧客とともに未来を切り拓いていく使命を果たすために、広告代理店は戦略性とスピード感を兼ね備えた存在として成長していく必要があります。

ローカルインサイトを活かすガイドラインの重要性

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