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朝に怯える大人達の憧憬

最近、FARMHOUSEの『朝が来るまで feat. EVIDENCE』と言う曲ばかり聴いている。

若さ故のポジティブさが心地よくて、何度も聞いてしまっている。
いつの間にか僕の中から抜け落ちた若者らしさがこの曲には詰まっている。

サビの中で「it's be alight(大丈夫)」と何度も繰り返す。

it's be Alight 月のない 暗い夜でも
It's be alight すぐに目が慣れてくるから
it's be alight it's be alight
いつも痛いのは最初だけ
it's be alight

「大丈夫、大丈夫。」と繰り返す無根拠なポジティブさに笑ってしまうが、
そのポジティブさは笑えないほど羨ましい。

大丈夫、大丈夫。月も照らさない程の暗い夜も、次第にその暗さも慣れる。

大丈夫、大丈夫。どんなに耐えがたい痛みも苦しみも最初だけ。

だから大丈夫だよ。

友人と共に何も疑うことなく「大丈夫、大丈夫」と当たり前のように言ってい20代初めの頃を思い出す。

なんの根拠もない自信。
あれは一体どこへ行ってしまったんだろうか。とぼんやり考える。

きっと、「何となかるだろう」と言う自信じゃなくて、
「何とならなくても大丈夫だろう」と言うことだったんだろう。

失敗しても大きく人生には響かないし、ダメだったら引き返せばいい。

そんな若者の特権があるから大丈夫だ。と言うことなんだろうな。
それじゃあ、もう若者でなくなった僕が持っていなくてもおかしな話ではないな。と納得する。

今となっては、失敗の痛みは残り続け、痛みが引くまで時間がかかるし、
ダメだから引き返そうと気軽に言えないところまで来てしまった。

あの頃は時間はあっという間に過ぎ去るのに、
それでも時間は無限にあるように思えた。

だから、痛みが癒えるまで時間を費やすことも、
来た道を引き返すための時間の浪費も怖くなかった。

持て余した時間を使って朝が来るまで遊んでいた僕たちに、不安なんて何もなかった。

朝が来るまで 時間を垂れ流して
コンビニエンスストア前 夢を語り合ってる

確かに僕たちも日々時間を垂れ流していた。
安い居酒屋でくだらない話で喉を枯らすほど笑ったり、
卒業したあとの人生のプランを語り合って朝を迎えていた。

あの時の夜明けまでの時間は驚くほど早かった。

今日を連れ去る夕暮れに向かって歩む帰路も、
夜の向こう側から静かに昂る朝日を浴びていた始発待ちも、
どの瞬間も「大丈夫だよ」と根拠のない自信を身に纏って煌めいていた。

なんの不安もないまま夢や未来を真っ直ぐ見つめ、
友人達と朝日を真正面から受け止めていたあの瞬間はきっと若者の特権と、特別な時間だったのかもしれない。

今日も何処かで「大丈夫、大丈夫」と言いながら若者たちが夢を語り合い朝を迎える。

いつの間にか、夜が終わる事、朝を迎えることに怯える情けない大人になってしまった。

戻れないあの頃への憧憬が、僕の中でこの曲を引き立てているのだろう。

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