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イスラエルの兵役

私のエルサレムでのお姉さん、美恵子さんの記事を紹介するとともに、私の出会ったイスラエル兵の話もしたい。

イスラエルは皆徴兵制です。高校を卒業したらみんな兵役につかなければならない。
拒否するとイスラエル社会で生きていくことは困難を極める。ぜひ美恵子さんの記事も読んで欲しい。
また兵役拒否に関するドキュメンタリー映画もある。

『兵役拒否』


徴兵に行った元兵士達がその時のことについて語る
『沈黙を破る』

私が1人のイスラエル兵に出会った。18歳か19歳くらいだと思う。アラビア語でアルハリール、英語ではヘブロンと呼ばれるパレスチナの町だ。

エルサレムからベツレヘムにバスで行き、ベツレヘムからセルビス(乗合タクシー)に乗り換えてアルハリールに向かう。
この街にはイブラヒームモスクがある。イブラヒーム、きっとアブラハムと言ったほうが耳馴染みがあるかもしれない。
イブラヒーム、アブラハム、同じである。
イブラヒームモスクは半分にカチ割られ、もう半分はシナゴークになっている。

アルハリールの町は入植地が街にえぐり込んでいる。スークは入植地があるせいで死んだように静かだ。当然ながら分離壁もあり、チェックポイントも無数にある。エリアAのはずなのだが、イスラエル兵もたくさんいる、たくさん入植者がいるからだ。

もう1つのスークは金曜日になると武装した入植者達が兵士を伴って練り歩くため身動きが取れない時間がある。それはいつなのかわからないが必ずある。

バスから降りてイブラヒームモスクに行こうとそこへ通じる道の手前にあるチェックポイントに行った。パスポートを見せると、ここで少し待ってろと言われた。
年上の兵士が何処かへ私のパスポートを持っていった。若い兵士が私を見張ることになった。彼の話である。

彼は気さくに声をかけてきた。
『どっから来たの?』

『日本よ。』

『あなたは?』

『エルサレム。』

『へー、そうなんだ。さっきまでいたよ。』

『そっか。エルサレム は好き?』

『そうだね、なんとも言えんね。』

『僕は早くここから逃げ出したいよ。』

彼の声は震えていた。そして目には涙をためていた。

『そっか、あとどれくらいあるの?』

『あと1年以上。もう頭がおかしくなりそうなんだ。兵役が終わったら静かな場所で暮らしたい、本当にもう嫌だ。僕は平和な場所にいたい。』

涙がこぼれないように、彼は歯を食いしばった。

沈黙が続いた。

先輩兵士が戻ってこの彼に私のパスポートを渡し、ヘブライ語で何か言っている。

『本当に申し訳ない、このチェックポイントは通れない。』

『どうして?』

『わからないけど、そう言っている。本当にごめん。』

泣きそうな彼の声にこちらも心が痛む、これが占領なのだ。

『君のせいじゃないから、わかったよ。別の道を探すね。元気でね。』

そう言って私は別の道から目的地へ向かった。


誰しもが勇敢で兵役を拒否できるわけじゃない。拒否しなかった全員が占領に賛成しているわけでもない。

パレスチナにおける軍事占領はパレスチナ人を傷つけ、家を破壊し、人権を踏みにじる、それと同時にイスラエルの若者の心も破壊している。

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