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ドイツ研究者(博士課程学生・ポスドク)の給料体系について

ドイツで博士課程学生やポスドクを行う際は、通常、大学(厳密には州政府)と雇用関係を結び、研究者として勤務することになる。この際の給料はドイツのどこの大学に所属していても大体同じ額が、研究歴に応じて支給される。支給額はTV-L [*1]と呼ばれる体系で決定される。TV-Lには1から15までの区分が存在するが、修士の学位を取得し、博士の学位を目指している研究者はTV-L の13から基本的にスタートすることになる。


ある博士課程学生の懐事情

修士の学位を取得したトーマスくん(27歳)は、今年からTV-L 13の契約で博士の学位取得を目指すことにした。この際、むこう6年間の給料は以下のグラフのようになる。

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(2021年9月現在、130円換算、年収は月収の12.4倍で計算、0.4はクリスマスボーナス分)

このときの給与額は勤続年数によって決まる階級に応じて増加する。研究成果の有無に関わらない。トーマスくんの場合は、階級1からスタートし、1年後に階級2に、そのまた2年後に階級3に自動的に移行する。

また手取り額は税金や健康保険料を差し引いたもの。


基本的には任期付きである。

ここで注意しておきたい点として、研究者は基本的には2年か3年の有期の雇用契約を更新し続けるということである。更新の際に、教授の予算が途切れていたり、またはあまりにも研究成果が悪いと判断されたりすると、更新できない場合もある。もちろん任期終了前に研究者側から雇用契約を取りやめることは問題なくできる。

ただいわゆる契約社員のような雇用形態であるため、有期雇用契約の更新を繰り返しつづけることは推奨されていない[*2] 。基本的に、通算6年を超えた契約更新はできない。ただ博士の学位を取得すればもう6年(計12年)有期雇用として働くことが許されるようになる。それ以上の研究活動には無期での雇用が求められるが、無期での契約は雇用者側に予算確保の観点からリスクが高い面や、研究者側も企業で働いたほうが今以上の給料をもらえるという面があるため、研究者は産業界へ自ら進んで行く。

また博士の学位を取得し、ポスドクになれたとしても自動的にTV-L の区分が13から14にあがるとは限らない。ちなみにドイツでは、博士課程学生とポスドクの境界線は曖昧であり、ともにResearch Associate (Wissenschaftlicher Mitarbeiter) という同じ職位で扱われることがほとんどである。彼らがTV-L 13なのか TV-L 14なのかはそれぞれの研究歴による。


日本で博士取得後にドイツに研究者として来た場合

この場合の給与区分や階級は、ドイツで所属する研究グループや研究部門の長の判断による。日本での研究成果が認められる場合にはTV-L 13 の階級2や階級3からのスタートすることも可能である。TV-L 14やTV-L 15からのスタートも有り得るが、このケースでは、かなり高度な研究を要求されていたり、またTV-L 13相当の複数の研究者のマネジメントをする必要があったりする。


おわりに

日本の研究者や博士課程の学生で、ドイツでの研究活動に魅力を感じている人はかなり少ないと思うが、少しでも彼らの参考になればと思います。

参考文献
[*1] TV-L https://oeffentlicher-dienst.info/tv-l/allg/
[*2] Wissenschaftszeitvertragsgesetz  https://www.bmbf.de/bmbf/de/forschung/wissenschaftlicher-nachwuchs/wissenschaftszeitvertragsgesetz/wissenschaftszeitvertragsgesetz_node.html






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