オワリはじまり38 「久しぶりの祖母と孫の関係」

1月13日の午後3時半に僕は洗濯済みのタオル数枚を病院に持って行った。

最近の記事でよく書いているが、今回もあまり面会に行く気にならなかった。

「どうせ、今回も元気ないんだろうな」
「そんな姿みてると、こっちまで元気がなくなるんだよな。」

病院まで運転する間、僕はこんなことを考えていた。

面会時間は14時から17時までの間。
僕は午前中に整骨院に行き、家についたのは13時過ぎだったが15時まで昼寝することにした。

きっと面会が楽しみなら昼寝などせず、14時に病院に到着できるように早めに家を出るだろう。

病棟に到着したあと、いつものようにナースルームにいる看護師さんに声をかけて部屋に向かおうとしたのだが、驚いたことに祖母の姿は病室ではなくナースルームにいた。

そしてなぜかナースルームの片隅にあるパソコンを眺めていた。パソコン画面を見てみると、YouTubeで演歌の動画が流れていた。

ナースルームでYouTube経由で演歌を聞く、なんという特別待遇だろう。

以前看護師さんから「○○さんはお歌を歌うのがすきなんですね!時々動画を見させて歌ってもらっていますよ。」と聞いたことがあったが、病室ではなくナースルームで、さらにはスマホではなくパソコン。

看護師さんのご厚意に本当に感謝である。

車椅子に座る祖母の横にいき、祖母と目線になるため僕は中腰になったのだが、その際に今回の投稿にである「祖母と孫の関係」を象徴するシーンが誕生する。

祖母「○○ちゃん、髪が立っとうよ」
僕「あ、ごめん!さっきまで昼寝をしとったんよ」

このやりとりは本当に一瞬だったのだが、祖母に寝癖を直してもらうなんて何年ぶりだっただろう?

祖母による手櫛で僕の寝癖が直される間、祖母の顔を見てみると笑顔だったのだが、そこにいたのは認知症になる前に、僕が抱いていた「優しいばあちゃん」の姿になっていた。

僕が小学生だったころこのやり取りをよくしたことを覚えているが、その頃から僕も祖母も良くも悪くも変わってしまった。

ちなみに祖母が動画を見終わったあと、看護師さんの提案でティールームに向かい、そこで祖母に退院予定日を伝えた。そして僕の提案で、祖母の幸せを願って行動してくれているケアマネに対し、感謝のメッセージの動画を撮るなどして過ごした。

「いつもありがとうね。」
動画を撮影する中で唯一祖母が発した言葉であるが、自らマスクを外して最大限の笑顔で発したこの言葉はきっとケアマネにも伝わったことだろう。

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