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BTS楽曲のルーツとソロ曲に見る個性


BTS楽曲のスタート地点

グローバルスターとしてワールドワイドな人気を誇るBTS。
HIPHOPを中心とした初期曲、ソフトで少しセンチメンタルな日本曲、明るくメジャー路線な英語曲、ジャンルも方向性も多種多様なソロ曲など、その多面的な魅力には、「K-POP」でひとくくりにしていいのかという意見すら出るほどです。

今日は、そんな彼らの音楽について語ってみましょう!
あ、私は音楽的にはド素人ですので、気になった方は裏付け確認よろしくお願いします。

育ての親

BIG HITの練習生になる前、既に音楽の道で活動を始めていたSUGAとナムさん。
偶然とはいえ、二人が共にEpic Highの『Fly』を聞いて音楽の道を志し、同じマイクを手に入れて音楽家人生を始めた(「シュチタ」EP.1)、というエピソードには運命を感じます!

wow Korea「「EPIK HIGH」TABLO、「『BTS』SUGAとRMが音楽を始めた理由が僕ら」」

入所日まとめ
2010/08/14 ナムさん
2010/11/07 SUGA
2010/12/24 ホビ
2011/06/03 ジン君
2011/06/04 グク
2011/09/03 テテ
2012/05/15 ジミンちゃん

SUGA入所後、ジン君が入所するまで208日の間、現BTSメンバーの中ではSUGAが長男役

当初HIPHOPグループになる予定だったバンタン。
その方向で練習生が集められたため、ホビが合流した頃は宿舎が「ラッパー虎の穴」状態になっており、ラップ・ビート・HIPHOPで溢れかえっていたそう。ラップ未体験だったホビが鍛えられまくった時期ですね!

いやもう、宿舎に帰って目が合うと、みんないきなりフリースタイルでラップをするんです。僕は本当に全然できないのに!

「BEYOND THE STORY」より、ホビ発言。ポケモンバトルかw

ホビの表現を借りると、これが宿舎生活の「Season 1」。
半年後グクがやってきて「Season 2」、アイドルシーズンが始まります。

ホビは元々ダンスミュージックとしてHIPHOPに親しんでいたため馴染みが早く、この頃には既にラップライン3人とも作業室(音楽制作スタジオ)をもらっていました。
対して、ボーカルラインのメンバーはまだ可能性しかない状態。

この差はメンバーたちも感じていたようで、テテとジミンちゃんが「違う世界の人だと思っていた」「ラップラインの3人が先にHIPHOPグループとしてデビューするだろうと思っていた」と言っています。

最初はパンPDが、練習生に色んなアーティストの音楽を聴かせ、練習させていたようですが、そのうちナムさんを中心とするラップラインが、ボーカルラインのため年中無休のラップ教室を開くようになります。

デビューは決まったが何をすればいいのかわからない状況で、ひたすら自分の知識を伝え、時には夜を徹して話し合いを続ける日々。
ラップラインの真剣さに打たれ、まずクオズが感化されていきます。

RMさん、SUGAさん、J-HOPEさんが僕たちボーカル4人を呼んで「この曲を聴いてほしい」「教えてあげる」と、本当に真剣に話をしてくれて(中略)
心を打たれて、飽きたとしても「何度も聴かなきゃ」と思いました。
今ではメンバーの中で僕が一番たくさん聴いていると自負するほどになりました。聞いているうちに、HIPHOPに夢中になっていったんです。

「BEYOND THE STORY」より、テテ発言。

年上のメンバーたちが、「これ、本当にカッコいいだろ?」って言いながら、HIPHOPをするときのジェスチャーをやって見せ、歌も聴かせてくれました。最初はただ面白くて笑っていたのですが、だんだん本当にカッコよく見えてきたのです。「彼らがやっている音楽、これが本当の音楽なんだ」
こんな風に”HIPHOP精神”を受け継いだんですw

「BEYOND THE STORY」より、ジミンちゃん発言。

この辺の流れは、シュチタのテテ回やグク回でも語られてましたね。
ジミンちゃんの受け継ぎっぷりは前回の「MMM」でも顕著で、私は大変好きですw

バンタンはスタート地点がHIPHOPなので、反骨精神がDNAに刻み込まれている感がありますね。
ラップラインだけでなく、真性ナムペンのグクやサイファー信者のテテを始め、メンバー全員が同じ感性を共有しており、何も知らなければ良識派に見えるかわいさ満点のジミンちゃんでさえ「そんなこと言って大丈夫?」と引き留めるどころか「すっきりするね!」と言い放って盛り上がるあたりが、彼らの魅力ではないでしょうか。

「【RPWP/MMM】BTSリーダー・RMのストレスと消しゴム【ミニモニ】」より

あ、思いっきり洗脳……じゃなかった、教育が完了してるテテ(とグク)も置いとかせてください!

その後のインタビューを読むと、デビュー前から既に作詞作曲を手掛け、自作曲をSoundCloudにアップしたりデビューアルバムに参加したりと、時間があれば作業しているラップラインの姿勢も、手本として影響を与えていたようです。
様々な方面から見て、ラップライン、特にナムさんはBTS楽曲の育ての親だと言えるでしょう。

ちなみに、HIPHOPアイドルへの方針転換が行われた後は、同じ手法を取り入れてホビのダンス教室が始まります。ダンスの親はホビですね……( ;∀;)

独り立ちしていくボーカルライン

HIPHOPアイドルとしてデビューしたバンタン。音楽面での活動も盛んになっていきます。

2015/3/20にナムさんが初のアルバム「RM」を、2016/8/16にはSUGAが「Agust D」を発表しています。この二人にインスパイアされる形で、ホビも2018/3/2に「Hope World」を発表。
ボーカルラインも「WINGS」でのソロ曲などを経て、作詞作曲を行うようになっていきます。楽曲権利者情報を見ると、特にナムさんが全力で歌詞サポートしている様子が伺え、微笑ましくすらなります。

ちなみに楽曲権利者情報を追っていくと、初期はラップラインの3人だけがずっと走っており、この体制が「WAKE UP」まで続いてます。
(Aが作詞で、Cが作曲を表しています)

こんな感じで、ラップラインが三つ巴で楽曲作成に関わってます

2015年の花様年華期からボーカルラインの参加が見られるようになり、「WINGS」から本格化します。

上の絵に比べて、青(ボーカルライン)が増えているのがおわかりでしょうか

何をもってして音楽的な成長と捉えるかは難しいのですが、ラップラインが絡まない(歌詞におけるナムさんや楽曲におけるSUGAの手助けがない)曲を作るようになった、という意味では、以下がボーカルラインの実質的な独立宣言曲になるのではないかと思われます。

ジミンちゃん:『Lie』(2016年の「WINGS」)
テテ:『Stigma』(2016年の「WINGS」)
グク:『Still with you』(2020年のBTS FESTA)
ジン君:『スーパーツナ』(2021年の誕生日)

ボーカルラインの実質的な独立宣言曲@私セレクト

こうして、「ラッパー虎の穴」やら「夜のHIPHOP教室」を経て成長したバンタン。
ソロ曲やソロアルバムを通して、それぞれが好きなジャンルやスタイルを確立し、独自の魅力を発揮するようになります。

私の大好きな音楽的個性を挙げてみましょう!

JIN:
声質的にも方向的にも情緒表現溢れるバラード曲が最強だが、発音が明瞭なので明るい曲にも向いている。わりと物語的な楽曲が多いところも、メンバーの中では特徴的。歌詞は率直で、自己探求やファンソングが多い。
SUGA:
商業音楽からHIPHOPまで、取り扱う楽曲の幅が非常に広い。ラップ・ダンス・演奏などのスキルに裏打ちされた表現力は、まさにプロの所業。
経験や感情を率直に吐露するものが多く、社会的メッセージも含まれる。
J-HOPE:
ダンスミュージック色が強く、歌詞を含め独特の躍動的なリズムがある。
歌詞の視点はSUGAに似ている。HIPHOPでありながら、お約束より自分の世界観を優先して線引きしている部分があり、それも独特な魅力を生む。
RM:
基盤はHIPHOPだが、様々なジャンルを融合しており、驚かされる。アートや文学にも影響された内省的な歌詞世界は、メンバーの中で最も抽象性が高い。真意は、比喩や罵り言葉に糊塗された一段階奥にある印象。
JIMIN:
歌とダンスの両方で高い表現力を持つため、ドラマチックな要素を持つ曲が最高に映える。多様な音楽スタイルを取り入れており、特定のジャンルに拘ることなく「初めて出会う自分」にフォーカスしていくチャレンジャー。
V:
波の下で渦巻くような深い葛藤や感情表現が多く、独特の世界観を持つ。自然描写と重ねた比喩が多い。曲を構成する要素のうち、視覚的なアプローチを重視しているところも特徴的。低音で奏でられるジャズは絶品。
JUNG KOOK:
絵に描いたようなポップスター。楽曲制作に関しては、最も割り切っており縛りが少ない印象。自作曲の方向性はジン君と似ている。何でも歌いこなせるが、声質的に泣き曲を囁き気味で歌うと世界を殺せる。

長くてすみません

花開いた個性とルーツ

BTSで築いた世界観をそれぞれの個性で更に広げ、オリジナリティ豊かな音楽体験をもたらしてくれるバンタン。
彼らの楽曲を追っていると、HIPHOPを原点とする音楽的なルーツを縦の糸、互いに与え合う影響を横の糸として、ケミストリーが発生しているように映ります。

縦のライン:
例えばボーカルラインのうち、育ての親であるラップラインから楽曲作成の姿勢を一番濃く受け継いだ直系の後継者は、ジミンちゃんだと思います。

彼が「FACE」で選んだ、「自分と向き合い内面を吐露するところからスタートする」スタイルは、完全に源流がHIPHOP=ラップライン。
「初アルバムでは自分の話をする」は、ラップライン全員が通った道ですからね。それをちゃんと辿るあたりに、彼のヒョンに対する忠誠心を見ました。

あなたに影響されたんです、と目を見て言えるジミンちゃんに萌える
「まだ未熟ですが」って恥ずかしそうにしてるとこがかわいいw

自分の感情を、言葉にして文章にして書いて表現しながら、それを素敵に作り上げていくのは本当にかっこよかったので……そんな年上メンバーのそばで育ってきたので、今になって僕もこんな風に僕の話を盛り込んだり、僕の話を書いてみたいなと

「교환앨범 MMM(Mini & Moni Music) - 지민 (Jimin)」より

この方向性、テテとグクは今のところあまり受け継いでいないように見えます。ソロアルバムでも自作曲より提供曲を使い、多彩な世界観や新しい自分を魅せることに注力しましたし。
まあ、ジミンちゃんはマンネラインのヒョンですからね。子育てでも長男長女は一番親に影響されやすく、下の子の方が自由、というのはよくある話です。どっちもあり!

兵役が終わった後、もしまた各自がソロアルバムを出す機会があったとして、その時テテとグクがどういう方向を選択するのか、私はものすごく興味を持って見守っております!

横のライン:
ジン君とグクの自作曲属性の方向性が結構似てる(関心がARMYに集中しているのを隠さない)のは、面白いですね。
これは、バンタン全員が持ってる性質を最もストレートに出してくるのがこの二人、なのではないかと思っています。

歌詞の面では、自然描写と重ねた比喩が多い点で、ナムさんとテテは表現の仕方が似ていると感じます。
感性とか本心をどう出すかの距離感が似てるのかもしれません。

感性兄弟

また歌詞の方向性で言うと、HIPHOP色が強いラップラインは憤りを歌うが、別ジャンルへ行くことが多いボーカルラインは基本歌わない、という違いがはっきりしています。
それが影響するのか、前者の歌詞には「社会と僕たち」へのフォーカスが紛れ込むのですが、後者は「君と僕」視点が非常に強い、という傾向も感じられます。

音楽の家系図

進化を続けていくバンタン。改めて個性豊かなメンバーがそろったグループだと思いますし、初期に基礎となる音楽的価値観を築き上げてくれたラップラインの功績には、心から感謝したいです。
本人たちもまだ若く、他で練習生経験があったわけでもないため、どうしていいか手探りだっただろうに……と思うと、胸が熱くなります。

これらの多様性と統一性のバランスが、BTS楽曲に厚みをもたらしているように感じられます。次はどんな姿を見せてくれるのか、今から楽しみですね!( *´艸`)


参考にした本


シリーズ記事

コーヒー一杯奢ってください( *´艸`)