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顧客サービス体験デジタル化の必要性とその現状

こんにちは。「バンドルカード」というto C サービスを展開するカンム社で、CS/業務プロセス周りをやっている平湯(ヒラユ)です。
引き続き、一定の調査を基にロイヤルティやエンゲージメントの考え方を紹介している海外の資料を中心に読んでいます。

今回は2つピックアップしました。
・『STATE of the CONNECTED CUSTOMER(by Salesforce社)』
・『Digital adoption:Learn what’s working for your peers(by NICE inConatct社)』

STATE of the CONNECTED CUSTOMER』は、消費者および企業を対象に、コロナ禍で消費者の期待と行動の変化を調査したレポートです。
Digital adoption:Learn what’s working for your peers』は、企業がサービスのデジタル化を求められるなかで、どのような現状にあるかを示したレポートです。

顧客は、世界的なパンデミックの影響で更にデジタル化を求めるようになっています。企業の現状とその対処について、上記レポートを基にまとめてみました。

顧客は企業のデジタル化を望んでいる

顧客の69%が、これまで利用していた製品やサービスのデジタル化を望んでいるようです。これは、(デジタル化された)新しいタイプの商品/サービスを提供してほしいという要望よりも多いです。
特に、Z世代がデジタル化への要望が大きいようで、このトレンドは現在の危機的状況による影響だと推測されています。

Z世代は今後メイン顧客になっていく層であるし、そのZ世代から生まれる次世代もおそらく同様の要望を持つのではないでしょうか。この情報を見る限り、既存サービスのデジタル化は避けられないと思われます。

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図:COVID-19に対して企業が取るべき行動
上)既存の製品/サービスを手に入れるための新しい方法を提供する
中)エンゲージメント手法を拡大する
下)新しいタイプの商品・サービスを提供する

Baby Boomer:ベビーブーム世代 = 1945 – 64 年ごろの生まれ
Gen Xer:X 世代 = 1965 – 80 年ごろの生まれ
Millennial:ミレニアル世代 = 1980 – 95 年ごろの生まれ
Gen Zer:Z 世代 = 1995 年以降の生まれ

出典:『STATE of the CONNECTED CUSTOMER』


また、現在のように危機が発生した際の企業の行動が、顧客との信頼を大きく左右すると示唆されています。現在の危機的な状況で顧客との繋がりを維持・強化することは大変重要だということですね。

顧客との信頼関係を築くことの重要性は今に始まったことではないが、一連の危機が相次ぐ中で、その重要性はますます高まっている。
今日、顧客はブランドとの関係における信頼の重要性をより重視しているだけでなく、その信頼を得るために高い水準を設定している。90%の顧客は、危機時に企業がどのように行動するかで、その企業の信頼性がわかると答えている。

出典:『STATE of the CONNECTED CUSTOMER』

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図:顧客に対して、一般的に必要とされるビジネス改善
上から、信頼性、環境への取り組み、サービスとサポート、製品情報、社会的実践、技術情報、ビジネスモデル

出典:『STATE of the CONNECTED CUSTOMER』

優れたサービス体験が顧客と企業の関係を強くする

優れたサービス体験が、再購入の意思決定に大きい影響を与えることはこれまでも言われていましたが、更にその気運が高まっているようです。
優れたサービス体験として求められているものは、パーソナライズ化され、かつ、シームレスに要求が満たせるものであり、なかでも、セルフサービス化への関心は高いようです。
日本の『コールセンター白書』でも、約7割以上の顧客が、電話をする前にチャットやサポートページなど何かしらの手段で自己解決を試している、という調査結果がありましたね。

カスタマーサービスの役割は、単に急性の問題に対処するだけではなく、気遣いの心を育むことへと進化している。優れたカスタマーサービスは、単に信頼やエンゲージメントを高めるだけではなく、最終的には利益をもたらし、失われた信頼を回復させることもできる。
91%の顧客が、優れたサービスを体験した後に再度購入する可能性が高いと答えている。

優れたサービス体験とは、パーソナライズされた、シームレスで迅速なものであり、理論的にはシンプルだが、実際には実現が難しいものである。
83%の顧客は、企業に連絡する際にすぐに誰かと関わることを期待している。(2019年の78%から増加)また、52%の顧客は、ほとんどのサービス・インタラクションを断片的なものと表現している。

出典:『STATE of the CONNECTED CUSTOMER』

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図:以下設問に同意した顧客
1)優れたサービス体験により再購入をする可能性が高くなる(91%)
2)優れたサービス体験で、会社のミスを許す(78%)
3)サービス体験の良し悪しで購入を決める(71%)
4)今年の危機で、顧客サービス基準が引き上がった(58%)

出典:『STATE of the CONNECTED CUSTOMER』

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【図:顧客の関心の程度】
1)セルフサービスのアカウントポータル
2)チャットボットによるシンプルなカスタマーサービス
3)定期購読サービス
4)新品や在庫切れ商品の予約注文
5)カーブサイド・ピックアップ(※)
6)自動補充注文サービス

(※オンラインで注文した商品を店舗の駐車場で受け取るサービス)
出典:『STATE of the CONNECTED CUSTOMER』


チャネルに関する調査では、電話が依然として要望が大きく、昨年よりシェアを挙げているようです。

70%以上が事前にセルフサービスを通過することを考えると、自己解決できない際の手段として電話が望まれていると推測します。まだこれだけ直接オペレータによる解決が必要なのは、プロセスや案内文に改善余地があるということなのかなと思います。
当社はTEL比率が2割程度なのですが、mailと問い合わせ内容が特に変わりません。上記に挙げたような改善余地がまだ多くあると感じています。

電子メール、電話、対面でのエンゲージメントは依然として顧客のお気に入りであり、オンラインチャット(多くの場合、ウェブサイトのポップアップウィンドウの形で)とモバイルアプリがトップ5を占めている。
2020年には、WhatsAppやソーシャルメディアのようなメッセンジャーアプリの人気が急上昇した。テキスト/SMSとビデオチャットは、今年、顧客が最も好む10のチャネルのリストに登場した。

出典:『STATE of the CONNECTED CUSTOMER』

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図:希望するチャネルTOP10

出典:『STATE of the CONNECTED CUSTOMER』

企業側のデジタル導入の状況は芳しくない

電話だけの企業は少数派のようです。(存在していることに驚きましたが、規模や業種によってはあり得るのかな…。)
ただ、Emailなどテキストで応対しているだけでは決してデジタルファーストとは言えません。顧客の条件(そのタイミングで希望するチャネル)で会話する必要があります。
このレポートでは、それは「誰もが日常生活の一部となっているソーシャルチャンネルを採用することだ」と言っています。

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図:コンタクトセンターのデジタル導入状況

出典:『Digital adoption:Learn what’s working for your peers』


導入のハードルになってるのはやはりコストが一番のようです。
費用対効果を見積もるのは大変なイメージがありますが、「ロイヤルティが上がるから」という抽象的な理由ではなく、数値で利益貢献を示すべきと思っています。簡単なことではないですが、それが示せれば優れたサービス体験が顧客だけでなく自社にとっても重要であることが説明できます。カスタマーサポートが利益を上げる存在を目指したときに、まずやるべきミッションはこれではないかと思っています。

回答者の半数近く(43%)がデジタル導入の障害の第一位は「コスト」であり、第二位はこれらのチャネルを追加できるプラットフォームへの「移行の難しさ」であった。

最も重要なことは、顧客を満足させ、ロイヤルティを維持することができないことで発生するコストである。新規顧客を獲得するよりも既存顧客を増やす方がコストがかからないことは周知の事実だ。例えば、Aberdeenは、エージェントの時間の15%が顧客データを探すために費やされていることを述べている。200席のコンタクトセンターで平均5万ドルの人件費を考えると、毎年150万ドルの不要なコストがかかることになる。

出典:『Digital adoption:Learn what’s working for your peers』

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図:コンタクトセンターにおけるデジタル導入のハードル

出典:『Digital adoption:Learn what’s working for your peers』


一方で、企業の大半(83%)は顧客からのフィードバックをきちんと認識している、という調査結果でした。待ち時間の長さが4割近くを占めていますが、オペレータと話すこと自体が不満(2割)も「問い合わせの煩わしさ」としてまとめられると思っていて、そうすると6割以上になります。

自己解決を含めた即レスの重要さはこのレポートでも表れていますね。特に、デジタルチャネルのコミュニケーションは非同期であるのに対して、電話は音声でのやり取りであるため、オペレータの稼働率が低下し、結果的に待ち時間を伸ばしてしまう、と本レポートで指摘されています。

調査に参加した企業のほとんど(83%)が、顧客の体験を理解するために積極的に顧客と関わっていると回答した。特に注目すべきは、半数近く(40%)が顧客の最大の悩みは待ち時間の長さだと答え、23%が複数のエージェントと話すことが不満だと答え、5分の1近く(17%)が音声による代替手段を好むと答えたこと。
この数字は今後も増加していくことが予想される。最後に、エージェントの共感が不足していると答えた人はごく少数(3%)だった。

出典:『Digital adoption:Learn what’s working for your peers』

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図:顧客のCXへのフィードバック
(Prefer alternatives to voiceが「7%」だが「17%」の誤植と思われる)

出典:『Digital adoption:Learn what’s working for your peers』
当然のことと思うが、調査の結果、エージェントのコストが圧倒的にトップに挙がった。(2位はレガシープラットフォームの管理)。
エージェントがコンタクトセンターのエコシステムの中で最もコストのかかる変数であるならば、なぜエージェントを日常的な単純なトランザクションの処理に追いやる必要があるのだろうか。

顧客にセルフサービスを導入することで、顧客が自分で問題を処理できるようになり、CXの向上につながるだけでなく、エージェントがより複雑なリクエストにも大きな価値を提供できるようになるのだ。

出典:『Digital adoption:Learn what’s working for your peers』

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図:コンタクトセンターのコスト

出典:『Digital adoption:Learn what’s working for your peers』

企業のデジタル導入に向けて

上記でも述べましたが、まずデジタル導入による費用対効果をはっきりと示すべきだと考えています。デジタル化が与える影響を冷静に見て判断して、そのうえで、あるべき姿と取り組みをまとめていきたいです。

・当社の調査参加者の60%が、音声のみ、または音声、電子メール、チャットを利用していると回答している。デジタルの導入が加速し続ける中、コンタクトセンターのリーダーは、顧客の要求に対応するためにデジタルを優先しなければならない。

・デジタルファーストのコンタクトセンターは、単一の製品やソリューションではなく、顧客体験を向上させる文化と戦略の転換である。

・デジタルを採用することで何を達成しようとしているのかを理解するべきだ。既存のパフォーマンス指標は何を示しているのだろうか?デジタルをどのようにマッピングして、具体的な改善をするのか?

・カスタマージャーニーと体験を理解する必要がある。

・顧客との新たなエンゲージメントを創出するための積極的なアウトリーチにデジタルがどのように役立つかを考えるべきだ。

・コストを考える際には、デジタルがエージェントの生産性、顧客の離職率低下、コンタクトセンターのKPI改善に与える影響を考慮することを忘れないでほしい。

出典:『Digital adoption:Learn what’s working for your peers』


最近のレポートを読んで思ったのは、カスタマーサービス関連のソリューションを提供している企業が、自社サービスの提案において、コロナによる急なデジタル化気運の高まりという背景を、大いに盛り込んでいるイメージです。それは大げさなことではなく、顧客がデジタル化を望んでいることは調査結果からも明らかなようです。
セルフサービスを充実化させるには何が必要か?セルフサービスで解決できない場合の即レスできる体制には何が必要か?そもそもサービス利用が複雑なプロセスになっていないか?あらゆる視点で顧客の条件で期待に応えられる環境とは何かを考え、積極的に構築していきたい。
将来的な体制を意識しつつも、まずは既存チャネル強化によるエフォートレス、やっていきます。

資料を読むシリーズ、前回の記事はこちらです。次回、現場であるコールセンター運営に関する資料をいくつか見つけています。良い学びがあったらそれを発信しようと思っています。

おわり

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