前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい 七話


 江入さんに襲撃されてから一週間ほど経った、とある日の昼休み。

 缶コーヒーを買いに行くために廊下を歩いていると背後に人の気配を感じた。

 いや、人の気配っていうか俺を追跡してるやつの気配だ。

「おい、何の用だ? 隠れてないで出てこいよ」

「よ、よく気がついたわね……」

 俺に言われて廊下の曲がり角から出てきたのは赤みがかった茶髪の美少女。

 久しぶりに会う結城優紗だった。

「やれやれ、部室に顔も見せずストーカーとは。それが元勇者のやることか?」

 俺が冷めた視線を送ると、

「しょ、しょうがないでしょ。あんな感じで出て行ったから、何か顔を出しづらくって……」

 しどろもどろ、結城優紗は言い訳をしてくる。

「ふーん?」

 そりゃまあねって思う逃走っぷりだったけど。言い訳は見苦しいぞ?

「違うの! 明日行こう。明日こそはってずっと思ってたの! そしたら、どんどん間が空いちゃったのよ!」

 あーわかるわかる。そうやって先延ばしにしていると、ますます行きにくくなるんだよな。

「で、お前、どうして部活に来ないんだ? 丸出さんが気にしてたぞ」

「いやいや! だから言ったでしょ! あんな感じのまま帰ったから行きづらいんだって! しかも、また来るって言ってから二週間以上も経っちゃってるし!」

「はあ……」

「これも全部あんたのせいよ! あんたがあたしを嘘つきみたいにしたから!」

 なんでだよ。俺は不当に貶められそうだった評判を守るために抗っただけだぞ。

 加害者が謎の被害者意識を持つんじゃねえわ。

「というか、俺と同じ部にいる必要ある? 俺をストーカーするなら今もやってたわけだし」

「ストーカーとは何よ!」

 お前がやってることだよ。

「もう、幽霊部員からのフェードアウトで楽になっちゃえば?」

 俺としてはそっちのほうがありがたいのだが。

「何言ってるの! 入部すると決めたからにはきちんと参加して最後までやり遂げるのがスジってものでしょ!」

「ふーん?」

「……って思ってたんだけど」

 実行には移せなかったと。人は追い詰められると理想通りに行動できない生き物である。

「将棋の駒の動かし方を覚えたり、蛍光灯の紐でシャドーボクシングしたりして準備はバッチリなの! 後は部室に行けるかどうかだけなの!」

 そんなことやってるんだ……。彼女は建前上籍を置いただけで、まともに活動するつもりはないと思ってたから意外だった。

 きっと根は真面目なのだろう。

 でも、蛍光灯の紐でボクシングはよくわからんわ……。

 というか、将棋ボクシング文芸部は好き勝手なことやってる溜まり場みたいな感じだから別にガチになる必要はないと思うが。

「まあ、俺を監視できればいいってだけで入部届を出したんじゃないことはよくわかったよ」

「えっ……じゃあ――」

「だが、断る!」

 結城優紗が瞳に期待を宿しかけたので素早くシャットアウト。

 芽は早いうちに摘む、先手先手の水際作戦。

「ねえ……あんた、あたしにはちょっと態度がキツくない? 他の人にはもっと優しい雰囲気で接してるじゃない」

 なぜ、自分の命を狙ってきた輩に気を遣わなきゃいかんのだ? 俺の心が狭いみたいな方向に持って行こうとするのはやめろ。俺が最強じゃなかったらシャレになってなかったんだからな? そこんとこ、わかってます?

「ううっ……でも、一人で行こうとするといろいろ思い出してムガーってなっちゃうの! どうやって入ればいいかわからなくなっちゃうの! だから……ね?」

 わかってなさそう。

「俺をつけてたのは部室に入りやすいように協力して欲しいってこと?」

「その通り!」

 結城優紗は頷いた。こいつ、討伐するって言ってた相手に頼るとか恥ずかしくないの?



 放課後。俺は結城優紗と二人で部室に向かっていた。

 誰かと一緒ならノリで行けるだろうっていう安直なプランです。

「そういえば将棋ボクシング文芸部に江入さんっているでしょ?」

「ああ、いるな」

 俺は同級生に扮したエイリアンの顔を思い浮かべた。あれから彼女は侵略者らしい活動を行なっている雰囲気はない。

 俺に襲いかかってくる前と何ら変わりない様子で高校生をやっている。返り討ちにされて、すっかり諦めてくれたのなら安心できるのだが……。

「あれれ、なんか素っ気ないわね? フフ、もしかしてあの子のことも雑な扱いしてるの?」

 なんでちょっと嬉しそうなんだよ。

「雑に扱ってはいないけど……ま、いろいろあってな」

 お前と同じ、俺の命を取りにきた同類ですから。

「で、江入さんがどうしたんだ?」

「あの子、あたしと同じクラスなのよ。それで気がついたんだけど、江入さんって最近様子がおかしくない?」

「おかしい……とは?」

 おかしいのはお前の距離感だよ。何を以てして妙に馴れ馴れしい態度なのか。監視とか何とか言ってたくせに。

 でも、このまま普通の同級生っぽい関係に落ち着いてくれたほうが俺にとっては好都合なのか……?

 いきなり命を狙ってきたやべーやつではあるけれど。

 それを除けば彼女は同学年でモテモテな高嶺の花ポジの美少女。

 いわゆる、リア充・陽キャ・パリピなどと呼ばれるカーストに位置する存在である。そんな彼女と同じ部活で共に過ごす。それは客観的に見れば充実した青春としてポイントの高い部類に入るのではないか?

 変に襲ってこないなら、なあなあで曖昧にしていくのもアリなのでは……?

 いや、だけど結城優紗だしな……。俺が葛藤していると――

「おーい、しんじょー!」

 どどどどどどどっ。ぼすんっ!

 勢いよく廊下を走ってきた鳥谷先輩が背後から俺の腰に飛びついてきた。

「先輩、危ないですって」

「あはは! すまんすまん。でも、しんじょーはビクともしてなかったぞ?」

 金髪碧眼で学ランを着た、ちっちゃな先輩は今日も元気で表情豊か。

 実家がマフィアで不良さんたちを従えてなければ、彼女は俺の癒やしとなっていただろう。

「鳥谷先輩も部室に行く途中ですか?」

「おうとも! 今日はベンチプレスの日だからな!」

 部室には準業務用のパワーラックがあるのだ。

 ウェイトスタック式のラットプルダウン? とかいうのもついていて、いろんなトレーニングができるらしい。俺は使ってないから詳しくないけど。ボクシング部の設備で健康な身体作りに勤しんでいるのが近頃の鳥谷先輩であった。

「明日はデッドリフト! 明後日はスクワットだ!」

 今、彼女にはフィットネスブームが到来していた。

「ん? こいつ、どっかで見た覚えあるぞ?」

 鳥谷先輩が俺の隣にいる結城優紗に気づいた。

「あ、あたしはその……」

「あ! 思い出した! ずっとサボり続けてる一年じゃないか! どうして部室に顔見せないんだ? 真帆が気にしてたぞ?」

「………………」

 上級生に直球でサボっていると言われ、理由を問いただされるとかキッツいなぁ……。鳥谷先輩は嫌味で威圧してるのではなく、単純に気になってるだけだろうけど。

 ……ん?

「あ、あたし今日はやっぱ――」

「待てよ」

 返答に困窮して逃げだそうとした結城優紗の行動を察知した俺は彼女の腕を掴む。

「いやっ、離してっ!」

「うるせえ、暴れんじゃねえ!」

 ここで帰らせたら、こいつは日を改めて俺に話を持ちかけてくるだろう。

 諦めるのならいい。

 だが、二度手間を掛けさせられるとわかっていて逃がすわけにはいかん。

「今日はやめとく! なんか無理っぽいの!」

「やめるのなら『今日は』じゃなくて『永遠に』だ! 大人しく幽霊部員になって、なだらかに消え去っていけ!」

「そんな無責任なことできないわ! あんたを野放しにもできないし!」

 メンタル弱っちいくせに変なところだけ頑固なの面倒なんですけど!

 お前は初志を貫徹できる器じゃないよ! 身の程を知りなさい。

「どうしてあんたそんなにしつこいのよ!」

「だって、お前が頼んできたんだろ!」

「頼まれただけでそこまで律儀になるなんて意味わかんない! あんたホント腹立つ!」

 逆ギレしだしたぞ。こっちが意味わかんないわ!

「…………」

 鳥谷先輩は俺たちが揉めてる様子をぽけーっと眺めていた。

 そして、

「お前たち、仲いいな!」

「…………」

「…………」

 そういう古典的なボケは勘弁してもらっていいですか?



「おい、そこで何をやっている!」

 抵抗する結城優紗の腕を掴んで引き留めていると、廊下の向こうから黒髪の女子生徒がずんずんと歩いてきた。

「げっ、あいつは……!」

 鳥谷先輩が焦った様子でコソコソと俺の背後に身を隠す。

 なんだ? どうしたんだ? 

 近づいてきているのは長い黒髪をポニーテールに結んだ美人。リボンの色から推測するに三年生だろうか?

 キリッとした鋭い目つき。しゃんと伸びた姿勢のいい背筋。

 女子の割にそこそこ身長が高く、ウエスト部分は括れているのに出るところは出たスタイル。

「貴様……一年生の新庄怜央だな?」

 俺の前で立ち止まった女子生徒は俺の名前を知っていて、どういうわけか敵意むき出しの視線を送ってきた。

 こういう、凜とした雰囲気の美人から睨まれると何とも言いがたい圧を感じるぜ……。

「俺のことをご存じで?」

「ああ、当然だ! 貴様の悪行は聞いている!」

「あ、悪行……!?」

 初対面で悪人扱いされていた。俺が何をやったって言うんだ!

「貴様は花園を倒して名を上げ、最近では鳥谷ケイティと組み、将棋ボクシング文芸部の部室を占領して好き勝手やっているそうではないか!」

「いや、占領してるわけでは……」

 外部視点ではそういうふうに見られていたのか……。

「今も善良な女子生徒を強引に連れ去ろうとして! 彼女を一体どうするつもりだった!?」

 部室に連れて行こうとしただけです。そう言ったら余計に話がこじれそうだな。

「あの、あたしは将棋ボクシング文芸部に入ってるんで、ある意味、合意の上というか……」

 さすがの結城優紗も、この場面では誤解を解こうとするくらいのフォローはするようだ。でも、もうちょっとハッキリ違うって言ってくれるとありがたいな。ある意味ってなんだよって。

「何? 君も部員だと……? なるほど……」

「そうだそうだ! そいつはうちの部員なんだ! 部員を部室に連れてって何が悪い!」

 俺の背後に潜んでいた鳥谷先輩が肩口から顔を覗かせた。

 おんぶのような体勢で俺にぶらさがってる。

 威勢のいいこと言うなら、ちゃんと姿を現したほうがいいと思いますよ。

「鳥谷ケイティ……! そうか、わかったぞ! つまり、彼女はお前たちに脅されて無理やり入部させられたのだな! ますます捨て置けんッ!」

 ずん! と大きく踏み込んで間合いを詰めてくる黒髪美人先輩。

 違うんです! むしろ無理やり入部されたんです!

 俺は声を高らかにして言いたかった。

 でも、やめておいた。この手の思い込みが強そうな人に下手な言い訳は逆効果だ。

「脅されてるとかじゃなくて、あたし、普通に部員で……」

 結城優紗はしどろもどろ。

 それをどう受け取ったのか、黒髪ポニテの先輩は柔和に微笑み、

「心配はいらない、ちゃんとわかっている。君のような一般の生徒が安心して学校生活を送れるようにするのが我々風紀委員の役目だ。恐れず、私に助けを求めてくれたまえ」

 やっぱり、何も理解してない感じのことを言った。

「まあ、そうやって不良どもを叩きのめしていたせいで、不本意ながら私も四天王などという同じ括りにされてしまったが……」

 え? 四天王……? まさか、この人も花園や鳥谷先輩と同系統の有名人なの?

「おい、風魔(ふうま)! 脅されてないって言ってるんだから、さっさとどっか行けよ!」

「鳥谷ケイティ、君は何度言っても男子の旧制服の着用をやめないな? それは校則違反だと毎回注意しているはずだが?」

 鋭い視線が鳥谷先輩に向く。敵意の対象が飛び火した。

「はんっ! 学ランはわたしのポリシーだ! 誰がやめるかってんだ! よく聞け、この旧制服の学ランはかつて――」

「言い訳無用ッ!」

「うひゃっ」

 一喝され、鳥谷先輩は再び俺の背後に引っ込んだ。

 鳥谷先輩はこの人のことが随分と苦手らしい。

 性格的になんとなくわかる気もするけど。

「とにかく、その手を離すんだ」

 そういえばまだ結城優紗の腕を握ったままだった。

 黒髪ポニテ先輩は俺の手首を掴んで引き離しにくる。

「…………!? これは……貴様……は……!」

 俺に触れた瞬間、彼女の様子が変わった。俺の顔をまじまじ見て、目を大きく見開いている。

「仕方がない、この場は引き下がっておこう……。だが、馬飼学園での度を超した狼藉は風紀委員長である私、風魔凪子(ふうまなぎこ)が許さんぞ!」

 風魔凪子と名乗った先輩は艶のある黒髪を揺らし、くるっと身を翻して去って行った。



「あの人、なんだったんだ……?」

 許さんぞ宣言をされた俺は困惑していた。四天王の一人みたいなことを言ってたのに。

 風紀がどうこう抜かしおった。

「あいつは風魔凪子って言ってさー。わたしの一個上なんだけど、会うたびに制服をちゃんと着ろとか騒ぐなとか、ガミガミうるさいんだよなー」

 鳥谷先輩が口を尖らせてブーブー言う。先生によく叱られてる小学生みたいだった。

「へえ、さっきの人が風魔先輩なんだ」

 知っているのか、結城優紗。

「鳥谷先輩と同じ、花鳥風月の三年生よ。四天王に入れられてるけど優等生で、あの人とあの人の率いる風紀委員のおかげでガラの悪い連中の抑止力になってるって聞いたわ」

 風魔凪子が目を光らせるようになってから、校内では素行不良な生徒たちによるカツアゲや暴力行為がめっきり数を減らしたらしい。

 へえ、四天王って不良ばかりじゃなかったんだな……。

「風魔のやつ、実家が道場かなんかでさ。剣道やら合気道やらやっててすげー強いんだ。まあ、いつかケチョンケチョンにしてやるつもりなんだけど!」

 ビビってるわけじゃないぞ! と強調して付け足す鳥谷先輩。

「…………」

「お、おい、なんだその目は! ホントに、全然ビビってないんだぞ……!」

 なるほど。確かに風魔凪子は抑止力になっているようだった。



 その後、結城優紗をなんやかんや部室に連行することに成功。

「結城さん! よかった! 全然顔を見せないからもう来てくれないのかと!」

「ううん、違うのー! ごめんねー! これからはちゃんと来るからー!」

 丸出さんに歓迎された結城優紗は高い声音できゃいきゃいと空々しいセリフをのたまい、そのまま部室の空気に溶け込んでいった。

 あれだけゴネてたのが嘘みたいな転身。

 朝、仕事行くの怠いなーと思ってても会社に行けば案外どうにかなるのと同じ理屈なのかな。

 会社勤めしたことないけど。



 夕刻。最後に残った江入さんに部室の戸締まりを任せて俺は下校していた。

 結城優紗と一緒に……。

 不運にも、俺と結城優紗は帰り道が同じ方向だったのである。

「部室にパワーラックがあるのはいいわね! ジムに通うお金が節約できて助かっちゃう!」

「…………」

 どうやら結城優紗も筋トレの民だったらしい。隣を歩きながら若干興奮気味に語っている。

「お前なぁ」

「どうしたの?」

 あれだけ突っかかってきてたのに今のコレは何なの? そう言おうと思ったが……。

 普通に同級生やれてるなら変に指摘してヤブヘビを突く必要ないか。

「何でもない」

 俺は楽な方に流れることにした。でも、鳥谷先輩、酒井先輩と三人で共通の趣味に意気投合してたのは少し羨ましかった。

 誰よりもパワーがあるがゆえ、筋トレの会話に入れない悲しみ……。

 これが強者の孤独ッ! 俺が浸っていると結城優紗が口を開いた。

「それより、今日は助かったわ。あんたや鳥谷先輩が一緒に来てくれたおかげでだいぶ部室に溶け込みやすかったし」

「そうか?」

 こいつだけでも十分に馴染んで行けそうなコミュ力だったと思うけど。

 まあ、恩を感じてくれてるならそれだけ大人しくなりそうだしそういうことにしておこう。

「あのさ……」

「なんだ?」

「魔王だったあんたが勇者を元の世界に帰れるようにしてたって話。正直、聞いたときは意味がわからなかったんだけどさ」

「おう……?」

「あたし、こっちの世界でもあんたを討伐しようとして襲いかかったじゃない? それなのにあたしが頼んだら部室まで一緒に付き合ってくれてさ。こうやって何事もなかったように同級生として接してくれたりもして……なんか、そういうあんたなら勇者たちにお節介焼いてもおかしくないなって納得できちゃった」

 結城優紗が妙に好意的な笑みを向けてくる……。こいつ、何か変なモン食ったの?

「王子や姫があたしを騙してたとは思いたくないけど、あんたが勇者を殺さず元の世界に帰してあげそうなやつだってことは話してみてよくわかったのよ」

 召喚魔法の解除は暇潰しでやってただけなんだけどね……。同級生として接しているのは同じ部にいる以上、他にどうしようもないからだ。

 しかし、結城優紗は俺の人間性を随分と上方修正したらしい。

 俺に送られてくる視線が相当に柔らかなものに変貌している。

 いや、どうしてそうなった……。

 本人に抵抗されながらも部室に連れて行くという当初の頼みを根気強く遂行したから?

 迷惑かけても世話を焼いてくれる面倒見のいいやつみたいな評価をされたのだろうか。

「ところで、あんた転生したって言ってたわよね? じゃあ向こうで死んだってことでしょ?誰かに討伐されて死んだの? なんていうか、あんたに勝てる勇者がいるって全然想像できないんだけど。もしかして寿命だったとか?」

 話は変わり、結城優紗は俺の転生について訊ねてくる。

「あーそれな。俺、実は前世でいつ死んだか覚えてないんだよ。入学式の前日にそういや魔王だったなーって思い出しただけで」

「え? 自分の最期を覚えてないってこと? そんなことある……?」

 そう言われても。覚えてないものは覚えてないのだからしゃーない。

「寝込みを襲われたとか? でも、それなら最後に寝たとこまでは覚えてるはずよね?」

「まあ、転生ってそういうもんじゃないの? そう都合よく全部は引き継げないって」

「自分の死に際のことなのにえらく他人事ね……」

 結城優紗が呆れたように言った。そうは言っても俺のなかでは終わったことだからなぁ。

 少なくとも、俺の中ではそれで片付いている。

 こうやって違う世界で生きているのに前世の記憶がそこまで重要とは思えない。

「あんたがいいならもう突っ込まないけど……」

「ようやく来たな、新庄怜央よ」

「ん?」

 チカチカッと点灯し始めた街灯の下から何者かが姿を現した。

「あんたは……」

 俺たちの前に出てきたのは黒髪ポニーテールの美少女。

 風紀委員にして四天王の風魔凪子先輩だった。

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