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性的少数者を怪物にしないでくれ

ツイッターで漫画の一部無料公開をしている人がいた。リツイートか何かで回ってきたやつで、性的マイノリティの高校生のある夏を描いたものだった。とてもいい作品だと思った。

しかしそこについているリプライがよくなかった。作中ではMtFの高校生が登場するのだが、作者が作品につけたコメントが「トランスジェンダーの男の子の恋の話です」というものだった。そしてタグには#BLとあった。
誤解されるかもしれないので私の意見を先に述べておく。確かに正確な表現ではないかもしれない。しかし騒ぐほどではないと思う。
ところが、リプライのなかには、びっくりするほどこの「不正確」を指摘して「不適切だ」「当事者が傷つく」とおっしゃる方々がいた。そしてその人たちは作品の感想を少ししか触れないか、全く触れなかった。
そして、少なくとも私自身は傷つかなかった。

私はXジェンダーのパンセクシャルで、いわゆる当事者というやつである。

こういった言葉の誤りよりも、私は「性的少数者を扱う表現が行われなくなる」ことが恐ろしい。「安易に触れてはならない腫れ物」になるのが恐ろしい。社会において私たちのようなものを話題にするのがタブーになるのが恐ろしい。
確かにこのような言葉の不正確さは容易に人を傷つけることがあるかもしれない。それでも私は、性的な少数者が禁忌になることの方が恐ろしい。
間違えたなら訂正すればいい。必要なら謝罪すればいい。正しいかどうかは二の次として、交流のうえ相互理解が深まればいいと思っている。

どこか暗がりに封印された怪物にだけはなりたくない。

困ったことに、主にSNSで性的少数者を擁護する目的で今回のような言葉の誤用を指摘して「当事者が傷つく」とコメントする人には、アライ(性的少数者に対して協力したいという意思表示をしている人物、団体)であることを公にしている人もいる。計算したことがあるわけではないが、体感としてはかなり多い。そしてご本人たちは正しいことをしているつもりで、心底から善意でそうしたコメントをしている。
頼むからやめてくれ。あなたたちこそが、社会と私たちとの間に溝を掘っていることに気づいて欲しい。
私たちは傷つけば自分でそう言えるし、言える世の中になってきた。あなた方が思うよりは強い。侮らないで欲しい。

もちろん全てのアライがそうというわけではない。彼らにどれだけ救われたことがあるか私は忘れない。彼らの支えがなければ今の私はいなかった。
私が呼びかけたいのは、「良かれと思って大いに足を引っ張る厄介な味方」なので、誤解なきようお願いしたい。もし、私の書き方が悪かったならそれは力が足りていなかった証拠なのでお詫びしたい。これからはそのようなことのないよう、精進していきます。

読んでいますか。「厄介な味方」の方。
あなたのその言動こそが、私たちを孤立させるかもしれない。
今一度よく考えて行動して欲しい。

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