見出し画像

5月某日 積ん読以前の問題

この週末は書評サイト『ALL REVIEWS』のオンラインイベントが充実していた。土曜の夜は『勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版』の千葉雅也さんと鹿島茂さんの対談だった。日曜の夕方は柴崎友香さんと豊崎由美さんのガブリエル・ガルシア=マルケス著『族長の秋』を課題本に据えた回であった。この催しは毎月2回開かれていて鹿島さんと豊崎さんがナビゲーターとなり、それぞれノンフィクション・フィクション部門としてさまざまな方が登壇する。毎回お釣りが出るほど興味深い話が聞ける。取り上げられる本を読んで臨めば楽しみは倍増だ。

新たに文庫本が出版された『勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版』はギリギリ読み終えたのだけど、マルケスの課題本は告知に気づかず準備が及ばなかった。短編集ならあるのだがと思いながら、仕事部屋の入口にある全20巻の世界文学集の背表紙を眺めていたら、なんと19巻に『族長の秋』を発見した。今気づくぐらいだから当然読んではいなかった。この事件が開始1時間前。間に合うわけがない。まあ古典を取り寄せたら、自宅にある全集に入っていたとあとで知るのは、他人様は知らないがよくあること。そうだ、あるあるじゃないか、きっとあるあるだろうと心を静めた。

それだけならまだよかった。さらに書棚を眺めていたら、単行本発刊時の『勉強の哲学』ののちに出た千葉さんの『メイキング・オブ・勉強の哲学』が目に入ったのだった。もう積ん読以前の問題である。一瞬、誰かが持ってきて書棚に置いた?とまで思ったが、人の出入りが多い家でもない。すぐ読みたくて手に入れたけれどいつの間にか後ろに回っていたのかもしれない。うちの書棚は奥が深いので、つい最近まで本を前後二段で並べていたのだ。それを辞めようと思ったのは、ライター界隈で大変評判の、近藤康太郎著『三行で打つ』に「背表紙が見えない本はゴミである」と書かれていたから。ああ、まさにこれ、やっちまったと思った。

残念な気持ちを無理やり落ち着かせようとしていて、映画を思い出す。映画には本編と別にメイキングがあったりする。本編のあとにメイキングは観るものだ。先にメイキングを読まなくてよかった、と思うほかない。とまあ、新たな知見をもらうとともに、本との付き合い方について猛省させてくれた、週末のALL REVIEWSであった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?