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「男らしさ」「女らしさ」から解放されるためには?──Think Out!011レポート

普段会わないような人と、普段考えないような問いについて対話をしながら考える「頭のワークアウト Think Out!」。2020年6月28日(日)に行われた第11回(テーマ:性別)のレポートを、参加者のS.T.さんが執筆くださいました! イベント後の思考の変化まで書いてくださっていて、哲学対話がもたらす「縦の対話」が感じられるレポートです。どうぞお楽しみください。(事務局マツイシ)

哲学対話初心者でTOI初参加の私(S.T.)からみた、今回のThink Out!(テーマ『性別』)の体験レポートをお送りします。参加してみてとても楽しかったので、その魅力を少しでもお伝えできていれば嬉しいです^^

全体を通しての感想

今回の対話のテーマは『性別』。生きていく上で常につきまとい切実な悩みの原因となることも少なくないのに、率直に語ることのできる機会は少なくタブー視すらされている。こうした事情もあってか、参加者は性別による役割の押し付けやそれを前提に成り立っている社会に違和感を持っている方が多かったようです(私もそう)。

また女性比率が高かったことがなんだか示唆的でした。

それぞれの立場から普段から疑問に感じていることやなかなか口に出しづらい本音をシェアし、対話は大いに盛り上がりました。真剣に自分の話をし人の話を聴くという行為の中にたくさんの共感と発見があり、対話することの楽しさと意味深さを感じることのできた2時間でした。

Think Out!(前半)

全体を2グループに分けての最初の対話。それぞれに考えた『問い』を出し合います。私のグループでは以下のような問いが出ました。

「男らしさ/女らしさ、ってどのくらい必要だと思いますか?」
男性/女性だからこうあるべきという押し付けに抵抗感があるが、それによってうまく社会が機能している面もあり、どう折り合いをつければよいのか。

「相手に男性らしさ/女性らしさを求めるか。」
特に恋愛の場面で自分(女性)が女性らしさを求められることに違和感があるが、そんな自分も相手には男性らしさを求めてしまうという矛盾に悩んでいる。

「男性から女性への責任、女性から男性への責任というものがあると思うか。」
現在の社会は男性優位で女性には不利になっている。そんな不平等な社会を作ってきた男性、黙って受け入れてきた女性にはお互いに対する責任があるか。

「性別とはどこからどこまでか。」
名前のつけ方が男女で異なったり、書類に性別の記入欄があることなど、身の回りで当たり前のように性別による区分が行われていることに疑問を感じる。

「男で/女でよかったと思うこと。」
自分(女性)は女性だという意識が薄い。自分の女性性を受け入れられていないのかもしれない。対話を通して女性として生きることのよいところを見つけたい。

どの問いもそれぞれの実体験から出た切実なもので、性別や立場は違っていても深く共感できました。

これらの問いをきっかけとして、以下のような興味深い意見が出ました。

・社会は自分の性をうまく受け入れられる人にとって生きやすいように作られていると思う。
・男性社会の中でうまく立ち回るために、女性の自分は能力をセーブしてしまうが、そんな自分に罪悪感がある。
・男性に有利に作られている社会が嫌だが、その女性に甘い部分を都合良く利用してしまっている時もある。
・プロポーズは男性からするものだという固定観念に違和感があって自分(男性)からしなかったが、未だに奥さんに根に持たれている。
・女性としての意識が薄くても、子供ができると母親としての役割を求められるので、価値観を作り直さないといけない。

みなさま性別に関して複雑な思いを抱えながらその矛盾を飲み込んで生きているのだな、と感慨深かったです。

Think Out!(後半)

グループを変えて対話のつづきをおこないます。前半で話したことをさらに深めていきます。

・みんなが生きやすい社会にするにはどうすればいいのだろうか。
・性別に関する問題を解決するには、今やっているように対話することでお互いの立場を理解しあうことがとても効果的だと思う。
・夫婦のいさかいなどでは男女でマウントを取り合っているように感じる。お互いに男性側/女性側の価値観が正しいと思っている。
・男女それぞれ得意分野が違うのだから、ジェンダーロールが必要な場面では割りきってお互いに足りない部分を補い合う意識が大切なのでは。

対話を通して、男性/女性という立場に縛られていては溝を深めるだけであり、そこはいったん脇に置いてフラットな立場から物事を見るようにする努力が必要なのかなと思いました。

チェックアウト

最後に全体で感想をシェアします。

参加者の方の多くが、性別の問題で悩んでいるのは自分だけではないと知ることができてよかった、というようなことを言っていたのが印象的でした。

自分にとっても答えが出ない永遠の問いではありますが、今回対話したことは今後生きていく上で大きなヒントになったと思います。

数日たって考えたこと

性別に関する問題は種の保存という本能のはたらきによる部分が大きく、誰のせいでもなく自然とそうなってしまっているという面が強いのだと思います。

また、人間は自分が相手にされたことには敏感なのに、自分が相手にしてしまっていることについては無自覚といえるほど鈍感であることが多い、ということも問題を複雑にしていると思います。

今回のように感じていることを率直に語り合うことで、そういう無意識だった部分を意識化しお互いへの理解を深めることが、自分自身にとっても社会全体にとっても大切なことだと感じています。●

S.T.さんのレポート、いかがでしたでしょうか。ご興味持たれた方はぜひ、次回、7月25日(土)のThink Out!(テーマ:主体性)にお越しください。運営メンバー一同、お待ちしております。詳細・お申し込みはこちらから。

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