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政治家が、あなたの生活を良くしてくれない理由

 財政政策の必要性が叫ばれて久しいですね。かつて自由民主党が民主党から政権を奪還したとき、国民は大規模・長期的財政政策を期待していました。…が、安倍内閣は2014年以降、国債発行量をどんどん減らし、財政赤字支出を減らしてきました。

以下のツイートのツリーを追いかけると毎年減額してきたことがわかります。

  ストック・フロー一貫モデルによれば、政府が財政赤字を減らしていく、ということは国民の収入が減っていく(もしくは海外収支の悪化)ということが言えます。つまり、安倍内閣は好況ではないにもかかわらず、緊縮を断行して企業・個人の収入、貯蓄を悪化させてきたことが分かると言えます

 私自身は個人的に、周囲に財政破綻なんて起こりえないこと、政府が緊縮財政を続けてきたことを伝えています。意外とみんな政府が緊縮してること知りません。一方で、5年ほど前の大規模金融緩和政策の注目ぶりからすると最近は政府に経済への理解がないということをつぶやく声も増えてきたというように思います。

しかし政府は財政に興味なし

 菅内閣が発足しました。やはり皆さんが期待するのは積極財政に踏み切るか否かというところではないでしょうか。しかし実際はどうでしょう。

 どうやら菅総理は金融政策に強いそうです。金融政策を"要請"して景気を良くするというような感じ。既にこの時点で菅総理の経済に対する認識の甘さ、財政政策の重要性への理解の甘さは証明されたと言えるのではないでしょうか。7年間の安倍内閣の異次元量的緩和政策で景気目標は一度でも達成したのでしょうか?…隣には白いスーツを着た某教授の姿も。菅総理と結婚でもするのでしょうか。

為政者にとって、緊縮財政主義はとても都合がいい

 私は、市場原理主義、緊縮財政主義というのは政治の職務放棄に等しいと考えています。経済というのは本来経世済民、世を治めて民を済うという意味。しかし現在の経済の考え方における主流は実態的には「レッセ・フェール」です。

 レッセ・フェールとは、フランス語で「なすに任せよ」。なすに任せよということは、裏を返せば統治者やエリートは責任を取らなくていいということなんです。この無責任を正当化するためのロジックこそが市場原理主義であり、だからこそ長きに渡って政治家がそれを重要視したのだと考えます、

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市場原理主義を重視する政治家は、長期政権になる

 ココで一つ考えてみましょう。緊縮財政主義をとり、「政府は経済に対して不介入」を貫く政治家が政権を取ると、不思議なことにみんな長期政権になってしまいます。サッチャー政権、レーガン政権、中曽根政権、小泉政権…

普通、庶民の生活を良くしようとする人のほうが支持得られるはずでは?

新自由主義なら何やっても結果責任を取らなくて済む

 何故緊縮財政、市場原理主義の政権が長期化するのか。市場原理主義を取る場合、政府の市場への介入は非効率の原因なので悪という考えになります。つまり統治者は不況や失業に責任を取らなくていいので、自助でやれと言って政権の座に就くと、結果責任を取らなくて済むのでやりたい放題なのです。「お前の政策で格差が拡大した!」と言ってもノーダメージ。「自助が足りない」と言えばよいのですから・・・。

 金融緩和重視・財政政策軽視の田中秀臣流のリフレ政策に菅が拘るのも当たり前で、経済は日銀の責任にしておけば政府の無責任を貫ける為、合理的な選択なわけですね。

経済左派政策を掲げて当選するとレームダックに

 個人的に悲しいのがやはり、多くの「雇用改善」「格差縮小」を掲げて当選した政治家が窮地に追い込まれていることです。例えば隣国韓国のムン・ジェイン大統領はこれにぴったり当てはまってしまっています。僕の同世代でも、韓国の若者が就職できず沢山日本に渡ってきています。

 …でも、それは当たり前なんです。だって彼らは「政府の支出は税収に成約されている」と勘違いしているためです。

 以下に、韓国のプライマリーバランスの推移を記載します。今年になってようやく財政支出を拡大していますが、去年まで支出より歳入のほうが大きい。つまり韓国はクソ緊縮国家であったということがわかります。私は元・ネトウヨとしてこの点は厳しく批判してきました。

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世界経済のネタ帳様より

政府は、財政赤字を恐れるべきではない

 最も重要なのは、まず財政赤字それ自体には大きな問題があるわけではないということをもっと多くの人が知ることです。そうでなければ、庶民の生活を良くする政治家ほどすぐ不人気になり、短期政権になってしまうためです。

 多くの経済学者は、政府が支出を増やすとクラウディング・アウトが起きて金利が上昇すると言っていました。それはなぜか。政府は「支出を増やす際に市場から資金調達を行っている」という"仮定"に基づいた言説がはびこっていたからです。実際は、政府が支出を増やすと、日銀当座預金が純増、我々の貯蓄も純増します。むしろ国債発行しないと金利が下がるんです

経済左派政権は、真正面から庶民に「黒字」を与えよ

 政府は、真正面から我々に黒字を与えるべきです。 ストック・フロー一貫モデルからすれば、その裏側には国際収支赤字、もしくは財政赤字が存在します。コロナ禍の今、国際収支改善の難易度を考えれば財政を出すしかないことは自明です。

 ポストケインズ派経済学者のカレツキの導いた恒等式によれば、民間部門の上げる税引き後の利潤は、かならず民間投資+利潤からの消費+財政赤字に等しいといいます。つまり不況期に財政赤字を減らせばダイレクトに我々の収入は悪化します

 これらのことに「雇用改善」「格差縮小」を掲げる政治家が気づかなければ。

市場原理主義は、永久に不滅なのです

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