強みとは何か?
先日、社内の200人くらいの営業部門で「強みについて」話をする機会があありました。このテーマはここ半年くらいずーっと考えていたことの一つ。現時点での自分なりの定義は、強みとは「自然とできてしまうこと」であり、別の言い方で言えば、強みとは「できること、関心のあること、得意なやり方の総和」という事だと思っています。
「強みを生かすことが大事」「課題克服だけではなく、強みを伸ばそう」とはよく言われるものの、そもそも「強みとは何か?」ということが曖昧な気がします。ドラッカーも明確に強みについての定義はしていない。記録し、振り返り、成果を残した仕事を観察することで見えてくる、と言う趣旨を述べているけれど。
リクルートの人材マネジメントの考え方・方法にwill-can-mustがある。willとcanとmustの重なりを大きくしていこう、というあれである。一般的には強みはこの中のcanに該当する。ここで語られるcanとは基本的には、スキルベースである。例えば、構造的に俯瞰してみることができるとか、本質的な打ち手の立案ができるとか、そういうこと。今回この「can」を「強み」と捉え直し、強みそのものを再定義してみることにしました。名付けて3Circle(will-can-mustをそれぞれ3つの輪で表現したことから。ちなみにwillとmustをブレイクダウンした3つは暫定版です)
強みとは、できること(can)、得意なこと(My way)、関心のあること(interest)の総和である、と捉え直すことで見えてくるものがあるように思う。それは、スキルも大事だけど、スキル以外の要素にも目を向けようぜ、ということに他ならない。ここからそれぞれについて解説してみます。
① can(skill・できること)の特徴:
相対的、客観的、蓄積的である。スキルは周囲との比較の中で評価がされやすい。自分ができると思っていても、周囲にもっとできる人がいたらその価値は相対的に下がってしまう。周囲からの評価を受けやすいのである。一方で、社内異動によってそれまで強みとされていなかったことが、ある組織に異動した途端強みに転じるということもある。canとは相対的なものなのである。相対的であり客観的であるので、環境が変わることで、評価されるcanも変わってくることがある。
需要がありできる人が少なければいいお給料で採用される。お金に換算されやすいのも特徴である。また好きでも得意でもないが「できる」(canがある)ということはある。それが幸せかどうかは別にして。canに該当するものは、スキル・知識・経験などである。
②My way(得意なやり方)の特徴:
絶対的であり主観的であり固定的である。canとは真逆であり、人と比較しても意味がない。人からとやかく言われることではない。自分にとって得意なやり方は自分自身で見つけていくしかない。持って生まれたものだったり社会人になるまでに身についたことが多い。ここには自分らしい学び方も含まれる。
具体的には、思考特性や行動特性、strength finder、FFSのworkskillが該当する。ドラッカーの言う「読みのが得意か書くのが得意か」「朝型か夜型か」もここに該当する。うまくいったことを振り返りそこに自分なりの「勝ちパターン」を見出すことが大事。勝ちパターンを自分なりに発見することができれば、再現性が高まる。常にパフォーマンスを発揮しやすくなる。
③Interest(関心)の特徴:
絶対的であり主観的であり流動的(固定的)である。My way同様に人と比較しても意味がない。自分が何に関心があるのか。ここに含まれるものは、興味・関心、好きなこと、価値観、FFS、動機、ワークグラムなどである。それらをまずは自分自身で把握することが大事。
EMSでの学びの一つにの関心相関性と言う原理がある。
「存在・意味・価値は、身体・欲望・目的・関心に相関的に規定されるという原理」(構造構成主義とは何か/西條剛央)
一言で言えば、関心がないと意味・価値は見出せないと言うもの。ハックマン&オールダムの言うところのタスク重要性(Task siginificance)とも関連しているように思う。意味・価値を感じるにはそこに関心がなければならないし、関心を持ってもらうようにコミュニケーションするのがマネジメントの役割の一つでもある。ちょっと脱線したが、自分自身の心・情動がどこに向かって動いているのか、と言うことを自分で把握することが大事ということ。心理学的経営でも大沢さんは、「自己理解、他社理解、自己受容、他社受容」と述べている。全ての起点はまず自己理解である。(そう言えばリクルートはとにかく自己開示が好きな会社である)
canを強みと捉え直した時に、強みとは成果に対して発揮されるものなのだから、成果起点で強みは何かを考えることが大事なのだと思う。自分の強みは何か、ということを突き詰めることも大事だけれど、強みからいったん離れた上で、自分が成果を残した仕事を観察すること、そして自分の関心に向き合うことが大事である。どれが一つあればいいと言うことではなくどれも大事でそのバランスが大事なのだと思う。なぜバランスが大事なのか、ということについては、次回論じてみたいと思う。
強みとは「自然とできてしまうことであり、関心・得意なやり方・できることの総和」が今の結論です。ご意見・感想などいただけると自分自身の思考が深まりますので嬉しいです。
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