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カスタマーサポートで「価値向上」することの意義

こんにちは。「バンドルカード」というto C サービスを展開するカンム社にて、CS/業務プロセス周りをやっている平湯(ヒラユ)です。

海外のカスタマーサポート資料で学んだことを発信しています。第三回です。前回の内容はこちらをご参照ください。

ちなみに、第二回の終わりに「『Five9 Customer Service Index』の2020年版やりますー」と言ってましたが、あまり参考になるものなかったのでテーマ変えました。(経営層への調査で、如何にCSを重要視しているかというものだった)


記事紹介

今回の記事はこちら。Gartner社の記事です。

タイトル:The Customer Value Advantage

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リサーチ会社であるGartner社の資料で、カスタマーサービスとカスタマーサポート分野(当社は両者あわせて「CSS」と呼んでる)に関する調査結果が記されています。原本はこちらからDLできます。(Garner社のサイトにとびます)



本題

以下、記事の内容です。

費用対効果の高い効率的なサービスを超えて

カスタマーサービスとサポート(CSS)リーダーの第一の仕事は、簡単で費用対効果の高い体験を通じて、購入した製品やサービスで顧客を安定した状態に戻すことである。CSS 組織がロイヤルティの成果に影響を与えたのは、ディスロイヤルティ(不誠実さ)を減らすことであった。

エフォートレス(労力の少ない)カスタマーサービスはサービス戦略の重要な部分であることに変わりはないが、それだけでは不十分である。
具体的には、購入した製品・サービスで顧客が意図した目標を達成できるように支援することで、成果を促進するためにより多くのことを行うチャンスがある。サービスが顧客のためにこのような価値を生み出すと、リテンション、グロース、アドボカシーなどの顧客ロイヤルティの成果を高めることができる。

最良の CSS 組織は、サービスのやりとりにて”価値向上”を通じてロイヤルティに影響を与えている。顧客の問題を確実に解決するだけでなく、顧客がより自信を持って購入の意思決定をし、製品やサービスの価値を最大化できるようにすることが重要である。

多くのサービスやサポート組織は、すでに顧客のために価値を創造しているが、それはその場しのぎの無計画な方法で行われている。顧客のニーズに完全に対応し、目の前のビジネスチャンスを掴むためには、CSSリーダーは、顧客の労力を最小限に抑えながら、効率的かつ体系的に顧客価値を提供するために、業務を(再)整理しなければならない。

調査によると、CSS のリーダーは、顧客に向けた価値を創造するために、エフォートレスな問題解決を犠牲にする必要はない。最も成功している CSS 組織は、顧客のニーズに適切なサービスを効果的にマッチングさせることで、これを実現している。これには、重要な顧客セグメントを特定して優先順位をつけ、顧客データを使用して顧客のニーズを予測し、顧客を次の最適なサービスに知的に誘導し、デジタル・チャネルを通じて積極的にサービスを提供することが含まれる。


第一の仕事は低労力での解決で不誠実さを軽減すること


調査によると、優れた顧客サービスの経験は、せいぜいディスロイヤルティを軽減することができるまでということが示されている。エフォートレスなサービス体験がロイヤルティを高めることはないが、サービス体験が悪ければ、不幸で不誠実な顧客につながることは間違いない。

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”価値向上”は顧客が継続する可能性が大幅に向上させる

サポートとのやりとりに対する顧客の反応を分析したところ、企業への不誠実さを示す可能性が低くなっただけでなく、支持したり、更新したり、利用したりする可能性が高くなったとの報告があった。
具体的には、これらの顧客は、例えば、サービスのやりとりによって、当初の購入決定に対する信頼感が高まった、あるいは製品・サービス利用でより多くの成果を得ることができたと答えている。

このような価値を高めるサポートとのやりとりの後に、切り替えの機会を提示された場合には、その顧客が留まる確率が82%であることがわかった。

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”価値向上”はロイヤルティを向上する

①労力をへらすことでディスロイヤルティから移行させる。
→そしてナチュラルカスタマーへ(簡単に問題を解決してくれる!)

②価値向上でロイヤルティを高める
→そしてロイヤルカスタマーへ(サービスや企業に対して自信が持てる!)

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”価値向上”はスイッチングコストに関係なく顧客を維持できる

重要なことに、”価値向上”はすべての主要なロイヤルティ指標を改善し、切り替えプロセスが簡単なものでも難しいものでも、切り替えを積極的に検討している顧客の定着率を向上させる。

【図:全てのロイヤルティの側面での”価値向上”】
*過去60日間にサービス利用をした顧客2,196名のうち継続利用を決めた顧客を対象にアンケート
*82%が継続、86%がウォレットシェアを増加、97%が良い口コミをした
*「継続」は積極的な滞在/移動の決定をした顧客として定義

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【図:”価値向上”は切替えを積極的に検討している顧客の維持に役立つ】
* 切り替える労力が高い:価値向上あり 確率90%、なし(平均)73%
* 切り替える労力が低い:価値向上あり 確率69%、なし(平均)52%

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多くのやりとりは価値を高めるために円熟している


チャンスは、最初にコンタクトを取った理由によって大きく異なる。顧客が認識している価値を向上させる最大の機会は、問い合わせ電話の時である。成功する可能性が最も低いのは、苦情の電話だ。
近年、すべてのコンタクトに占める問い合わせの割合は増加しているが、苦情の割合は減少している。通話の組み合わせにもよるが、現在では35~50%の会話で”価値向上”が見られるようになっている。

【図:ユーザーとコンタクトを取る理由(2008年と2020年の比較)】

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5つの”価値向上”活動

調査では、サービスの相互作用の中で価値向上を促進するための5つの重要な方法が明らかになっている。

①顧客の購入決定を検証する
顧客の購入決定が賢明なものであったと顧客を安心させる。

②顧客のニーズを予測する
顧客の現在のニーズに基づいて、顧客が将来どのような機能に価値を見いだすかを予測する。

③顧客が目標を達成するのを助ける
顧客が貴社との提携の目標に基づいて、顧客が使用すべき製品機能の概要を説明する。

④より良い使用方法について顧客を教育する
顧客がどのように製品を誤って使用していたかに焦点を当てるのではなく、製品の最善の使用方法を伝えること。

⑤新しい使い方を顧客にアドバイスする
新たに導入された、または未開発の製品機能を顧客に紹介する。顧客がサービスのやりとりの中で価値を受け取ることができれば、顧客の再購入の可能性が高まり、消費額が増加し、企業のことを積極的に話すことができるようになる。

”価値向上”をどう運用していくか

【機会を予測する:”価値向上”のための開放性のシグナルを識別する】

1. ”価値向上”が必要なセグメントの特定
価値向上のための会話に参加しやすい顧客の特徴やセグメントを見つける。(例:購入してからの期間、顧客のペルソナ、問題の種類)

2. 分析により”価値向上”を予測する
予測モデルを使用して、”価値向上”の会話の必要性または成功の可能性を示すスコアを顧客に割り当てる。


【リソースの割り当て:顧客を最適なリソースに合わせる】

3. リソースのプール
スコアを向上させる能力を実証した担当者のサブセットを作成する。(ニーズのある顧客とその担当者をマッチングさせる)

4. 担当者を備える
”価値向上”の原則に関する指導を受けた担当者を準備する。

5. セルフサービスを通じて価値を提供する
セルフサービスでの”価値向上”の機会を積極的かつ積極的に追求する。


【自動化による伝達:自動化によるスケール】

6. 既存のデータソースの活用
高品質なデータが既に存在するところからスタートする。(データの更新・処理の正確性と速度の観点から)

7. 自動化すべき活動を特定する
”価値向上”が有機的に行われている価値の高い状況を探し、それらを最初に自動化する。

8. ROIが実証されると拡大する
特定のイニシアチブに関連する成功の尺度を事前に決定する。既存の投資を正当化し、追加の資金を確保するために財務的なリターンを実証する。


所感

エフォートレスは「ロイヤルティの向上」には影響がなく、ただし、ディスロイヤルティの軽減には効果的だ、という内容は著書「おもてなし幻想」に詳しい。今回の記事は、エフォートレスだけでなくロイヤルティの向上を図るには「価値向上」の働きかけが必要という話だと理解しました。

ちなみに、Gartner社は「VES(Value Enhancement Score)」を提案していて、課題を解決するだけでなく、提供する商品やサービスの価値を顧客が見出せるように働きかける必要があると言っています。NPSやCSATはカスタマーサポートとのやりとりを通じて測られる指標だけど、VESは ”製品やサービスを利用する能力” および ”商品やサービスの購入判断に自信がある” という点について顧客の評価を得ることにより、将来のロイヤルティを予測することができるのだ、という主張です。
VESの詳しい内容は以下の記事で語られています。

5つの「価値向上」活動のうち、「より良い使用方法について顧客を教育する」と「新しい使い方を顧客にアドバイスする」はレベルが高いですね。プラスワンの提案はニーズの把握が絶対的に必要で、現場オペレータの教育がめちゃくちゃ重要になるなと思いました。
それを実現し続ける仕組みはさらにハードな気がしてます。当社オペレータは少人数で日々問い合わせ対応を頑張ってくれていますが、顧客のニーズとズレが生じているケースが度々見られるのでまずはその是正を図っております…。

あと「顧客の購入決定を検証する」の部分は、顧客が商品/サービスを利用したことに肯定感を持たせたほうが良い、という意味だと理解したのですがそれをどう実現するかはこの資料からは読み取れませんでした。他の資料でこの辺の言及がないか、一つのテーマとして見ていきたいと思います。


おわり

今年もよろしくお願いします。

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