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「will」とは何か?



リクルートの人材開発を語る上で避けて通れないテーマが「will」についてだと思います。リクルートの人材開発・組織開発の責任者を務めていた2021.4-2024.3月までの3年間で、最もよく聞かれた質問、相談は「will」についてでした。

「立派なwillがないといけないのではないか」
「willがあることが前提のコミュニケーションがしんどい」
「上司との面談の前に職場のリーダーに自分のwillについてレビューをしてもらっている」
「明確なwillがない自分は今の職場にいてはいけないのではないか」
などなど。

またwillを強要するような「willハラ」、こうなりたいというwillがないということを「willなし」など色々な言葉もうまれていました。

20数年間リクルートという会社にいる自分からすると、「そんなに大げさに捉えなくてもよいのに」「もっと肩の力ぬいて」と思ってしまうのですが、自分の想像を超える多くの人がwillについて向き合い、悩んでいる実態がそこにはありました。

このwillについては多くの誤解があると思っています。改めてリクルートのwillの成り立ちを振り返るとともに、willの本質について迫ってみたいとおもいます。

willの歴史

まずリクルートにおいてwillという言葉が語られるようになったのは自分が知る限り2008年からです。2004年にミッショングレード制が全社導入され、2008年に「will-can-mustシート」の前身となる「willシート」が全社導入をされています。この頃の時代背景としては、マネジメント層の若年化や、ミッショングレード制導入に伴う一部反作用として、ミッションコンシャスな従業員が増えたことを受けて「willシート」が導入されています

willシートとは何か?

リクルートHPの沿革・歴史の中に、このwillシートについては以下のように紹介されています。

2008年 Willシート導入
従業員一人ひとりが仕事を通じて実現したいこと(Will)を明らかにし、その実現のために何ができるか、何をすべきかを考えながら目標を設定、管理するシートを導入

https://www.recruit.co.jp/company/history/#2000

「仕事を通じて実現したいこと(will)」とあるように、もともと、将来自分はこういうことをしたい、というような夢・ビジョンのようなものだけを対象にしていたわけではない、ということがわかります。

この時の制度に込められた想いは、上から降りてくるミッションだけやればいいということではなく「仕事を通じてあなたはどんな価値を顧客に届けたいと思っていますか?」「仕事を通じてどんな貢献を組織・顧客・社会にしたいと思っていますか?」「一人ひとりが仕事の意味を考え、一人のビジネスパーソンとしてどう向き合いますか?」といったことがメッセージとして含まれていたように思います。

つまり仕事に対するスタンスや主体性を育むものとしてスタートしたのが「will」という制度だったのです。

willは立派な「夢」でないといけないか?

「セリエAに入団し、レギュラーになって、10番で活躍する(本田圭佑選手)」
「一流のプロ野球先週になる(イチロー選手)」
それぞれ小学生の時に宣言した夢・ビジョンです。
willというと、この本田選手やイチロー選手などのようなvision/夢でないといけないといった誤解があるように思います。

リクルートに2008年に導入されたwillというのは、「仕事を通じて実現したいこと」という、あくまで仕事というフェアウェイがあった上で、そのプロセスの中で実現したいこと、が問われていたということになります。ミッションに対してのコミットメントが高いことは大切だけど、言われたことしたやらないのってリクルートらしくないよね、仕事の中にどんな意思、主体性を持つか考えようー!という運動がwillシート導入の背景だったのです。

つまり将来こうなりたい、という夢のようなものを持とうということが奨励されていたわけではなかったのです。

(誤解なきように伝えると、業務に関連ないwillを持つことを否定しているわけではありません。将来こうなりたい、こういうことをしたいという意味合いでの「will」がある人は、将来に向けてどんな成長したいか、ということを考えることそのものはむしろ推奨していたと思います)

その後、willシートは、Will-can-mustシートに改変され、2012.10月に5つの事業会社と二つの機能会社にリクルートは分社化します。分社化時代の2012.10-2021.3月までの間に、各事業の成り立ちだったり、ビジネス環境だったり、当時の事業トップ、経営チームの影響を多分に受けて、各社ごとに独自進化を遂げていきます。

そして、2021.4月に会社が再度統合する際に、改めてwillの扱いについても経営ボードで議論がなされ、現在のWCMに落ち着いているという経緯になります。

ここまでwillシートの導入の背景を振り返ってみましたが、will=立派な夢・ビジョンということではない、ということがご理解いただけたかと思います。

では現在における「willとは何か?」「willの本質とは何か?」について考察してみたいと思います。

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