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本音は必要か?――Think Out!005レポート

吉祥寺はバツヨンビルで毎月一回、土曜日の朝に開催している哲学対話プログラム『Think Out!』。第5回はテーマ『本音』で実施しました。

今回は新たな試みとして、参加者の方にレポートをお願いして書いていただきました! それでは、オヤマさんによる渾身のレポートを以下、お届けいたします。

11/23(土)に第5回 Think Out! 『テーマ:本音』が開催されました。
イベントの終了後、運営メンバーの方から以下のような発言がありました。

「哲学対話のレポートは、なるべく多くの人によって書かれるべきだ。様々な視点が取り込まれることで洗練されるという点で、対話とレポートは同質なのではないか。」

この言葉を受けて、第5回のレポートは当日参加していた私オヤマが担当することになりました。

以下は、参加者の一人である私が当日の体験を振り返って作成したレポートです。従来の、運営メンバーの方々によるレポートと比較すると、中立性や公平性の欠く、偏った視点からのレポートかもしれませんが、ある参加者のある視点によって記されたレポートとして、参考程度にお読みいただけますと幸いです。

朝は時間との闘い

当日は、諸事情でAM9:56(Think Out!開始4分前)に吉祥寺駅に到着しました。

遅刻確実の状況で、憂鬱な心持ちのなか急いで会場へ向かいましたが、駅から会場までの全ての信号が青だったという幸運に支えられ、会場である吉祥寺バツヨンビルにAM10:01に到着しました。(1分遅刻)

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会場に着くと、遅刻した私にも温かい言葉をかけてくださる運営メンバーと、運営メンバーに負けず劣らず温かいハンドドリップコーヒーが私を出迎えてくれました。

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受付を済ませて着席すると、いよいよThink Out!が始まりました。

『本音』に関する「問い」の共有

参加者10数名が3つのテーブルに分かれた後、それぞれが今回のテーマである『本音』に関する自身の「問い」を、運営が用意した「問いカード」に書き出しました。

今回のThink Out!では、自身の経験から生まれた問いを考えるために、15分の時間が用意されていました。

いつも会場に着いてから「問い」を考える私にとって、この時間はありがたく、有意義なものでした。ここで考えたこと、思いついたこと、思い出したことが、その後の対話をより豊かなものにしてくれたと思います。

1.「場の空気を乱す発想をしてしまいがちな人は、本音を押し殺した方がよいのか。」
2.「自分や他人の本音を引き出せるか。」
3.「言語力が磨かれると本音が言いやすくなるのか。」

私が思いついた「問い」は上記3つです。

会場内にいる他者に伝えることを意識して、普段よりもしっかり言葉にして考えたからでしょうか、一人で考え事をしているときよりも、「問い」がどんどん湧き出してくるように感じます。

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「問い」を1つずつ共有し合ってから対話を始めるルールでしたので、私は悩みに悩んだ末、以下の「問い」を他の参加者に共有しました。

「場の空気を乱す発想をしてしまいがちな人は、本音を押し殺した方がよいのか。」

若い頃は「もっと本音を話したい、本音で話せる場が欲しい」と頻繁に思っていた記憶があるのですが、年を取るといつの間にやらこのように思わなくなりました。

この変化の原因の一つとして考えられるのは、年を取るとともに私が「人と人とが本音で話せないのは当たり前」ということを前提として考えるようになり、「本音で話し合えているか」よりも「なるべく本音で話し合おうとする姿勢をとっていたか」を重要視するようになったことです。

しかし、若い頃の私は違いました。

自分の思いを率直に吐露すると周囲の人々がギョッとしてしまうこともしばしばあり、その度に「自分は本音を言った方がいいのか?それとも言わない方がいいのか?」と悩んでいたような気がします。

朧気にですが、そんな記憶が残っています。

そんな過去の私が抱えていたであろう「問い」について、誰かの意見を聞いてみたい。このような思いを抱えながら、私は自分の「問い」を他の参加者に投げかけました。

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■『本音』に関する様々な「問い」たち

今回のThink Out!でも、様々な「問い」が生まれました。いつも多種多様な参加者が集まって来るため、それぞれの人が抱える「問い」も多様になるのでしょう。

私が記憶している範囲で、今回提示された「問い」をいくつかご紹介します。

「哲学対話のような何でも自由に話してよいとされる場でも本音で話せないのはなぜか。」
「本音を言い合うと人間関係は破たんしてしまうのか。」
「社交の場で本音を伝える必要はあるのか。」
「人から本音を引き出すにはどうしたらいいか。」
「何をもって自分の思いを本音と認識するのか。」
「自分の本音を自覚して話していますか。」

これはある参加者の方が仰っていたことですが、上記の「問い」をざっくり大別すると、

・他者に本音を伝えようという意識から生じた「問い」
・自分の内面を掘り下げようという意識から生じた「問い」

の2つのグループに「問い」を分類することができると思います。

両グループの「本音」に関するスタンスの違いは、一体どういうところから生じてくるのでしょうか…。

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「本音」について話していると生じたカオス

率直に言って、今回の対話はかなり盛況だったと思います。以下、またまた私が覚えている範囲となりますが、対話の時間にあがった意見の一部です。

「所属集団から排除されることが怖いので、普段は本音を言わないようにしている。」
「本音を押し殺した生活を続けていると、自分の思いに気づきにくくなる。」
「孤立することを恐れて本音を言わないくらいなら、孤立した方がいい」
「言葉が厳しくても、実はめちゃくちゃ優しい人もいる。」
「言葉尻に囚われ過ぎても、人の本音はかえってわからなくなる。」
「話すのが上手だからといって、本音を言うのも上手いとは限らない。」
「脳には無意識の領域があるため、意識できている思いを本音と言っていいのか、疑問に思う。」
「本音と思えるかどうかは一時的な気持ちの問題で、本音はコロコロ変わり続けてしまうものではないか。」
「自分の本音はどうでもいいと思いながら、とっさに行動することもある。」

どれも「なるほど!」と思える意見で、本音の性質をうまく捉えていると思います。

にもかかわらず、対話が進むにつれて、私はむしろ混乱に飲み込まれてしまいました。本音について知れば知るほど、本音の不思議さがジワジワと感じられてきたのです。

今回、対話が盛り上がりつつも、多くの人がモヤモヤを抱えて会場を立ち去って行くことになったのは、対話によってこの「本音の不思議さ」に各自が直面させられたからなのかもしれません。

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最後に感想の共有

30分間の対話を2回繰り返した後、最後に参加者一人一人の感想を共有しました。以下は挙がった感想の一部抜粋です。

「本音では話せなかったが、対話をしているうちに本音かどうかがあまり気にならなくなってきた。」
「本音と建前で分けて考えがちだが、本音と建前の区別をはっきりさせる必要はないのではないか。」
「本音と建前で分けて考えると、本音のことがもっとわかるのではないか。」
「対話によって、本音に関するモヤモヤがさらに強まった。」
「気づきがあってスッキリしたが、それが何かは言いたくない。」
「信頼関係も利害関係もない対話の場で、本音について話しているのが不思議だ。」

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運営メンバーからの以下の言葉をもって、盛況のうちに対話の時間は終了を迎えました。

「スッキリすることも大事だが、ここで新たに生まれたモヤモヤを大切にすることが、今後も本音について考え続けていくことに繋がる。」

「本音」をテーマとした対話は一旦終わりを迎えましたが、「本音」についてのThink Out!には終わりがないということなのかもしれません。

「本音」について話し合うことで、その難しさを噛み締めつつも、いつも以上にみんなが「本音」で対話できたのではないか、と私個人は感じました。

またいつの日にか、本日出会ったみなさんと「本音」について、「本音」で話し合ってみたいものです。

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オヤマさん、素晴らしいレポートをありがとうございました! 参加してくださったみなさんはどんなふうにThink Out!を体験されたのか、いつも気になっていたところだったので、こうして丁寧に感想をお書きいただけるのは、運営者としてとてもありがたいです。

さて、そんなThink Out!ですが、次回の開催も決定しております。

Think Out! vol.006 テーマ「価値」
https://www.kokuchpro.com/event/thinkout006/

日時|2019年12月21日(土)10:00 - 12:30(開場9:45)
場所|吉祥寺バツヨンビル(吉祥寺駅徒歩5分)
地図https://goo.gl/maps/zCP1hywxBMcuCDoL6
参加費|自由(イベント後に金額を設定いただき、お支払いいただきます)

現時点で、お席のこり4席となっています。いつも開催日が近づくとたくさんのお申し込みをいただきますので、満席必至です。このレポートを読んで興味を持たれた方は、ぜひお早めのお申込みを!

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