合理的な意思決定を阻むものは何か?(経済学的合理性)

現代の経済学理論においては、人間(個人)は合理的な意思決定を行うことが前提となっている。しかし、それは間違っていることは明白だろう。前にも書いたが、損をすると少し合理的に考えればわかるのにパチンコにハマる人などがそうだ。しょせん、人間の頭脳はコンピューターではないので、様々な合理的な意思決定を阻むものが存在する。ミクロ経済学ですでに明らかにされているものもあるが、それについて考えてみたい。

情報不足(情報の非対称性)

これはミクロ経済学の基本である。医師と患者では、医学知識は圧倒的に医師のほうが上である。ITも、IT企業のほうが素人よりもIT知識は上である。そのため、もし、サービス提供側に悪意があれば、消費者はだまされて合理的な意思決定が不可能になる。不動産取引などでもこのような事態はありえる。

短期主義や衝動性、中毒性

タバコを吸うと身体に悪いというのは常識だ。しかし、タバコを吸う人は多い。私は、不健康を喜んで買って、しかも高い税金を納めるのは合理性が無いと考えている。しかし、タバコを吸っていると中毒性があり、美味しくてまた吸いたくなるらしい。また、将来的な不健康のことまで考えられないほどストレスがたまり、近視眼的になっているのかもしれない。精神的に安定しているほうが合理的な意思決定はしやすい。こうなると、もはや経済学の範疇ではないが、最近は行動科学(心理学)を融合させた行動経済学が発展しており、国民の健康改善に活用されるかもしれない。

過去の経験

過去の経験、特にトラウマがある人は、必要以上にリスク回避的になってしまう。時にはリスクテイクしないと利益が得られないと頭では理解できても、過去の経験がそれを阻むのだ。男性から虐待された女性が、魅力的な男性と交際できないなども、これかもしれない。

周囲からの影響、文化、同調圧力

私が住んでいた三重県伊賀市には、ヤンキーが多かった。私は親から散々「学歴が無いと負け組になる」と脅されていたため、不良になることはなかった。勉強に励んだ。しかし、周囲の友人に不良がいると、同じように悪い道を選んでしまう人もいた。朱に交われば赤くなるというやつだ。つまりは、合理的な意思決定ができるかどうかは「環境や文化」の影響が大きい。広義には情報の非対称性と同じかもしれないが、厳密には異なると私は考えている。JDバンス氏が書いた「ヒルビリー・エレジー」も、アパラチア周辺のラストベルト(錆びついた工業地帯)には、勉学のメリットがわからず、遊び呆けたり、暴力や薬物などの犯罪や不特定多数とのセックスに溺れる人が多いと書かれている。ニューヨークやロサンゼルスのエリートには無縁の世界だろう。「今、株式や不動産を買わないと損する」と言われて焦って買ったあとに大暴落して損するのも、周囲からの影響だと思う。投機筋はポジショントークを得意とする。売り抜けたいときに、素人に買わせるのだ。タワーマンションを富裕層が買うのも、これだろう(見せびらかすための消費、衒示的消費とも言われる)。医学部よりも東大を志望してしまうのもこれだ。周囲がみんな東大志望だと、自分だけ医学部志望とは言いづらい雰囲気になってしまうのだろう。だが、安定性は医師のほうが上である。

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